2024 J2 第23節 岡山vs仙台 レビュー

チケット完売、満員御礼ということで今年最多の15,269人が試合に訪れたシティライトスタジアム。

こう聞いたときに浮かぶのが、たくさんのお客さんが来たからこそ、勝ってほしいという思いです。普通は大声援に押されてチームが勝つ、という流れだとは思うのですが。
特にこの試合はTシャツ配布の試合ということもあり、年一回の観戦でこの試合を楽しみに来た、というお客さんが多くいらっしゃたのではないかと思うのです。
そうしたお客さんの心をファジが掴んでほしい、あわよくば年1回の観戦から年2回に、年2回から3回に…と増えてほしいと打算的に思ってしまいます。

結果として、今年のTシャツ配布試合は最良なものとなりました。試合内容からしても、楽しみにしていた方が満足するものではなかったでしょうか。


1.スタメン

ここに来て起こってほしくない事態が起こってしまいました。
前節まで全試合出場していた藤田息吹がコンディション不良でベンチにもいない状況となりました。これまで数多くのボール奪取とダイレクトパスでチャンスを演出してくれた藤田の不在は頭が痛いところです。
また末吉も前節同様不在。ここもコンディション不良とのことですが…。

藤田以外では柳育崇→田上、藤井→髙橋の2人が変更。田上は仙台の前線のプレスに屈せず繋いでほしい、髙橋はドリブルで仕掛けたりサイドに流れたシャドーの選手をパスで使ったり、といったことが求められているのではないかと思いました。

仙台も3人が変更。仙台も怪我人によるメンバー変更があったようで、ともに苦しいメンバー選考の中であることを伺わせます。


2.試合

仙台の攻撃面で特徴的なのは、ボールを保持する際に最終ラインが4枚から3枚に変形することです。最終ラインに3人が並び、右SBが高い位置取りをすることで右SHと合わせ右サイドに人数をかけ攻略することが目的だと推察します。
前半でいうと、右SB高田が高い位置を取り、場合によってはインナーラップをして右サイドに張るオナイウと2人で右サイドの高い位置を攻略していきたい意図を感じました。

上記リンクは仙台の時間帯別パスネットワーク図になります。特にボールポゼッションの安定していた前半30分‐前半45分の図に、仙台がボール保持時に3バックでいたこと、右SBがの②高田が高い位置を取り、かつ内側のポジションを取っていたこと、㉗オナイウがサイドに張り、②高田と近い距離感でサイドを攻略しようとしていたことが顕著に現れています。

一方の守備面では、前線からプレッシャーをかけ、岡山の3バックを自由にやらせないようにしていた印象です。具体的には仙台の2トップ+SHが岡山の3バックに対してプレッシャーをかけに行くことでボランチへ自由にパスを出させないようにしていました。ただしそのプレッシャーをかいくぐられるようなら4-4-2のブロックを敷いて対抗していました。

岡山としては仙台の攻めに関して冷静に対処できていた印象です。攻撃と守備でシステムが変形するのはJ2の中では珍しいチームだと思いますが、最終ラインを5枚に設定することでスペースを与えず、高田のインナーラップに対しても陣形を崩すことなく対応できていました。
その中で局面に応じ、ボール保持をしたい仙台に対し前線からプレスをかけることで、仙台の前進も阻止することができていました。

攻撃面でもルカオをターゲットにうまく前進を図れていました。右サイドで起点を作り、クロスを上げ、逆サイドのWB髙橋が飛び込む、という形をうまく作れていました。このあたり、岡山が両WBが高いポジションを取ることで、仙台の4-4の守備ブロックで対応できる外側に選手を置くことができ、チャンスを作ることが出来ていたように思います。
同様に、17分には田上のフィードに柳貴博が抜け出すシーンも作ることができました。これは岡山が左サイドで組み立て仙台の4-4の守備ブロックを右に寄せたことで、守備ブロックの大外から内側に進路をとった柳がフリーで抜け出すチャンスを作ることができたものです。

しかしその起点を作っていたルカオが24分に負傷交代してしまいます。
試合中もベンチに顔を見せていましたが、詳細は検査してみないとわからない、とのことで…これ以上の離脱は出てほしくないところです。

ルカオの交代にあたり岩渕を前線の頂点においた形に変更しましたが、DAZNでの試合後の監督コメントでもあった通り、うまく前線3人でボールを引き出せていた印象です。
例えば先制点のシーンは、前線の選手たちのポジション取りの良さが現れていたのではないでしょうか。

もちろん岩渕の動きも見事でした。一度DFで受ける動きを見せてから、ボールが柳貴博へ出るとわかるやいなやDFの視界から消えるように動き出し、柳のシュートのこぼれ球を押し込みに行っています。ただ岩渕だけでなく、このゴールシーンの早川のポジション取りも見事だったと思います。
早川が仙台のボランチとDFの間でしばらく漂い、フリーでボールを受ける素振りを見せたことで、仙台DF知念がチェックに行く動きを誘発しています。このプレーがあったからこそ、柳貴博の走り込むスペースが出来、ゴールが生まれました。

またこのシーンも先に触れた仙台の守備ブロックの大外を突けたシーンであり、また仙台としてはDFではなくSHが柳貴博をマークせざるを得ない状況を作られたことが失点につながった要因でもありました。このあたりが「SBがCBに吸収され、サイドハーフが戻るような感じになってしまって、後ろに重くなってしまいました。」と仙台の森山監督が試合後のコメントで語られていた点なのかなと思います。

また上記のプレーの中では触れませんでしたが、竹内のパスの前に仙台SBの裏をとり、クロスを上げた田中雄大の動きも見事でした。そのシーンに限らず、30分手前のシーンなど田中雄大は仙台のボランチの横や前のスペースに顔を出してボールを受けていました。

後半、仙台はメンバーを入れ替え、少し立ち位置も変化させたようでした。
一つはハーフタイムでエロンを投入したことで、最前線で起点になる動きを求めたことです。
もう一つは郷家をSHに置くことで、SHが中盤の少し絞った位置でパスを受けさせたい意図もあったように感じました。

前半、SHとしてオナイウがワイドに張った位置にポジションを取り、その内側を高田が突くことを求めたのに対し、あらかじめ郷家がSHとして内側に絞った位置でボールを受けることでパス回しを円滑にすることと、空いたスペースにSBが攻撃参加することを求めたように感じます。より攻撃的なプレーができる真瀬を同時に投入したのもそのあたりの意図ではないかと推察します。

ただ岡山にも前向きなプレーが多く出ていたのも事実かと思います。高い位置からの前線のプレッシャーをかけることで自由にボールを蹴らせず、あるいはボールそのものを奪うこともできていました。また前線の選手たちもボールをうまく引き出すことで、多くのチャンスを作れていたように見えました。

一方で60分を超えたあたりから、仙台の攻勢が強まっていきました。エロンの起点になるプレーと、SB真瀬のオーバーラップが目立ち、また郷家のパスを受ける動きも使えるようになっていきます。65分〜70分の時間帯はほぼ仙台がボールを握る展開になりました。
それでも岡山がDFだけでなく、柳貴博や竹内など中盤の選手たちも献身的に守備に関わることで仙台の攻勢からのがれます。

そして71分、一瞬のチャンスを岡山が仕留めます。
セットプレーのボール処理のこぼれ球を拾い、田上が蹴り込みました。
退場した千葉戦以来のスタメン、期するものがあったと思います。その中で苦しい時間帯でチームを救うゴールを決め、田上ここにあり、というものを示してくれたと思います。

失点後も仙台は名願の突破からチャンスを作りますが、そこで得たセットプレーで得点を奪えず。岡山は柳貴博に代えて柳育崇を投入。名願対策に阿部をWBに押し出す形で守りを固めます。
仙台の森山監督もDAZNの試合後のコメントで
「ここで取られたくない、というところで追加点を取られてそこからは厳しい戦いになった」
と語っていた通り、岡山は効果的にカウンターを仙台に浴びせ、攻勢をそぎながら時間を進めることができました。


3.結びに

2-0での岡山の勝利。スコアの通り、特に前線の選手には仕事をさせなかったと言っていい試合だと思います。一方で終盤、サイドアタックのところで仙台に優位に進められた側面もありました。
この試合、後半エロンがターゲットとしてある程度機能していたところですが、仙台とすると同じ役割が期待できる梅木が次節からプレーできます。もし彼がプレーできてツインタワーを早い時間から敷かれていたら…と思うと岡山としては今のうちに対戦できて良かったと思った次第です。

もちろんこれはたらればです。岡山にも新たなプレーヤーが加わります。それに今節ゲームに絡めていなくとも、次節には間に合う選手もいるかもしれませんね。
現状で4位との6ポイントマッチを制することができるチーム状態であれば、今いない選手たちが試合に絡めたらどうなるかと、自分はどうしてもわくわくしてなりません。
ただ今は、離脱した選手が軽傷であること、願わくば栃木戦で元気な姿が見られることを期待しながら、栃木戦を楽しみにしたいと思います。


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