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【翻訳】PKOトーナメントでのマルチウェイポットの戦略【PKO】GTOWブログ.46

プログレッシブノックアウト(PKO)トーナメントは、従来のMTTよりもはるかに複雑である。プレイヤーはバウンティの為に高分散なプレイをするインセンティブがあるため、PKOトーナメントがいかに複雑であるかは、しばしば隠蔽される。この点でプレイヤーが苦労する分野の一つがマルチウェイポットである。複数のバウンティがかかっている場合、一見乱暴に見えるギャンブルをしたり、通常のトーナメント形式では採算が合わないようなプレイをするのが正しいことが多い。


複数のバウンティが懸かっている時、どこまでレンジを広げることが出来るか?

PKOトーナメントのエクイティの多くはマルチウェイポットからもたらされ、複数のバウンティや多くのチップを獲得できる可能性がある。通常のMTTのようなヘッズアップのポットとは異なり、3人以上のプレーヤーが自主的にポットにチップを入れることは日常茶飯事といえる。PKOトーナメントで最も興味深いのは、最初のハンドだろう。

バブルファクターについての記事を読んだことがある読者は、この画像をよく知っているだろう。これは、PKOの最初のハンドにおける全員のバブルファクターとリスクプレミアムである。バブルファクターは通常のMTTでは1を下回ることはなく、リスクプレミアムはPKOを除いてマイナスになることは無い。これは平たく言うと、PKOではチップEVのポットオッズが指示するよりも広く資金を投入するインセンティブが働くことが多いということだ。

PKOでプレーヤーをバストした場合、4種類のエクイティが得られる為である:

  1. 通常のMTTのように、トーナメントのペイアウトストラクチャーから賞金を獲得する。

  2. バウンティを獲得することで、すぐにエクイティを得ることができる。

  3. 自分の首にかかる懸賞金が大きくなるという形で、将来のエクイティを獲得する(これはトーナメントに勝つことでしか実現できない)。

  4. 他のプレイヤーをカバーすることで、より多くの賞金を獲得するチャンスが増えるので、将来のエクイティを獲得することができる。

PKOでは、通常の「バニラ」トーナメントに比べてチップを増やす事により得られるエクイティが大きいため、特に複数の賞金を獲得するチャンスがあるマルチウェイポットでは、ルーズにプレーするインセンティブが働く。これを簡単なトイゲームで説明しよう。以下の画像は6人のプレイヤーによるPKOではないSNGの最初のハンドの例である。
全員が10BBでスタートし、1位が$66.66、2位が$33.34を獲得する。
BTNはこのレンジの38.1%のハンドでオールインをする:

BTNがAIをすると、SBはレンジの17.3%のハンドでコールする:

最後に、SBがコールした場合、BBがレンジの6.1%のハンドでオーバーコールする

驚くことではないが、SBはBTNのAIよりずっとタイトにコールし、BBはSBのコールよりずっとタイトにオーバーコールする。
ペイアウトの仕組みをPKO SNGに変えてみよう。1位は$33.33、2位は$16.67、そして全員に$8.33のプログレッシブバウンティがかかる。今回も10BBスタックからスタートし、BTNまでフォールドで回る
BTNはこのレンジの41.9%のハンドでAIをする:

SBはレンジの29.9%でコールする:

最後に、BTNとSBの両方がオールインしている状態で、BBは27.3%のレンジでオーバーコールする:

最も明らかなことは、レンジがより広くなるということだ。PKOの例ではBTNが少し広くAIしている。SBは非PKOの例のSBの2倍以上のハンドでコールする。BBはPKOでない例のBBの6倍のハンドでオーバーコールする。

もう一つ注目すべき点は、SBがコールした後、BBがSBと同じくらい広いレンジでコールしていることである。これは、通常のMTTでは、複数のプレイヤーがオールインした場合、ICMの関係でレンジが狭くなるが、複数のバウンティを獲得できる見込みがあるため、より広くコールできるためである。

  • マルチウェイのオールインポットでは、レンジは狭くなるどころか広くなる。

  • カバーしているプレイヤーが多ければ多いほど、あなたのレンジは広くなる。

  • PKOトーナメントでは、どのハンドがマルチウェイに適しているかを理解することが重要である。

PKOは非常に複雑であり、真の意味で解かれることはないかもしれない。GTOWizardのPKOデータベースで利用できるソリューションは、すべてトイゲームの例でしかない。変数のちょっとした変更(スタックサイズの大小やバウンティ額の大小)で戦略がまったく変わってしまうからだ。その代わりに、幅広い教訓を覚えていくべきである。

どんなハンドがマルチウェイに向いているのか

PKOで、どれだけ広くコールできるかを理解したら、次に重要なスキルは、マルチウェイをうまくプレイできるハンドのタイプを理解することである。

今年初め、私はPKOリーダーボードで最もノックアウトを記録したが、その成功はファミリーポットをうまくプレイ出来るハンドを理解していること(そしてもちろん幸運も)に帰せられると考えている。特定の種類のハンド、たとえばスーテッドコネクターなど、チップEVのマルチウェイポットでよりよくプレイ出来ることがわかっているが、バウンティやプライズペイアウトと競合するICMの因子を考慮に入れる場合はどうだろうか?

この例では、UTG(2番目に大きなスタック)がオープンし、CO($50の賞金)が15bbをオールインする。アクションは10bbと$50のバウンティを持っているBBまでフォールドで回る。
まず、BBがフォールドした場合のUTGのコールレンジを見てみよう。
ここでは$50のバウンティを獲得するためにあと13BBポットに入れる必要がある

ここで、10bbを持つBBが同様にAIした場合のUTGの行動を見てみよう、つまり、彼らは2つのバウンティと23BBを追加でプレーしていることになる:

少し狭いレンジだが、それでもUTGはほぼ半分の確率でコールする。コールレンジをよく見てみると、何が見えるだろうか?前の例とほぼ同じ割合のハンドもあるが、レンジの形が変わっている。最も弱いハンドは前のレンジから削除されたが、いくつかのハンドが追加されている。AJo、ATs、KQo、55はコールしなくなったが、不思議なことにQJ♠、QT♠(より頻繁に)、T9♠がコールレンジに加わった。全体的なレンジは狭くなったが、マルチウェイの力学のために特定のクラスのハンドが追加された。QJ♠とT9♠はAJoとAT♠よりずっと「弱い」ように見えるが、ICMのプレッシャーと賞金のインセンティブがあるマルチウェイではその限りでは無い。

PKOではよく見られることだが、スーテッドブロードウェイのハンドは通常のトーナメントに比べて価値が上がる。

このような手札は、PKOで直面するような複数のワイドレンジに対して非常に強いので、このようなスポットでよく機能する。
QJsのようなハンドは、ワンペアを作ったときにfavoriteになりやすい。
AQ/QQ/JJのような強力なハンドをブロックしている。
QJsはストレートやフラッシュのような強いハンドを負けているハンドに対してドローで逆転することができる。
この例ではGTOのレンジを想定している。実際にプレイするPKOでは、相手のレンジはもっと広いことが予想されます。そのようなゲームでは、スーテッドブロードウェイのハンドはさらに強力になる。というのも、あなたのハンドは上記の理由だけでなく、それ以外にも優れたパフォーマンスを発揮するからである:

改善する必要がないことすらもある。

QJsではそうではないかもしれないが、KTsのようなハンドでチップを投入し、K9sやJToと対戦する事になるのは、全く珍しいことではない。このようなケースは、あなたがそのハンドで最もショートスタックであり、バウンティを獲得できないプレイヤーである場合に多い。プレイヤーはバウンティを獲得するために、相対的にそれほどコストがかからない場合、バウンティを獲得するためにもっと広くコールしてくる。
そのため、KQs-JTsのようなハンドはこのようなレンジでよく見かけるが、54sや87sのようなハンドは見かけない。スモールスーテッドコネクターはインポジションのディープスタックのポットでは活躍するが、プリフロップで全ての資金が投入された時には活躍しない。

バウンティターゲットをカバーしているが他のプレイヤーにはカバーされている場合

PKOで最も難しいのは、ショートスタックのプレイヤーがアーリーポジションからオールインをし、あなたのスタックが中途半端な場合である。もちろんあなたはバウンティを獲得したいが、より大きなスタックがあなたのに襲いかかることを恐れている。

  • AAのような最も強いハンドを罠としてフラットコールする。

  • KJ♠のようなマルチウェイが得意なハンドもフラットコールしておく(後ろからオールインされたらコールすることもある)。

  • AKoのようなマルチウェイが得意でない強い手をオールインする(ヘッズアップを狙う)。

  • 他の利益的なハンドはコールするが、3ベットにはフォールドする。

GTOWizardのこの例では、UTG1が18BBをオールインした。COは66BBを持っているが、残り数人のプレイヤーがそれをカバーしている。以下がCOの取るアクションである:

見ての通り、AAやKKのような最も強いハンドはトラップとしてフラットコールしている。KJsやKTsのようなブロードウェイのスーテッドハンドは、マルチウェイに強いのでフラット。AKoやAQsはJJやTTと同じようにオールインするが、これは、これらは非常に強いが一人の相手に対して最高のパフォーマンスを発揮するハンドだからである。99や88のようなハンドはコールするには十分強いが、大きなスタックが絡めばフォールドする。
実際、82BBのSBがショッブした場合のCOの反応が以下である:

ショートスタックとしてプレイする場合

もしあなたがショートスタックのプレイヤーであったり、莫大なバウンティをかけられているのであれば、これらのスーテッドブロードウェイハンドはあなたの最高の武器となる。複数のプレイヤーからコールされることを想定しなければならないので、ファミリーポットで耐えられるようなハンドが必要となる。

この例では、15BBと$50の賞金でCOまでフォールドしている。彼らのGTO戦略はこうだ:

彼らは最も強いハンドをオープンしてアクションを誘発し、最も弱いハンドはレイズ/フォールドする。スモールペアはポストフロップでエクイティリアライゼーションしにくいため、オールインする。また、スーテッドのAxやブロードウェイもAIする。

このようにBTNはAIに反応する:

そしてSBがフォールドしたら、BBはこう対応する:

スーテッドブロードウェイハンドについて話したことに戻ると、KTsやQJsのようなハンドがこの2つのレンジに対してどれだけ有利に戦えるかわかるだろうか?
多くの場合、QJsはこの2つのコーリングレンジに対してペアをヒットするだけでいい。QJsのような「弱い」ハンドが、例えばJTsのBTNやT9sのBBに「勝っている」場合さえある。もう一度言うが、これらはGTOのレンジである。実際のPKOでは、このような場面ではもっと広いコーリングレンジを見ることができ、スーテッドのブロードウェイハンドはより強力になる。

ショートスタックの攻略法

ショートスタックで、ヘッズアップでプレイすると良いが、マルチウェイではプレイできないようなハンドを持っている場合に、マルチウェイポットを避けるのに役立つ攻略法がある。 たとえば10BBで66を持っている場合、AIせずに、9.5BBとほぼAIと同等の額のレイズをする。両方の状況で同じフォールドエクイティを持ち、あなたは決してフォールドすることは無い。ただし、これにより、相手があなたのバウンティを獲得するために追加のベットを入れることを強制します。彼らはプリフロップでリレイズするか、少なくともフロップ後にベットする必要がある。

あなたのバウンティを狙う中程度のスタックのプレイヤーは、残っているプレイヤーが彼らをカバーしている場合に再考する事だろう。ビッグスタックがあなたをアイソレートするために3ベットしたり、フロップ後にベットしたりした場合、残りのプレイヤーは降りやすくなる。Dara O’Kearneyはこれを他のプレイヤーから「フォールドエクイティを盗む」と呼んでいる。なぜなら、他のプレイヤーのスタックを活用してハンドをヘッズアップにすることができるからである。

結論

PKOの複雑さは、このフォーマットが真に解決される可能性が低いことを意味する。また、そのことは伝統的なMTTと比べて、GTOとの乖離が大きくなることを意味する。PKOには、バウンティ目当てのギャンブルを好むレクリエーショナルプレイヤーが集まるからだ。特に、複数のバウンティがかかったマルチウェイポットではそうだと言える。その結果、GTOのPKOのレンジに比べ、レンジはかなり広くなる傾向にある。

キーポイント

バウンティが十分に大きく、レンジが十分に広い場合、PKOでは100%のハンドをコールするのが正しい場合がある。複数のバウンティを獲得するためには、スーテッドブロードウェイハンドが適しているというアドバイスは、現実のPKOでは二重に通用する。KJsのようなハンドを使えば、KJハイのままポットを獲得することもできるし、ワンペアを作ればいいことも多い。

ポット内のカバーするプレーヤーが多ければ多いほど、PKOでは自分のレンジを広げることができる。
PKOのマルチウェイポットでは、スーテッドブロードウェイハンドが活躍する。
実際のゲームでは、ショートスタックとして、オールインに近い額をベットする(リレイズされたらコールする)ことで、他のプレイヤーのスタックを活用し、ヘッズアップでポットを獲得するチャンスが増える。

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