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【翻訳】キャッシュゲームでのフロップオーバーベットについての考察【キャッシュ】GTOWブログ.71


オーバーベットはターンやリバーで行われるものが最も一般的であるが、フロップにおけるオーバーベットは、均衡状態において大量のEVを生み出すと同時に、エクスプロイトの観点からも大きなメリットのある破壊的な武器となり得る。
この記事では、ポラライズドフロップストラテジーを構築するためのツールを紹介する。なお、この記事は上級者向けなので、ポーカーに比較的慣れていない方は、まず以下のフロップCbetの記事を読むことを強くお勧めする。





なぜGTOはフロップでオーバーベットをするのか


GTOがフロップでオーバーベットを選ぶ理由を理解するためには、ナッツアドバンテージアージェンシー(緊急性)の概念に精通しておく必要がある。


ナッツアドバンテージとは

ナッツアドバンテージとは、自分のレンジの一番上に相手より強いハンドが相対的に多くある状態である。ナッツアドバンテージが直接オーバーベット戦略につながるわけではないが、ナッツ部分のアドバンテージが無いプレイヤーがオーバーベットをするのは稀である。

ナッツアドバンテージのあるプレイヤーにはスタックをポットに入れるインセンティブがある。理由は簡単で、プレイヤー間のレンジのトップ同士を戦わせるためである。ポットへのチップが増えれば増えるほど、レンジはどんどん狭くなっていく。その結果ナッツアドバンテージがあるプレイヤーがこの対決に勝つことが多くなる。オーバーベットはこの目標を達成するための強力な手段である。



アージェンシー(緊急性)とは

「アージェンシー」とは、「急ぐべき所」と呼ばれることもあるが、今は非常に強いハンドを持っているが、後のストリートではその強さを維持するのが難しい場合を指す。
例えば、JJでBTNでオープンし、BBにコールされ、T85レインボーのフロップの場合である。このフロップでは、JJは現在相手のレンジの97%をリードしているが、エクイティは79.6%しかない。このため、JJはオーバーカードやドローの相手に追いつかれる前に、素早くポットを構築する必要がある。



フロップオーバーベットの練習


次のセクションでは、最も一般的なフロップのオーバーベットのスポットで、学んだことを実際に使用出来るようになることを目的としていく。まず、頻繁にオーバーベットされるフロップのカテゴリーをいくつか見てみよう。次に、ソルバーがなぜオーバーベットを選択するのかを理解するのに役立つ、ハンドの弾性などのトピックについて説明する。


ダブルブロードウェイボードでのオーバーベット

ダブルブロードウェイボードでのオーバーベットは比較的一般的である。このボードタイプでフィルタリングすると、オーバーベットがしばしば主要な戦略であることがわかる。


オーバーベットが採用されるのは、このようなボードは以下の特徴があるからである:

  • PFR(preflop raiser)に大きなナッツアドバンテージがある。

  • 多くのドローが存在するが、まだ1つも完成していないため、できるだけ早くナッティなハンドでポットを構築する動機がある。

ダブルブロードウェイボードについてもう少し調べてみよう!
フロップ戦略を検討する際には、ツートーンボードとレインボーボードを比較するのが有効である。両者の戦略にはかなりの違いがあるからだ。


この2つのフロップを並べて比較することで、アージェンシーの効果を直接比較することができる。どちらのフロップでも、PFRは大きなナッツアドバンテージを持っているが、ツートーンのバージョンでは、サイズを大きくしてベットする頻度が少なくなる。この理由は当然である: 私たちはアウトドローされやすいので、後でベットするより今バリューベットした方が得だからである。


K72のようなボードでオーバーベットが起こらない理由もここにある:


ナッツアドバンテージがあるにもかかわらず、私たちはナッツハンドを中心にフロップ戦略を立てるよりも、ブラフを中心に戦略を立てることを好む。相手のレンジには弾性のないフォールド(どんなベットにもフォールドしなければならないような絶望的なハンド)が多いので、フロップで小さくベットしてブラフのリスクを少なくすることで、このアドバンテージを生かしたい。

ほとんどのターンやリバーはクリーンなので、後のストリートにオーバーベットを組み入れるだけでポットにお金を入れることができる。ゆえにフロップはブラフを中心に組み立て、ターンとリバーはナッティなハンドを中心に戦略を組み立てるわけである。


ミドルボードでのオーバーベット

よくある誤解として、フロップのオーバーベットはハイカードのボードでしか起こらないというものがある。表面的に見れば、この俗説を信じるのも無理はない。実際プリフロップのレイザーよりもプリフロップのコーラーの方が973rのフロップでペアを作ることが多いのだ。しかし…


プリフロップコーラーが私たちよりレンジ内で多くのペアを持っているのに、なぜオーバーベットを選ぶのだろうか?
答えはペアの質に関係がある!全体的にレンジ内のペアが少ないにもかかわらず、BTNはすべてのオーバーペアを独占している。このボードにはツーペアやストレートの可能性がほとんど無いため、どのオーバーペアも基本的にナッツとなる。


ナッツアドバンテージ+ドローヘビーなボード=アージェンシーが発生する(緊急性)→ビッグベットに繋がる



アージェンシーがオーバーベットに繋がるという概念はすでに探求したので、次はハンドの弾性の概念と、それがフロップ戦略にどう関係するかを探ってみよう。


弾性とはなにか

弾性とは様々なベットサイズに対してハンドがどの程度アクションを変えやすいかを意味する。


https://blog.gtowizard.com/wp-content/uploads/2023/06/gto-wizard-overbetting-the-flop-in-cash-games-image-gif.gif

上のグラフを見れば、弾性のあるハンドと無いハンドを判断できる。
44は弾性のあるハンドである。33%の小さなポットベットに対しては常にコールすべきであり、50%ポットに対してはフォールドを混ぜ、75%ポットに対してはほとんどフォールドすべきである。オーバーベットに対しては、このハンドはもはやコンティニューできない。K7sとQ2sはどちらも弾性の無いハンドの例である。Q2sはベットサイズに関係なく常にフォールドしなければならないが、K7は150%ポットくらいまでコンティニューするべきである。
レンジ全体は弾性という観点から考えることが出来る。弾性のあるハンドがレンジ内に多ければ多いほど、より大きなベットサイズを含む色々なサイズのベットに適応することが出来る。また、弾性はインディファレントやハンドターゲッティングの概念と関連している。


ダブルブロードウェイのボードを思い出してみると、98のような手はフロップですでに0EVに近いので、フォールドアウトする意味がない。その代わりに、QJ, QT, JT, Kxのようなハンドをターゲットに大きなベットでインディファレントにさせる。


SBコールドコーラーに対するIPからのオーバーベット

ほとんどのプレイヤーはSBに対してBBと同じ方法でプレイするが、これは間違いだ!これを理解するためには、低いペアのフロップを見るだけで十分だ。


33%サイズのレンジベットでは無い!なぜなのか?
SBのコーラーはBBよりポットオッズがかなり悪く、BBにスクイズされるリスクもある。その結果、ほとんどがポケットペアとスーテッドブロードウェイカードのコールレンジになる。


このレンジにはポケットペアが多く、トラッシュがないため、ローボードではSBはほとんど常にIPのプレーヤーよりエクイティアドバンテージがある。


SBとPFRのEVを比較すると、興味深いことがわかる。SBがエクイティアドバンテージを持っているにもかかわらず、実際にはPFRが全体的なEVで優位に立っているのだ。予想するのは容易であるが、ナッツアドバンテージが原因である。オーバーベットが最も効果的な戦略である理由は、SBのオーバーベットに対する反応を見れば直感的に理解できる。


オーバーベットはポケットペアと強いエースハイを完璧に狙っている!インディファレントなハンドを見て欲しい!これがELASTICITYだ!
SBのレンジはプリフロップで既にコンデンスドなので、スモールベットでは大した効果は得られない。やりすぎだと感じるかもしれないが、SBのレンジに対するスモールベットとBBのレンジに対するスモールベットのフォールドエクイティの違いを比べてみよう。


フォールド頻度は20%も低い!


IPのプリフロップコーラーがチェックされた時のオーバーベット

最後のポイントは、PFCとしてオーバーベットしているという異色のスポットである。このセクションではHJ vs BTNのSRPに焦点を当てるが、ブラインド対ブラインドの場面を含む、ほとんどのIP PFCのスポットで同様の原則が適用される。


SBのフラットレンジと同様、BTNのレンジは主にポケットペアとスーテッドブロードウェイカードで構成される。
ローボードでチェックされた場合、IPの戦略は主に高い頻度のスモールベットで構成される。ポケットペアにはオーバーカードのエクイティを否定するインセンティブがあり、スモールベットはこれらのネイキッドなオーバーカードを攻撃するのに最適なベットだからである。後のストリートでは、必要に応じてナッツハンドでサイズアップすることができる。
Aハイのボードではオーバーベットが主流であり、A lo loのボードほどその傾向が顕著になる。


セットと2ペアの存在により、このボードではIP側にナッツアドバンテージがある!


オーバーベットはHJのAxとアンダーペアをフロップでインディファレントにさせる役割を果たす。これが狙いだ!


まとめ


結論として、フロップでのオーバーベットをマスターすることは、ライバルに差をつける強力な戦略となり得る。この記事では、破壊的なオーバーベットを利用して相手を打ち負かすことができる様々なシナリオを検証した。
フロップのオーバーベットを考える際には、以下の3つの重要な要素を考慮に入れる必要がある:

  • ナッツアドバンテージ - 自分のレンジの中で、どちらが強いプレミアムハンドを多く持っているかを見極める。

  • 緊急性 - 強いが脆弱なハンドの方が、すぐにポットを構築するインセンティブが高い。

  • 弾性 - ベットサイジングに対する相手の反応はどの程度敏感か?

フロップのオーバーベットを効果的に実行する鍵は、スポットを賢く選ぶことである。


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記事は以上になります。最後まで読んでいただきありがとうございました。
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