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何歳でリタイアするか?

 人生100年時代と言われるが、人は何歳まで働くべきなのだろう?60歳で定年、それ以降は継続雇用制度の勤務を経て65歳で晴れてリタイア、それから年金生活というのはサラリーマンのお決まりのコース。居心地がよく体力的にも精神的にも耐えていけるのであれば、時間潰しとしては案外悪くない道のりかもしれない。

☆高齢化が止まらない社会

 2023年4月28日のみずほレポート(参考文献1)によると、人手不足は2030年に700万人という試算らしい。このためか、世間では定年年齢引き上げが声高に言われるようになってきた。生産力低下は国家存亡に関わる事態であるので、これは納得。下の図は1950年から2065年までの総人口推移を示す。

 青色棒:14歳以下、薄灰色棒:15〜64歳、濃灰色棒:65歳以上を示し、2010年で総人口は1億2千万人程でピークアウトする。2065年には、総人口が9000万人を下回り、生産人口割合は年々減少傾向(緑のグラフ)を示し総人口の50%に近づく勢い。高齢化も進み38%まで高齢化率上昇とみずほレポートには報告がある。

☆無視できない単身世帯

 つい最近の2024年8月29日に同じ出所(みずほリサーチ&テクノロジーズ)から「単身世帯化の日本経済への影響(FIRE願望と結びつくと人手不足は深刻化:参考文献2)」なる報告書がリリースされた。

 下の図は1980年から2050年までの単身世帯数(紺色棒)と二人以上世帯数(薄灰色棒)、そして単身世帯割合(赤線グラフ)を示す。この図からは、2030年以降単身世帯ほぼ横ばい、二人以上世帯減少傾向が見て取れる。その結果、単身世帯割合が緩やかに上昇していくシナリオが見える。

 下の図は年齢別単世帯割合が2020年から2050年まで10年ごとにどう推移するかを示す。明らかにこの期間、50歳から85歳までの単身世帯の上昇傾向が予想されている。

☆何歳でリタイアするかはあなた次第

 このレポートでは、「単身世帯化が FIRE 願望と結びつくと、人手不足が深刻化しインフレ圧力に」という見解を出している。その前提としては、「労働 とは専ら金銭を得るための手段であり、労働自体は嫌なことである」。そして「労働にはやりがいがないと仮定」する。

 この仮定のもとどういうことになるかというと、

未婚単身者は「50歳を過ぎたらさっさと仕事を辞める」傾向がみられる

参考文献2

というのだ。さらに、

「亭主元気で留守がいい」という言葉に象徴されるように、そもそも夫婦で長時間一緒にいること自体が何らかのストレスを発生させる場合もあり、「自宅に長時間いたくない」という気持ちが働き続ける動機になっている労働者も一定数存在する可能性がある。単身世帯 にはこうした問題も発生しないため、「気兼ねなく仕事を辞められる」面があるのかもしれない。

参考文献2

とレポートの著者は推測する。あと私の方から具体例を付け加えるとするならば、夫婦でいれば世間体というものも気になるだろう。平日に旦那が昼間から家でブラブラしていれば、奥さんは世間で何と噂されるか気になってしまう。単身世帯は、ある意味お気楽なのだ。

 さらに、著者はレポートの最後の方で下記のような見解を出している。

「人生所要金額」の低い単身世帯が増加すると、日本の家計全体として「稼がなければならない金額」が低下する可能性がある。その場合には、労働の必要性低下からマクロの労働供給減少につなが る可能性が高い。FIRE志向の強い人ほど積極的にリスク性資産を保有して財産所得を増やす可能性が 高いとすれば、「労働所得+財産所得」における「人生所要金額」への到達はさらに早くなり、労働の必要性はさらに低下(→マクロ的な労働供給はさらに減少)することになる。

参考文献2

 一人一人環境が異なるので一概には言えないが、単身世帯は全てを一人で自由に決定できるので、危ない橋も渡ることができる。賭けに出れるハードルを低く設定できる点は、早期リタイアに対して単身世帯優位の方向に働いているのかもしれない。

 それにしても、このレポートの前提「労働とは専ら金銭を得るための手段であり、労働自体は嫌なことである」、そして「労働にはやりがいがない」というのは何とも世知辛い世の中を想定したものだ。「やりがいのある仕事」に就くこと、つまり、「労働とは専ら金銭を得るための手段ではない」、もしくは「労働自体は嫌なことではない」、そうした社会を目指してほしいものだ。何歳でリタイアするかは、「あなた次第」といったところだろう。


・参考文献

 1:みずほレポート1

 2:みずほレポート2(単身世帯化の日本経済への影響)
https://www.mizuho-rt.co.jp/publication/report/2024/pdf/insight-jp240829.pdf 



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