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連載「それでも四大を選んだ者たち」〜77期四大内定者インタビュー〜Vol.1【アンダーソン・毛利・友常法律事務所】

法律事務所の就活をする中で「四大」という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

日本には18,000を超える事務所がありますが、中でも弁護士数が最大級に多い法律事務所の、西村あさひ法律事務所、アンダーソン・毛利・友常法律事務所、森・濱田松本法律事務所、長島・大野・常松法律事務所の4事務所は総称して「四大法律事務所」と呼ばれています。

例年、8月1日を皮切りに個別訪問(採用面接)が始まる四大法律事務所。
しかし、最大級の規模の事務所であっても、身近に働いている知り合いがいないと、その実態はわからないものです。

そこで、LSTimesでは試験勉強に忙しい皆さんに代わって、

  • 四大の就活ってどうなっているの?

  • 他の事務所と迷ったポイントは?

  • 各事務所の雰囲気と、選んだ決め手は?

という、就活生の気になる疑問を四大内定者に直接聞いていく連載「それでも四大を選んだ者たち」を開始します。

第1弾となる今回は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所(以下、AMT)内定者のAさんのインタビューです。(ライター:晋川/The Law School Times編集長)


経歴

Aさんの経歴:東京大学卒、予備試験合格
内定先:AMT、中規模事務所ほか

大きい組織だからこそ、個性の強さを受容できる

ーー四大を知ったきっかけと、目指した理由は
四大を知ったのは、予備試験後に就職活動を始めてすぐでした。規模が大きく、就活生間での知名度もあったので、友人に聞いたりネットで調べたりして、すぐに知りはしました。

また、最初は就職活動についてもわからないことばかりだったので、まずは人数が多い事務所に応募してみようと思い、クラークに応募したのが目指し始めたきっかけです。
4つのうちここは合わないかなと思ったところには応募していなかったので、実際には3つに応募しました。

ーーサマークラークなど、具体的な就活の流れを教えてください
自分は予備試験1本で集中していたので、サマクラは行っていません。
その代わり予備試験合格後のウィンタークラークはかなり参加して、四大以外も合わせて12事務所くらいに行きました。
その中の1つから司法試験前に内定をもらったので、その内定を受諾していたんですが、司法試験後のAMTの個別訪問を通して考えがまとまって、最終的にはAMTに行くことにしました。

ーー他に考えていた大手以外の事務所はどういった事務所でしたか
伝統ある中規模事務所と、新興の企業法務事務所です。どちらもキャラクターが個性的な人が多いなと思いました。

ーーどんなキャラクターなんでしょう
内定をもらって最後まで迷っていたのは後者の事務所だったので、そちらの話をしますね。
まず、代表パートナーがイケイケで、年次が上の先生でも、気さくにインターン生に話しかけてきてくれるし、自分のやりたいことを尊重することをよしとしてくれる雰囲気はありました。

ただ、仕事をしている風景を見ていると、意外とアソシエイトとパートナーの距離がありそうだとも感じました。

そして、徹底的な実力主義を掲げる割には、それを達成している先輩があまりいなそうだったんです。だから、この事務所はパートナーが仕事を独占しちゃってアソシエイトはあんまり稼げてないんじゃないか、と思ってしまいました。

ーー四大と中小事務所について、どのように考えていますか
これは、四大がある意味叩かれがちだからこそだと思うんですが、実は四大の働き方って、透明性がある程度担保されているんです。
所属する弁護士数が多くて、出入りも激しいので、変なことをするとすぐ叩かれて噂になります。
逆にいうと、噂になっているようなネガティブな情報以上に悪い要因はあまりないってことなんですよ。
四大でよく言われているのは、組織の歯車、深夜労働、精神がすり減るっていうパッケージ化された評判ばかりですよね。そこは確かに否定できない点ですが、逆に言うとそれに尽きるという。

一方で、中小だとそういう透明性の担保がないことも多い、ある種、閉鎖的な環境です。例えば支給された報酬が提示されていた額とは違ったという話も聞く。
一概にどちらがブラックかホワイトかとは言えないと思いますが、やっぱり透明性が少ない分、泣き寝入りしている人も少なくはないと思います。
だから、中小の場合は、特にいろんな人の話を聞いて慎重に選んだ方がいいと思いました。

ーーたくさん事務所を見た中で、四大の一つであるAMTに決めた理由や就活の軸は
弁護士を目指す人って、いい意味でも悪い意味でも、個性的な人が多いと感じています。特に企業法務は、めちゃくちゃお金稼ぎたい人とか、自分の名前で仕事したい人とかが目指していて、サラリーマンとは違う雰囲気というか。

そうすると就活になったとき、自分もそうでしたが、まず逆張りしたくなっちゃうと思うんです。大手の看板で仕事をするんじゃなくて、個人で結果を出して名を上げたいと。

ただ、就活する中で、気づいたことが2つあります。
1つは、個性が強い人が多い業界ということは、衝突が生じやすいということでもあるので、事務所の弁護士数が少なくなると合わない人がいた時のリスクが致命的なものになるということです。
自分も合う合わないがはっきりしているタイプですし、だからこそ、大規模事務所に行けば、自分に合う先輩をいい感じに見つけてその背中を追いかけつつ、合わない人とはある程度で折り合いをつけることもできるメリットがあると考えました。
もう1つは、最後は人だなということです。「こんな案件をやりたい」っていうのはあるけど、就活が終わって考えると、案件はそこまで関係なかったなと思います。

それから、仕事が何かということも自分なりに考えて結論を出しました。
仕事って、世の中にあるニーズに応えた成果を出して、その対価をもらう営みですよね。その中で、しっかりコミュニケーションを取り、相手からこの人いいなって信用されると仕事が集まってくる。
仕事をし始める時に何に重きをおくかは人それぞれですが、僕の場合は信用を得たいと思ったので、やりたい案件があるからこの事務所で経験を積む、というよりも、大きい看板を背負う経験の方が、自分の中では重要だなと思うに至りました。

自分の力でやっていきたい、だから中小だ!っていうのは、少し早とちりだったなと、今になると思います。

私服で向かい、パートナーに口説かれた個別訪問

ーーAMTの弁護士や内定者の雰囲気はずばりどんなものでしょうか
いい意味で、他人に干渉しない雰囲気があります。空気としては、森・濱田松本法律事務所(以下、MHM)もいいと思っていました。
あと、AMTって静かな人が多いイメージだったんですが、77期の内定者はかなり体育会で、採用方針変えたのか?という感じ。あとは、自由すぎる人も多いですね。逆に、MHMの内定者は静かな人が多くて、両者のイメージが例年とは逆なのかなって思います。
内定者数は大体、NA70、MHM90、AMT60、NOT50って感じじゃないでしょうか。

ーーMHMではなくAMTにした決め手は
まず、オフィスがめちゃくちゃ綺麗なんですよ。これは5大の弁護士の中でも言われてますが、1番綺麗だと思います。

あとは、個別訪問での対応ですね。
僕は、司法試験受験前の時点でさっきの事務所にいくことを決めていて、内定受諾までしていたので、正直、四大の志望度はそこまで高くなかったんです。
AMTからは内定解禁日の午前(注:2023年8月1日)に電話をもらったんですけど、その時はワイシャツが乾いてなくて(笑)

ーー準備万端、という感じではないですね
「私服でいいから、とにかく来て」と言われたので、言われるがまま私服でオフィスに向かうと、待合室の就活生は当然全員スーツで。流石に気まずかったです。

面接では、相手の反応を見てみたいと思って、正直に別の事務所と迷っていることを伝えました。すると担当の先生は、
「すごくいい事務所だよね、うちから移籍した友人もいるよ」
「プラクティスは被っているし、うちでもできるから、まずはうちでいいんじゃない?」
「もし自分で仕事していきたいとか、中小に行きたいのなら、うちで企業法務の足腰を鍛えてから行ったらいいよ」
という反応で、思ったよりも寛容だなと。

また、AMTのどの弁護士でも会いたければ会わせるよ、と言ってくれて、実際いろんな方に会わせてくれました。3回くらい食事に行って、最終的にAMTに決めました。さっきも言ったことですが、看板が重要だと思ったことと、企業法務の足腰を鍛えようと思ったことなどをこの間に考えて、決めました。
四大は「この人いいな」と向こうが思ってくれたら、かなり手厚く対応してくれるものなんだと思いましたね。

また、同じ時期にもう一つの事務所の先生とも食事に行きましたが、四大のネガキャンが始まってしまい、正直そこで勝敗が着いてしまった感じです。
僕は、批判されてる方こそが主人公だと思ってしまうんですよ。就活を通して見ていると、意外と四大側の方が批判されてることが多くて。こっちにいこうと決めました。

ーー初任給や年収はどうですか
四大の年収については多少制度の差はあれど、ほとんど誤差だと感じました。初任給が1200万円で、3年目で歩合制になり、そこからは稼働時間に応じて収入が決まるようになるので、頑張って働くと2000万円近くいくようになる。

中小だと事務所の案件でそこまでの収入に到達するのは難しそうで、外資も初任給は四大よりも高いですが4-6年目あたりで四大に逆転されるみたいです。

なので、年収自体は四大の中から選ぶ時にはあまり気にしていませんでした。

就活生へメッセージ

ーー最後に就活生へメッセージを
司法試験や予備試験は本当に過酷な試験で、成長が感じられかったり、周りと比べてしまったり、将来のことを考えて不安になったりしてしまい、つらくなることも多々あるかと思います。しかし、苦しい思いをした分、前に進めているはずで、諦めさえしなければ負けることはない試験であります。そして、その努力を評価してくれる人は世の中に必ずいます。
皆さんが最後の最後まで力を出し切れるよう、心から応援しております!


The Law School Timesは司法試験受験生・合格者が運営するメディアです。「法律家を目指す、すべての人のためのメディア」を目指して、2023年10月にβ版サイトを公開しました。サイトでは、司法試験・予備試験やロースクール、法律家のキャリアに関する記事を掲載しています!noteでは、編集部員が思ったこと、経験したことを発信していく予定です。


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