難攻不落な彼
10年程前、職場にお客さんとしてよく来ていた
6歳年下の人。
関西弁で錦戸亮によく似た人だった。
まだLINEもそんなに普及していなかった当時
私はその人に
〝よかったら連絡下さい″
と、メールアドレスと携帯番号を書いたメモを渡した。
彼はすぐメールをくれて、
その日の夜電話でたくさん話をした。
何度か一人暮らしの彼の家に遊びに行って、
彼女と少し前に別れたと聞いた。
彼はメールよりも電話をしてくる人で
スマホの着信に、彼のフルネームが表示されるのを見るとドキドキした事をよく覚えている。
しばらくしてLINEのアプリをお互いにダウンロードしていたのに気づいて、やり取りをした事もあったけど、
いつのまにかあまり返事が返ってこなくなった。
だけど私は会いたくて何度もLINEを送った。
その度既読にはなるけれど返事が来る事はなくて、
ある時、
「結婚する。もう連絡せんといて」
やっと来た返信はとても寂しいものだった。
何年か経ってLINEのアイコンがお子さんの写真に変わって
パパになったんだなぁ思ったけど
もう当時のような気持ちに戻る事はなかった。
彼は10年間、たった数回会っただけの
しつこく連絡していた私を
ブロックする事もなくLINEに残している。
ずっと変わる事なく、もう大きくなったであろうお子さんが小さい時のままのアイコンを見ていたら、ふと悪戯心が湧き、
〝LINEの友達を整理していたらいらっしゃったので、、どこかでお会いしましたか?突然すみません″
もう10年経ったら時効だろう。
全部忘れたフリをして送ってみた。
すぐに既読にはなったけど返信はない。
そりゃそうか、、さすがに白々しかったかな笑
そう思った。
それから10日ほど経った先日の深夜、
Netflixを見ていたら着信があった。
LINEを送った彼からの着信。
驚き過ぎて心臓がバクバクした。
え、なに?なんで?なんなのこんな時間に?
怖いんだけど?!
(私のLINEの方がよっぽど怖いが)
もちろん出なかった。
私の中ではもう満足したからだ。
「私が好きになった男は疎遠になったとしても必ず自分から連絡してくる」
難攻不落な彼だけは例外なのかと思ったけど
やっぱりマイルールは100%だったと気が済んだ。笑
それに、インスタで見た彼は
普通にちゃんとおじさんになっていて
もうあの頃の彼ではなかったから。
イタズラしてごめんなさいね。
一瞬人生が交わったあなたへ。
ご家族を大切に、いつまでも幸せでいて下さい。