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恋のツキ

彼氏との結婚目前に超好みの男子高校生が現れて恋してしまう、ドラマ化もされた漫画「恋のツキ」。

この手の話は感情が揺さぶられそうで、スルーしていたんだけど昨日つい読み始めてしまった。

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読みながら思い出した男の子がいる。

私が30代後半頃かな。仕事帰りに毎回寄るコンビニがあった。

そこに背が高くて髪の毛がサラサラで可愛い顔をした男の子がバイトしていた。

制服のジャケットを脱いだ白いシャツにエプロン姿だったからすぐ高校生だとわかった。

私の仕事が終わるのは夕方。学校帰りのその子がバイトに入る時間とちょうど重なったのだ。

わざわざその子に会いに寄っていた訳ではないが、可愛い顔のアイドルを鑑賞するような気持ちだったように思う。

何度か通うと顔は覚えてくれたようで、彼はお気に入りのカフェオレを選ぶ私の近くに来て、時々何気なく商品の陳列を直したりしていた。

ある日のレジで、ふと彼のエプロンに付いているネームプレートが目に入った。確かフルネームが書いてあったけど下の名前が当て字なのか変わった感じで読めなくて、思わず

〝名前、なんて読むの?″

と聞いてしまった。

手元の商品を見ていた彼は恥ずかしそうに顔を上げて私を見たけど名前を教えてくれた。

〝すごくいい名前だね″

お世辞みたいなありきたりな事を言ってしまったけど、本当に素敵な名前だったんだ。

「ありがとうございます。僕も名前聞いてもいいですか?」

〝あおいだよ。″

「あおいさん」

〝高校生?″

「はい、18歳で3年生です。」


そんな風に話してから、コンビニに行くと彼も私を見つけると話しかけてくれるようになった。

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雑誌を手に取って眺めていたら私の左の肩のあたりから覗き込んで

「あおいさん、こんにちは!」

なんて言ってきたり、なかなか大人をドキドキさせるのが上手な子だった。

「僕もうすぐここ辞めるんです。大学決まってるから遊ぶお金稼ぎたいし、もう少し時給の良い、あっち側にあるコンビニで働こうと思って」

そう言われて、どのコンビニか教えてくれたけど、そっちに行ってみたりしたらさすがに私、ただの気持ち悪いおばさんだよなぁと思って聞き流すだけにしたんだっけ。

その頃季節は秋。高校生は文化祭シーズンだ。

いつものようにレジで話していたら、唐突に

「文化祭来ますか?」

と、あの子は言った。

私はなんとなく恥ずかしくなってしまって

〝いっても良いの?″

冗談ぽく返した。

「良いですよ!」

恋のツキの中でもアラサーの主人公が文化祭に誘われるシーンがあったけど、読んでいてこの会話を懐かしく思い出した。

話したのは確かそれが最後だった気がする。

私がコンビニに行かなくなったのか、

彼が辞めて見かけなくなったのかはもう覚えていない。

あれから数年経ち、彼は順調に行っていれば大学を卒業し、今頃社会人になっているんだろうな。

昨夜遅くに読み始めた漫画で、ほんの少しの時間を共有した子を思い出すなんて、人生って面白いな、、と思ったという備忘録記事。







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