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【翻訳】ICMはPKOトーナメントの戦略にどれほど衝撃をもたらすのか【ICM、MTT】GTOWブログ.51
プログレッシブノックアウトトーナメントのセオリーの記事を読んだ方は、なぜPKOでは通常のMTTよりも広いレンジでプレーできるのか、すでにわかっているだろう。特にこの効果は、バブルファクターが1を下回るPKOの開始時に最も顕著に現れる(通常のMTTでは見られないことだ)。これは、チップを失うデメリットよりもバウンティ獲得のメリットの方が大きいため、ヘッズアップポットよりもルーズにマルチウェイをプレイできるためである。
しかし、PKOでペイアウトが迫っているときはどうだろう?バブル付近やファイナルテーブルでのICMの影響は、私たちの戦略にどう影響するのだろうか?
ICMダイヤル
前述の記事を読んだ読者なら、バウンティパワーとバブルファクターの概念はすでにわかっているだろう。
バウンティパワーはバウンティの金銭的価値をチップに変換する。バウンティパワーが高ければ高いほど、私たちはルーズにプレーすることができる。
バブルファクターはポーカーにおけるICMプレッシャーを測るもので、スタックされることで失うトーナメントエクイティ($EV)を、他のプレイヤーをスタックすることで得られる$EVで割った比率と定義される。つまり、バブルファクターが高ければ高いほど、タイトにプレイするべきだということだ。
バウンティパワーとバブルファクターは、PKOトーナメントにおいて競合する2つの力である。私の共同執筆パートナーであるDara O’Kearneyは、この関係を「ICMダイヤル」と呼んでいる。時計やスピーカーのダイヤルを想像してもらえればいい。ダイヤルの一方の端にはバブルファクターがあり、もう一方の端にはバウンティパワーがある。PKOトーナメントではいつでも、この2つの力があなたを異なる方向に引っ張る。ベースラインとなるチップEVの範囲はダイヤルの真ん中あたりから始まり、ICMの圧力があればレンジは狭くなる、もしバウンティを得る事による利益が多ければ、逆方向にダイヤルを回す(レンジはルースになる)。実際はこれほど単純では無いが、この概念を覚えておくと視覚化するのに役立つ。
PKOトーナメントでは、ICMとバウンティーのどちらが自分のプレーに大きな影響を与えるかを常に自問する必要がある。
以下の表はPKOの入門書に掲載したもので、200人トーナメントにおけるバウンティパワーを示している。見ての通り、バウンティパワーはスタート地点で最も高く、高額獲得賞金になるにつれて低くなっている。これは、トーナメント後半になればなるほど、ペイアウトとファイナルテーブルの影響が大きくなることを意味している。
注意点として、この表におけるバウンティパワーは、1ドルのバウンティの価値をビッグブラインドに換算したものである。
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トーナメントのステージ別にバウンティの価値をグラフ化したものが以下である
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PKOの終盤で行うべき調整は、通常のMTTの終盤と同じように、よりタイトにプレーすることであることは明らかだ。問題は、どの程度タイトにするべきかである。
バブル
通常のMTTの後半のステージのスポットとPKOの同等のスポットを比較する必要がある。幸運なことに、GTOウィザードでは、後半のステージの「クラシック」ICMシナリオの多くにミラーPKOバージョンがあるため、それが可能である。
まず、同じスポットのトイゲームでの比較を見てみよう。どちらの例でも、バブルの近くにいて、テーブルの全員が30bbのスタックを持っている。もちろん、これは現実的な例ではないが、クラシックなMTTとPKOの大まかな違いを見るにはこれとない例である。テーブルセッティングは、このスポットのクラシックバージョンとPKOバージョンの両方で同じようになっている。唯一の違いは、PKOバージョンでは、各プレイヤーが125ドルから150ドルの間のバウンティを持っていることだ:
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レンジを見る前に、バブルファクターを見てみよう。まずはクラシックバージョンである:
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バブルファクターはスタックが全て同じなので全て同じである。1.8は非常に高いバブルファクターであり(これが赤で表示されている理由)、大雑把に言って、トーナメントライフを賭けるには64%の勝率が必要である。
次はPKOバージョンのバブルファクターである:
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この2つの差は大きい。バブルファクターが1を下回るPKOの開始時よりも、プレイヤーはChipEVよりもタイトにプレーしなければならないが、MTTのバブルステージとしてはまだ緩い。ここでバブルファクターが各プレイヤー間で若干異なるのは、バウンティが他のプレーヤーより若干大きいプレーヤーがいるからである。もう一度、ICMダイヤルを思い浮かべて欲しい。バブルによって、クラシックMTTのプレイヤーはバブルファクター1.8にダイヤルは引かれたが、バウンティによって、PKOでは1.22に引き戻されたというわけだ。
これが戦略にどのような影響を与えるか見てみよう。
クラシックなMTTの例では、これがBTNのオープニングレンジである:
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そしてこれがPKOでの同じスポットである:
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PKOのレンジは少し広いが、それ以外は非常に似ている。
これが、クラシックなMTTの例におけるSBの反応である:
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そして、これがPKOの例での対応である:
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どちらの例でも、約73%の確率でフォールドしている。しかし、フォールドしなかった場合のコンティニュー方法には大きな違いがある。
クラシックのICMの例では、SBはよりアグレッシブである。彼らは9.2%の確率でオールインをし、10.9%の確率でレイズし、6.2%の確率でしかコールしない。PKOの例では、SBはほとんどオールインをせず、17.3%の確率でレイズする。また、フラットコールも多く、合計で9.1%の確率でコールしている。
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これはICMとバウンティの競合するインセンティブを浮き彫りにしている。クラシックの例では、SBはスタックを賭けてプレイしたいわけではないし、フラットコールしてポジションを失いたいわけでもない。彼らはマルチウェイポットをプレイしたくないのだ。そのため、フォールドエクイティを最大化し、争われずにポットを取ることに大喜びする。クラシックのレンジはこのような理由からAxのハンドでよりアグレッシブであり、Aブロッカーがあることで、争うことをせずにポットを取る可能性が高くなる。これはよりアグレッシブに見えるかもしれないが、実際には他の2人のプレイヤーがフォールドすることが多いので、分散を低くする方法である。
PKOの例では、SBはBTNのバウンティを獲得しようとするインセンティブが強いので、オールインで脅かそうとはしない。また、ビッグブラインドのバウンティ獲得も視野に入れているため、よりフラットコールを増やしBBをポットへの参加へと誘う。
クラシックICMとPKO ICMの大きな違いの一つは、PKOではプレイヤーがマルチウェイポットをプレイするインセンティブが高いことである。
SBがフォールドし、BBがアクションすることになった場合を見てみよう。
クラシックの例ではこうなる:
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そして、これがPKOの例での反応である:
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どちらの場合も、同じような量のハンドをフォールドする。しかし、クラシックのレンジではフラットが多いのに対し、PKOのレンジではBBがより多くのチップをポットに入れようとする。
クラシック ICMでは、ソルバーは最も分散の少ないラインを取る。PKOでは、彼らは分散を受け入れることを気にしない。
SBがBTNオープンに直面した場合、最も分散の少ないコンティニューラインはオールインである。BBがBTNオープンに直面した場合、最も分散が小さいのはコールである。この例に限らず、PKOの場合、ソルバーは分散が高いほうのラインを取るほうに傾いていると言っていいだろう。この例では、コールで十分ディフェンス出来るようなハンドの多くをレイズしたりオールインするという形で現れる。
巻き戻して、SBがオールインでは無い3betをした場合に何が起こるかを見てみよう。
これがクラシックバージョンでのBBの反応だ:
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これがPKOでの対応だ:
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どちらの例でも同じようなハンドをフォールドしているが、2つの顕著な違いがある。
クラシック版ではより多くのオールインがあるが、これはフォールドエクイティを最大化することでハンドをヘッズアップに持ち込みたいという動機によるものである。BBは、クラシックの例では1人の相手に対してQQのようなハンドでアイソレートしたいが、PKOでは喜んでBTNを誘導する。
次に、レンジの形が違う。PKOのレンジはリニアなバリューレンジだが、クラシックのレンジはポラライズドである。これは、プレッシャーの高いクラシックICMのスポットでは、フォールドエクイティの方が重要だからである。BBが低いスーテッドエースをブラフとしてオールインするのは、それらがボタンのコーリングレンジをブロックするからである(そして、コールされたときに強いハンドを作る可能性がある)。
ファイナルテーブル
ICMのプレッシャーはバブル時に極端になる。では、より現実的な例で、今度は終盤の別のステージで、スタックサイズが異なる例を見てみよう。どちらの例でもファイナルテーブルには3人が残り、BTNにビッグスタック、SBにミディアムスタック、BBにショートスタックがいる。PKOの例では、バウンティは次のようになる:
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クラシックの例では、バブルファクターは大方の予想通りである。BTNとBBのバブルファクターはかなり低い。BTNは脱落の心配がなく、BBはすぐに動かなければ脱落が確実だからだ。SBは中位に位置し、BBより先にバストしたら悲劇となるので、バブルファクターは高い。
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PKOの例でも比率は同じだが、BFははるかに低い。実際、BBが絡んだ際のバブルファクターは1を下回る。たとえICMのプレッシャーがあったとしても、このプレイヤーのバウンティを獲得するためには、ChipEVよりも広く資金を投入することが他のプレイヤーの利益になる。
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まず、クラシックの例でBTNのオープンレンジを見てみよう:
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そして、PKOでの同等のレンジ:
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驚くことは無い。チップリーダー(BTN)がICMプレッシャーをかけ、2人のプレーヤーを排除して2つのバウンティを獲得することができるからレンジはよりワイドになる。
両方の例におけるSBの反応を見てみよう:まずはクラシック
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そしてPKO
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SBはICMダイヤルの真ん中にいる。彼らは先にオープンしたチップリーダーに脱落させれるリスクは冒したくないが、ショートスタックのBBのバウンティを獲得するチャンスも逃したくない。明確な違いは、クラシックバージョンではSBからのフォールドが多いことである。PKOの例の76.3%に比べ、クラシックは87.1%の確率でフォールドする。SBがコンティニューした場合、先ほどバブル下で見たときと同じようにクラシックの例ではフラットコールよりもレイズする可能性が高い。 SBはフォールドエクイティを使って争われずにポットを取ることに満足しており、3ウェイポットに巻き込まれたりBBにスクイーズされることを望んでいない。PKOでは、SBはBBのバウンティを獲得できる可能性があるため、より喜んで参加する。
SBがコールした場合、クラシックの例ではBBはこう対応する:
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そしてこれがPKOに相当する:
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繰り返しになるが、クラシックの例ではフォールドが多い。PKOの例では、BBがフォールドしてSBが脱落した場合、ペイジャンプを得ることを考えると、BBの関与の大きさが際立つ。どちらの例でもBBのスクイーズレンジはリニアだが、PKOバージョンではスモールペアに比重が置かれている。クラシックのICMのスポットでは、1人、場合によっては2人のプレーヤーに対して44で資金を投入するのは悲惨なことだが、PKOではより多くの分散を受け入れることに抵抗はない。
バウンティを獲得できないことを考えると、BBがこれほど関与していることに驚く人もいるかもしれない。そのため、これは彼らにとってクラシックなICMスポットに近いと考える人もいるだろう。そうでない理由は2つある。第一に、BBはバウンティのためにPKOでもっとライトにコールされることを知っている。A9や44でコールされた場合でもBTNのコールレンジよりもファイバリットである場合もあるというのは、荒唐無稽な仮定ではない。次に、綱渡りをする事はBBの利益にはならない。彼らはバウンティを獲得するために、残りの2人をカバーするスタックを築く必要もある。
PKOでは最もショートスタックのプレイヤーでもルーズにプレーする。なぜなら、スタックを築いて他のプレイヤーをカバーするインセンティブが働くし、(オールインした際に)相手からより広くコールされるからだ。
最初の点を証明するために、BBがオールインをした場合のクラシックの例でのBTNの反応を示す:
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そして以下がPKOでのスクイズに対するBTNの反応だ:
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BTNはPKOのほぼ2倍のハンドでコンティニューしている。あなたが既にPKOにおけるマルチウェイポットの記事をチェックしたなら、BTNがQTやJTのようなブロードウェイのスーテッドハンドを多く使っていることもわかるだろう(BBが喜んでこれほどワイドにオールインするのはそのためだ)。これらはSBが絡むマルチウェイポットで活躍するハンドである。また、BTNがオールインとコールを混ぜていることにも注目しよう。一方、クラシックの例では、彼らはヘッズアップに持ち込むためにアイソレートしている。もう一度言うが、BTNはこのポットがマルチウェイになり、2つのバウンティを獲得することに満足している。
さらに話を続けることもできるが、その代わりに、クラシックICMスポットとGTOウィザードのPKOスポットを比較して、自分なりに研究してみることをお勧めする。様々な終盤のシナリオで比較できる興味深いスポットがたくさんある。
まとめ
PKOにおけるICMは、多くの要因が複雑に絡みあって構築されている。プログレッシブノックアウトトーナメントが真に解決されることはないかもしれない。「ICMダイヤル」の両端から、あなたのレンジを狭めたり広げたりするような、競合するインセンティブが常に存在する。PKOにおけるスキルの要素は、ICMのプレッシャーとバウンティパワーのどちらが影響力が強いかによって決まるかもしれない。
この対立を研究する最良の方法は、クラシックとPKOの両方で、GTOウィザードのチップ分布の観点から同じ場所を見ることである。クラシックのスポットを基準として、PKOの例でバウンティーの影響力によりあなたの戦略を決定するのだ!
この記事のキーとなる部分
ICMとバウンティは競合する2つの力だ。どのような状況においても、どちらの影響力が大きいかを自問してみよう。
ペイアウトとバブルはレンジを狭め、バウンティはレンジを広げる。
PKO ICMの状況ではレンジが広くなる。
PKO以外のICMの状況ではフォールドエクイティを最大化させる戦略が多く使われる.
ソルバーはクラシックICMでは分散の大きいラインやマルチウェイポットを避ける。PKOでは分散を受け入れ、マルチウェイポットを喜んでプレイする。
クラシックICMではAブロッカーの価値が高い。マルチウェイが得意なハンドはPKOで価値が上がる。
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記事は以上になります。最後まで読んでいただきありがとうございました。
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