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ディスレクシアとUDフォントのお話

みなさんは「ディスレクシア」という疾患をご存じですか?

国立成育医療研究センターの説明によると、

ディスレクシアは、1896年に英国のMorgan先生が最初に報告した文字の読み書きに限定した困難さをもつ疾患です。知的能力の低さや勉強不足が原因ではなく、脳機能の発達に問題があるとされています。

https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/007.html

と定義されていて、知能や視覚・聴覚に問題はないものの読み書きの能力に著しい困難を持つ症状のこと。

日本語では「失読症」と訳され、発達障害の学習障害に位置付けられている。

ディスレクシアはよく「文字が読めない」とか「読み書きができない」と表現されることがあるけど、実はそうではなくて、よく間違えたり間違えやすいと表現するのが正しい。

原因は、脳の音と文字を結び付ける能力(音韻処理と呼ばれる)の部分の機能障害といわれていて、聴覚認知や視覚認知の問題などによって、「読みづらい」と「書きづらい」という症状にも個人差がある。

症状の特徴

ディスレクシアは「読み書きが困難な症状」とひとくくりにされているけど、実際は聴覚的な部分か視覚的な部分かによってその症状は分かれる。

聴覚的な部分では、書いてある文字を読む場合、一般的にはその文字の発音がすぐに思い浮かぶ。しかしディスレクシアの方たちはそこがスムーズに機能せず、文字を見てその音を認識するのに時間がかかる。

視覚的な部分では整然と書かれている文字がバラバラに見えたり、一部の文字が浮かび上がったり文字が隠されて見えたりする。
また、文字だけでなく数字の認識に問題を抱えるという方もいる。

ディスレクシアは欧米では人口の10%~15%、日本でも5~8%ほどいるといわれている。
ただ、個人的にはまだ認知度が低いだけで、他国よりも多くの種類の文字が存在する日本では、困難を強いられている方は、実際にはもっといるんじゃないかと思っている。

フォントを変えるだけで「読めない」から「読める!」に

一昔前の(今もそうかもしれないけど)学校から配られるプリントといえば、

藁半紙+明朝体の文字

というのが定番だった。
しかし、この組み合わせは実はディスレクシアの方々にとって一番読みづらい。

明朝体は細い書体のため、ディスレクシアでなくても視覚過敏の方には細い部分を認識しづらかったり刺激が強い。

ビジネスマナーのひとつとして、プレゼン資料でもゴシック体を使うことがセオリーとされているけど、実際にゴシック体のほうが多くの人にとって読みやすい。
しかしゴシック体さえ使えばいいいうことではなく、文字が太すぎたり文字間が詰まりすぎていると、これもまた読みづらい。

近年、誰もが読みやすい文字ということで「UDフォント」というものが開発されている。
UDは「ユニバーサルデザイン」を指し、読みやすさはもちろん、遠くからでも見やすく読み間違いがないように、可読性や視認性、判読性が高くなるようにデザインされ、もちろんディスレクシアの方にも読みやすいフォントとなっている。

たかがフォントと思われるかもしれないけど、

ディスレクシアの人は、紙やフォントを変えるだけで格段と読みやすくなる。

大げさかもしれないけど「フォントを換える」たったこれだけのことで、バリアをひとつ取り除くことができる。

多くの人の目に付く書類や掲示物を作成するときは、ぜひUDフォントを積極的に使ってほしいと思う。

最後に余談だけど、以前とある記事の作成を依頼されて、UDフォントにして納品したのに、(あろうことか明朝体に)フォントが置き換えられて公開される、ということがあった。

先方に確認すると「デザインの問題で···」とのことだったが、作り手としては「せめてゴシック体にしてくださいよぉぉぉ···」という気持ちになったのは言うまでもない。

今後も記事を増やしていきますので、ご期待ください。