2024 J2 第26節 ファジアーノ岡山vsジェフ千葉 レビュー

新戦力の実力が垣間見れた山形戦から1週間。前半戦に苦い思いをした千葉相手にどれだけ新たな攻撃パターンを加えて攻め込めるのか、主導権を握ることができるのか、といった点に個人的には注目していたゲームです。

前半戦のフクアリでのゲーム、現地で見ていました。千葉の強い圧力の中で前半は自分たちの思った相手陣内に入っていくことができず失点、後半圧力をかけていくことには成功しましたがそれでも退場の影響もあり結果1-2で落とす悔しいゲームでした。

今度こそ自分たちの目指す相手陣内へ入っていくプレーをスタートから見せてほしいと思っていましたし、そしてそれがゲーム内の多くの時間帯で実現ができ、攻撃の連動性も見せられたゲームだった印象です。

1.スタメン

岡山は前節から4選手がスタメン変更。阿部・柳貴博・輪笠・田中が本山・末吉・藤田・木村に代わりました。
千葉にはクロスを割と上げてくるイメージもあり、高さで対抗するかと思いましたが、阿部を外して本山をスタメンにいれる徹底ぶりを見せました。
これは千葉のスピードあるアタッカー対策ではなかったかと思います。個人的には千葉の前節の対戦相手であった横浜FCがスピードのある面々がスタメンに名を連ね、千葉の攻撃を1得点に、それも防ぐのが難しいゴールのみに抑えられたところにアイデアがあったのかと思っています。

千葉は日高に代わり小川がスタメン。何かアクシデントがあったのでしょうか…?岡山も今回メンバー外になった阿部や田中雄大に怪我や体調不良がないことを祈るばかりです。

2.試合

千葉が特徴的なのはボール保持時にボランチの田口がアンカーのポジションを取り、中盤3枚でボールを回すことでしょうか。そこから前線から降りてきたCF小森に当てたり、スピードのあるSHへ展開しボールを運ばせ、そこからのクロスを狙ったり、という形がありそうだと。実際前半ラストプレーで田中和樹のクロスを横山が合わせる形がありました。

もう一つ、前線からのハイプレスも本来あるはずなのですが、この気候からかプレスは控えめだったように思います。その点、岡山がボールを持った際には優位に働きました。

話を千葉のボール保持に戻しますが、千葉の最終ラインでのボール保持の際、岡山の対応としてアンカーの田口をCFの一美が見ることで、最終ラインから田口を経由した展開は最小限に抑えることが出来ました。千葉のCBからSBを使うプレーも、2シャドーのどちらか、もしくはWBが見に行くことで、SBを経由するプレーも抑えることができました。
千葉としてはSHを使えればいいとばかりにCBからSHをめがけたロングボールも見せましたが、ここの精度も欠いたことで、千葉は前進する術を前半は失っていたように思います。裏を返すと岡山のプレスが効いていた証左でもあるかな、と思いました。

岡山が主導権を握れた要因はもう一つあります。岡山の攻撃の際、DFやWBから千葉DFラインの裏のスペースを突くプレーを多く見せたことです。例えば22分、嵯峨のロングボールに岩渕が抜け出すが千葉GKがタッチに逃れたシーン、あるいは26分に木村が右サイドに流れて受けようとし千葉DF佐々木がカットしたシーンなどでしょうか。

特に右サイドで顕著だったように思います。上記はこの試合シャドーで出場した木村のプレーエリアになりますが、右サイドでのボールタッチが増えていることがわかります。
岡山が早めのタイミングで千葉のDFが対処に困るボールをいれることで、たとえ千葉がボールを奪えたとしても自陣深くからスタートせざるを得ない状況を作れていました。ハーフタイムにDAZN中継内で紹介されたボール奪取位置が、千葉の場合ピッチを3等分したときの敵陣・中央・自陣のうち自陣側のエリアに集中していたことからも、千葉が自陣深くからのプレーにならざるを得なかったことがわかります(画像を載せられませんが)。

岡山のプレスと、DFの裏を狙ったボールへの対処。千葉は自陣を中心にしたプレーを余儀なくされ、一方
「プレスもしっかりかかっていたし、相手コートでプレーもできていた。」
という試合後の木山監督のコメント通り、岡山は相手陣内に押し込んでプレーできていた印象でした。

岡山は千葉を押し込む中で、前節私が気にしていたポケットを取る動きがそれなりに出来ていました。24分や54分のように竹内が侵入していったり、62分に嵯峨がスルーパスを受けてシュート性のグラウンダーのクロスを上げるシーンもありました。
クロスシーンもインスイングのボールやグラウンダーのものなど、多く見られていたように思います。

それでも得点に結びつかなかったのは、シュート本数が少なかったこと、もっと言えば千葉がクロスボールやシュートの間合いに対し、しっかりと体を投げ出すプレーをしてきたことにあったのかと思います。このあたりをかいくぐるような精度のパスやクロスで、ゴール前で決定機を作れるようになることが今後は求められる、今節はそのようなゲームだったように思います。

それでも、千葉の選手からボールを奪いきってショートカウンターを見せた47分のシーン、DFとの競り合いに勝ちセカンドボールを拾い運んだ56分のシーンと、ネットは揺らしたもののオフサイドになったシーンがありました。どちらも前線の選手の関係性でネットを揺らしたシーンになります。
スペースを作り、ボールを運ぶことさえできればゴールを奪える、その瞬間は近づいているように感じます。動き出しのタイミングの精度がもっと上がったうえで、精度の高いパス・クロスが前線以外の選手からも出てくるようになればシュート本数も決定機の数も、もっと増えてくるような印象を持ちました。


相手を押し込み、チャンスを作らせない岡山。

時間帯別の得失点率になりますが、この数値、特に千葉の失点率の通りに行けば、終盤は岡山に十分チャンスが有りそうと思えます。しかしながら、実際はラスト15分は千葉にかなり押し込まれる展開となりました。

理由は67分に千葉が見せた3枚替えにあります。この交代以降、千葉はそれまでの4バックから3バックに変更しました。
千葉の試合後監督コメントで守備面で岡山のWボランチを見るためにシステム変更したと触れていましたが、それ以上に攻撃の部分で大きな威力を発揮した印象です。
それはビルドアップの部分。それまで千葉の2CBと田口のところには前線の3人が数的同数の形で対応できていましたが、3バックになったことでプレスが噛み合わない形に。
結果千葉のWBがフリーでボールを持ちやすくなり、またボランチ(特に田口)がボールを前向きに持てるようになりました。

そして千葉のSHだった二人(田中和樹と途中投入の杉山)はこれまでよりも両サイド高い位置に張るようになったのもポイントでした。

サイドは違いますが、スタートからSHに入ったドゥドゥと、途中投入でWGに近い形でサイドに張った杉山のプレーエリア図になります。サイドに張ってボールを受けた位置が、ドゥドゥよりも杉山のほうが高いことがわかりますでしょうか。

千葉のボランチが前向きにボールを持てるようになったことにより、サイドの高い位置に張ったSHを走らせる、そのようなパスを警戒した岡山WBが下がらざるを得なくなりました。
岡山WBが下がったことで、千葉WBも時には絞り気味にポジションを取るなど、浮いたポジションを取れるようになりました。その結果千葉WBの対処のために岡山シャドーも下がらざるを得ない、という構図になりました。

岡山は5-4-1のようなシステムでブロックを構えざるを得なくなり、攻撃時に前線一人でチーム全体の押し上げをしないといけない、非常に厳しい展開になりました。

この展開を押し返すのであれば、リスクを承知でこちらも選手をワイドに張らせる、具体的には岡山のシャドーがサイドに流れながらドリブルで持ち運ぶような形、もしくはCFがサイドに流れて引き出す形をとることだったと思います。
しかしながら、この時間帯の2シャドー(吉尾・神谷)はサイドに張って持ち運ぶプレーを強みとした選手ではなく(ATにサイドで神谷がファウルをもらったシーンもありましたが)、また展開的に守勢に回ることでCF(太田)もサイドに流れるよりも中央で張っていてほしい展開になってしまいました。このあたりは岡山としては予想外の展開になった、とも言えるし、千葉が一手上回ったとも言えるところです。
特に千葉は前節3バックにしてからの2失点だったこともあり、岡山としては積極的な意図で千葉が3バックにすることはあまり想定できないのではないか、と素人ながらに思います。

その中で少なくとも出た選手の中ではやれるだけはやったのではないかと思います。
例えば85分。太田の足元でのポストプレーからサイドに流れた吉尾に。吉尾から前線に走り込んだ柳貴博へのクロス、というシーン。
ここは柳貴博についていた千葉WB小川がクリアしましたが、ポジションを入れ替えながら前線に高さも出しつつ、押し込まれている中でも少しでも千葉の守備陣を混乱させようという意図のあるプレーだったと思います。

3.結びに

全体としては優位に進めながらも0-0のドロー。3戦連続のドローで上位3チームとの勝点差を縮めることはできず、7位いわきと勝ち点3差とPO圏外との差が詰まってきた状況になりました。

直近の成績、特にこの2戦のドローの状況で、上を向き続けるのは正直厳しくなってきたと感じてはいます。ただ、その前提で考えると、今回の千葉戦の結果自体はそう悪いものでもなかったように思います。

PO圏内から勝ち点5差(6差でした失礼しました)の千葉からすると、PO圏内にいる勝ち点差6の岡山との対戦はいわば6ポイントマッチと位置づけられる試合でした。岡山としては上との差を縮めるためにも勝ち点3が求められたと同時に、千葉には絶対に勝ち点3を与えられないゲームでもありました。
そうなると、最後15分の間押し込まれこそしましたが、その中でもエリア内でフリーでシュートを打たせない守備をし千葉の勝ち点3を遠のかせたこと、リスクを犯した攻めを自重し勝ち点1を着実に得たことは決して悪いことではないと考えられます。
そして直接対決であった千葉相手に優位にゲームを進められたことは非常に良かった点でもあります。

個人的には勝ち点差云々よりも、サッカーとしてできることを一つずつ積み上げていく、その中でゲームを戦い勝ち点3を積み上げていく、という1つ1つの積み上げが大事だと感じてはいますが。
勝ち点差を考えるならこういう捉え方もできますよね、ということで結びにできればと思います。


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