終わり
付き合ってちょうど4ヶ月目の日付が変わった夜中に、電話したいって連絡が来た。大事な話があるって。ちょっと、そうなのかなとは思ったけど、前にも大事な話って言って別れ話じゃなかったから、置き手紙のお返事でもしてくれるのかなって呑気に思ってた。
「別れたい。」って、はっきり言われて、頭が真っ白になった。嘘でしょって。全然そんな予兆なかったじゃん、いつも通りだったでしょ?って。混乱した。混乱して、同じことをたくさん聞いて呆れられてしまって、もう負の連鎖が起きてしまって最悪だった。
電話の内容はほとんど覚えていない。頭が全然回らなくて、泣きたくなんてないのに涙が勝手に出てきて、「別れたくない。」しか出てこなくて、明日からどう生きてけばいいの?って、そればっかりだった。わたしは、最後までかなり自分勝手だった。別れたいって言い出すのにも勇気がいったよな、とか、そんなことは1ミリも考えられなかった。挙句、付き合うって2人ですることなのに、なんで勝手に1人で結論づけちゃうの?わたしの気持ちはどうなるの?なんて、責め立ててしまった。でも、一言相談とか、ほしかったし。ぶっちゃけ別れたいって思ってるんだけど、ゆうちゃんは?とか、会ったときに聞いてほしかった。そんな、電話で一方的に言ってほしくなかった。これって、わがままなのかな。
週末に会う予定だったけど、会ったらこの電話の勢いにまかせてもう終わりってなりそうだから、ちょっと落ち着いてほしくて次会う予定だった日にずらしてもらった。一瞬の気の迷いかもしれないし、疲れてたからそう思っちゃったのかもしれないし、会わない時間が長かったら気も変わったりしないかなって、ちょっと期待も込めて。でもまぁ、無理だろうなとは思っている。そっか、こんなにあっけなく終わっちゃうんだ。こないだまでくっついて笑い合ってたはずなのに、別れってこんな急にやってくるもんなんだって、ひとつ学びになった。
電話から2日経って、かなり冷静に考えられるようになったけれど、会うと取り乱してしまうんだろうなって憂鬱になる。気にしてませんよって、終わりなんでしょ?って、余裕のあるわたしでいたいのに、きっと会ったら、帰りたくない、別れたくない、考え直してって、そればっかりなんだろうな。そんなこと言ったって、もう無駄なのに。
だから、できるだけ明るくお別れできるようにっていろいろ考えている。最後は握手でお別れするんだって勝手に決めている。本当はハグがいいけど、そんなことしたら離れられなくなっちゃうし、相手も嫌な気持ちになるだろうから。だいたい、世のカップルたちはどうやってお別れするんだろうか。カフェで別れ話して、そのまま別れたりするのかな。それで、荷物は後日送ってねとか、そんななのかな。わたしは、そういうの嫌だな。別れ話じゃなくて、思い出話がしたい。できれば笑ってお別れしたい。楽しかったね、ありがとうね、お互い頑張ろうねって、そうやってお別れしたい。だって、マッチングアプリで出会ったわたしたちに共通の知り合いなんていなくて、もうお別れしてしまったらそれで最後なのだ。寂しい。でも、別れたあともちょくちょく会うとか、そういうダラダラしたことはしたくない。そもそも、お友だちになんてなりたくないし、なれないよって思う。あ、でも飲み友だちにはなりたいかも。これって、矛盾してる?まぁ、勝手に思ってるだけだから。向こうが嫌だって言ったら、仕方ないからね。
LINEのお気に入り登録を外して、ピン留めを取って、そしたらたった一日で下の方までいっちゃって、なんだ、こんなもんかって思った。パスコードも相手の誕生日にしていたから、元々使っていたものに戻して、こうやって日常に戻っていくんだなって思った。今までは日常じゃなくて、神様がくれたボーナスタイムみたいなものだったんだなって。病気したりいろいろ大変だっだから、一時でも幸せを味わせてくれたんだなって。そう思うことにした。だいたい、わたしにとって都合のいいことなんてそう長くは続かないんだ。
前の日記を読み返していたら、大事にしないと捨てちゃうよって書いてあって、わたし、やっぱり大事にできなかったんだなって思った。あんまり相手のことを慮れていなかったかもしれない。向こうはわたしの性格とかわかってきたって言ってたけど、わたしは最後までよくわかんなくて、そういうところがダメだったんだろうなって思った。わたしにあの人は、どう考えてももったいなかったし。良い人だからすぐ次も見つかるんだろうな。俺、モテへんよ、とか言うけど、案外モテちゃうって。わたしがあんなにメロメロになったんだもん。他の子が放っておかないよ。わたしのほうは、てんでダメだろうね。もう次はないかも。今だからこう思うんじゃなくて、もともとそういう考え方なの。今回はラッキーだったってだけで、わたしを誰かが好いてくれるなんて、ほとんど奇跡に近いことなのだ。
この2日間で、体重は3キロ落ちた。お腹が空かなくて、何か口に入れてもすぐ気持ち悪くなってしまう。お腹すいたーって四六時中言っていたのに、こんなにお腹が空かないなんて不思議。失恋ってほんとにこんなになるんだ。可笑しいねー。
次会ったとき、げっそりしちゃってて心配してくれたりしないかな、とか、考えてる。馬鹿だから。でも本当にげっそりしていたら、優しいから心配してくれるんだろうな。そんな誰よりも優しいところが好きだった。家族に縛られてるわたしを、優しさで溶かそうとしてくれるところが好きだった。わたしのわがままを、笑って許してくれるところが好きだった。どんなときでも「寒くない?」って気遣ってくれるのが好きだった。今まで26年生きてきて、いちばん好きだったよ。わたしは、別れた後もキョーレツに記憶に残る女の子かな?次に別の子と付き合っても、ちょっとわたしのこと思い出して、ひどい女だったなーって笑っていてほしいよ。わたしもさ、あんなに優しい人なんで大事にできなかったかなって、ずっと後悔するからさ。笑顔でお別れして、そして呪わせて。そっちはその優しさで、わたしを呪ってんだからさ。
だいたいさ、この先、aikoとPK shampooが好きで、星新一が愛読書で、左利きで、わたしをお姫様抱っこできて、食の趣味が合って、サイゼリヤや王将でデートしてくれて、オリオンビールが好きな人なんて、出会えるわけないじゃん。存在自体がもう、呪いである。運命の出会いだったって、思っちゃってもしょうがなくない?!?
後悔したくないから、残りの2日でわたしはやりたかったとこできるだけするつもりだけど、許されるかな?最後までわがままな女だったなって、思われちゃうかな。まぁ、それでもいいか。わたしと付き合ったら大変だよ?って、ちゃんと予告してたしね。ハズレくじ引いちゃったって、思ってればいいよ。わたしに呆れて、うんざりして、そんで他の人と幸せになって。わたしはあんたが呑気に笑って過ごしてくれてたらそれでいいんだから。バーカ。
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