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第1節vs京都「今年のレノファスタイル」

みなさんこんにちは。

Jリーグのない週末が続いた、長いシーズンオフを乗り越えたと思ったらまた中断ということで、なかなか気分が乗り切らないところではないでしょうか。まあ、現状を考えると仕方のないことですし、運営側が一番苦労していることだと思います。個人的には選手やスタッフに感染が広がらないことをなにより願うばかりです。

さて、そんなこんなで忘れかけられている頃かと思いますが、我らがレノファ山口は開幕戦で京都サンガに1‐0で勝利しました。主力が大量に流失した昨シーズンオフに始まり、昨シーズンと違って今年はプレシーズンマッチもなかったことから、レノファに対する印象を「未知数」として開幕を迎えた人が多いのではないでしょうか?私もその一人です。

そんな中、庄司悦大や黒木恭平といった昨シーズンの主力選手が残留したことに加え、ピーターウタカや森脇良太、ヨルディ・バイスに李忠成といった元日本代表のビッグネームや、何故だかレノファサポーターの脳裏に名前が焼き付いているような、強力な選手の補強に成功して「昇格候補」とも呼べるような戦力を持つ京都といきなり対戦し、勝利しました。(ちなみに私は、2017年の岐阜戦がトラウマなので、ポゼッションサッカーを掲げるチームと開幕戦で当たることに少々恐怖を感じていましたが...。)

この試合の唯一の得点シーンについては、正直ラッキーな要素もありました。試合を通して華麗なサッカーを披露したかと言われれば、少し違う気がするし、まだまだ出しきれてない部分が多いと思います。試合後の監督インタビューを聞いていてもそんな感じがしました。それでも、この試合では今年のレノファスタイルの片鱗をみることができたので、今回はその「今年のレノファスタイル」について昨シーズンまでとの比較をしつつ考察していきたいと思います。

1.ダイレクトなビルドアップ

サッカーにおいてビルドアップとは、「ボールを前進させる手段」のことであり、その手段には様々なものがあります。昨シーズンのレノファはキーパーから短いパスを繋ぎながら前進していくビルドアップを試みる場面が多く、それによってスタジアムがざわつくような場面が結構あったように思います。特にシーズン途中のルール改正後には、PA内で味方のゴールキックを受けれるようになったこともあり、中盤戦~後半戦あたりで、「センターバックが開いて、三幸が降りてきて~」みたいな場面が結構目立ちました。

しかしこの開幕戦では、そのような場面は昨シーズンほど多く見られず、逆に吉満から長く、時には高~いボールが前線に向かって蹴られるような場面が目立ちました。これもまた立派なビルドアップの一つてあり、より直接的(ダイレクト)に前線及び相手ゴールを目指すという方法です。このように昨シーズンと比べてビルドアップに違いが生まれたのはなぜでしょうか?私は昨シーズンからのメンバーの入れ替わりが主な理由だと考えています。そこで、この日のレノファのスタメンを見てみましょう。

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まずは前線に目を向けてみることにしましょう。真ん中に185cmのサイズを持ち、競り合いに強く当たり負けしないイウリというターゲットがいます。実際にこの試合でも、イウリが相手DFと競り合ったところからGKと1対1となる局面を作りました(85分あたり)。また、このイウリという選手は足元の技術もあるようで、単に競り合うだけでなくしっかりとキープして前線で時間を作ってくれるような選手です。そのため、前線のイウリめがけて大きなボールを蹴ることは、自陣ゴール前でボールを奪われるリスクを抑えつつ、一気に前線でチャンスを作り出すことのできる戦術の一つだと言えます。また、中盤に入っているへニキも味方のゴールキックに対して競り合う場面が見られたため、昨年に比べるとターゲットが増えたと言えるのではないでしょうか。

2.チームの色が出る「中盤の構成」

そのへニキが位置する中盤に目を向けると、昨年とはかなり印象が異なります。分かり易くするために、昨季開幕戦のメンバーと比べてみることにしましょう。ちなみに、フォーメーションはいずれも4‐3‐3(中盤は逆三角形)という、同様のものを採用しています。

中盤比較

3人とも見事に入れ替わってますね。この2種類の中盤を比較して、みなさんはどのような印象をもったでしょうか?個人的には「どちらかといえば、2019年は攻撃的で2020年は守備的」という印象を受けました。とくに赤い色を付けたアンカーの部分。ここについては大きな違いがあるのではないでしょうか。シーズン終盤にはトップ下に入ることが多く、足元の技術が優れていて、そのパスが攻撃の起点となっていた三幸。一方で、試合終盤にはセンターバックに入ることもあり、その180cmを超えるサイズで相手の攻撃を跳ね返し、パスカットで相手の攻撃の芽を摘むへニキ。この対照的ともいえる特徴を持つ2人が同じポジションを務めているという点を見るだけでも、それぞれが求められているタスクや、チームとしてゴールへ向かうまでの形が異なるということがわかるのではないでしょうか。実際、この試合ではかなり守備が安定していました。もちろん、中盤だけでなく、経験豊富な選手をそろえたDFラインの活躍があってのものですが。

一方で、へニキの足元の技術というのは開幕戦を見て何となく察した方もおられるかと思いますが、三幸のそれに比べるとかなり劣ります。そのため、短いパスを繋いで~とか、とりあえずアンカーに預けとけ!みたいなことをすると、現時点ではかなりリスクを負うことになりそうです。ただ、その辺りは、素人の私なんかよりもピッチ上の選手の方がよく理解しているため、無理に繋ぐ場面は見られず、リスキーな場面では前に蹴り出すという風な感じで、かなりプレーがはっきりしていたと思います。これらの点を踏まえると、昨シーズンまでと比べれば失点数は減りそうです。いや、広島との練習試合のことは忘れてください。

3.アタッカーが求められるもの

さて、ここまでで今シーズンはどうやら守備が安定しそうだということが分かりました。でもレノファと言ったら攻撃ですよね。開幕戦で取った唯一の得点はキーパーのミスによって生まれた、ラッキーな要素が絡んでのものでした。ゴール前で華麗にパスを回して崩すようなシーンもありませんでした。では、レノファの攻撃的なスタイルはもう見れないのでしょうか?

私は決してそんなことは無いと思っています。今年のレノファもこれまでとはプロセスは違えど、変わらずベクトルを前に向けてゴールへ迫るような魅力的なサッカーを見せてくれるはずです。少なくともその片鱗は開幕戦でいくつも見せました。

開幕戦では、全体的に前線から迫力を持って守備をする場面が見られました。イウリがファーストディフェンダーとなり、コースを限定するほか、サイドでは森や高井が球際に激しくチャレンジをしていました。結果、高い位置や中盤でボールを奪うことに成功し、そこからチャンスを迎える場面が見られました。88分の高井がキーパーと1対1になった場面なんかは、それを象徴するようなシーンでした。また、第1章で登場した「ダイレクトなビルドアップ」により、イウリもキーパーと1対1を迎える場面がありました。このように、今年のレノファのスタイルから考えると、アタッカー陣がゴール前で数的同数のチャンスを迎える場面が多くなることが考えられます。しかしながら、このような一気にチャンスを迎える場面では、味方が上がってくるのを待っていたりすると、相手に陣形を整えられるため、それまでにゴールネットを揺らす必要があります。ましてや、中盤の構成が守備的であるならば尚更に中盤の選手の上がりは期待しない方が良いでしょう。

そこで、アタッカー陣、特に森・イウリ・高井が務めた3トップには、より個人の質が求められます。チームスポーツのサッカーといえど、最後は決定力をはじめとする、個人の「質」が勝負を分けます。そして今シーズンのレノファスタイルも、結構そこに左右されると私は感じています。逆に言えば、イウリと高井がそれぞれあの1対1の場面を決めることができていたなら、スコアは3‐0になっていたかもしれません。伸びしろは十分にあります。

ちなみに、開幕戦の後半にあったレノファボールでのキックオフは後ろに下げたボールを短く繋ぐのではなく、前線に蹴り出すというような形でした。ここにも、今シーズンの攻撃の特徴が現れているのかもしれません。

4.両サイドの三角形

ただ、アタッカーに質が求められるからと言って「外国人FW頼みのサッカー」になってしまったかというと全くそんなことはありません。これまで通り、組織で崩す場面も見られました。特に、両サイドにおいて、サイドバック・インサイドハーフ・ウイングの連携は今年のレノファにとってカギになりそうですし、開幕戦に関しては結構うまく行っていたと思います。サイドで三角形を作って攻めていくイメージですかね。(下図参考)

myboard(三角形)

この三角形の連携は、今シーズンの見どころの一つです。特に武岡、安在という経験豊富なサイドバックと勢いのある森、高井という両翼を繋ぐという意味では、それぞれ特徴の違う池上、高という両インサイドハーフの役割はかなり重要になってきそうです。また、ここにへニキや両センターバックが絡んでくると、なお面白いことになりそうですよね。49分のシーンなんかはそんな感じで見事な連携を見せていました。

myboard(47分)

このシーンは、京都の右からのクロスを武岡が頭で弾き、そのボールに対して森晃太がチャレンジしたところからスタートしました。図のようにへニキが絡みつつ、森・池上がそれぞれ、ただパスを出すだけでなく、パスの後にしっかりと駆け上がることでチャンスが生まれました。最終的には森のクロスが少しずれてしまったこともあり、ゴールとはならなかったものの、逆サイドの高井もしっかりとゴール前のスペースへ入ってきていたので、紙一重という場面でした。このような場面においても、前項で述べた前線の選手にに求められる「質」が上がってくれば、得点という結果が自然と付いてきそうです。

ここまで、開幕戦を見た上で私なりに今年のレノファについて考えて書いてきました。これまでの情報をまとめると、「昨シーズンとは異なる特徴の中盤の構成により、守備はかなり安定する一方で、キーパーから短いパスを繋ぐビルドアップは減りそうです。ただ、ダイレクトなビルドアップを用いて効率よく相手ゴールを狙い、サイドなどでは連携を見られそう。得点数に関しては前線の選手の質次第で大きく変わる」というところでしょうか。ただ、「ベクトルを前に」というコンセプトはこれまでと変わらず、その激しさには磨きがかかっていた様に感じました。これがいわゆる「レノファのスタイル」なのかなと私は思います。

これからのシーズン、どんどん成長していくであろうレノファを一緒に見守っていきましょう。

では、また。

いつもサポートをしてくださる皆様、本当にありがとうございます。