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シナリオ:ロボ研休みの夏休み第一話

■登校拒否男
光の部屋
鎌倉の高台の上の古い家。
窓の外は、海
ロボット好きそうな部屋。
基盤や、パソコン、作りかけのロボットが散乱
その間に漫画がたくさん。
そこに3人の中学生
光と、颯太と、美桜がいる。
颯太と、美桜は制服。
光はパソコンに向かっている。
美桜はスマホを見ている。
颯太が椅子に座って光のパソコンを覗き込む。

颯太 なあ、学校へ行こうやあ?
光 ううん、ううん
登校せんでも良くなったのになんで行く
颯太 気難しいなあ

美桜、スマホから顔を上げないまま

美桜 こんなロケーションの部屋に住んでて、
チャットボット育てるのに命を燃やす男
光 教師にはねえ、
ちゃんと今まで通りZoom繋いでくれればいいって言ってよ。
美桜 ま、いるけどね。光ちゃんの他に何人か
光 俺はね、忙しいの。
美桜 お母さん心配してたわよ。
部活が無くなったせいかって

光、振り向いて。
光 変わんないよ。
ロボ研俺たち3人しかいなくて、
あんたたち毎日俺の部屋くるじゃない。
俺ん家ほぼイコール部室じゃない。
美桜 えー。でも部活コロナでないし。
顧問もいないしさ。
光 木下?木下いるとですねえ、ロボット作らされるからね。
時代はチャットですよ。
おれのチャットボットちゃんを育てるですよ。
颯太 俺は作りたいよ、ロボット。
そんで、横浜のガンダムファクトリーのガンダム、ジャックしたい。
それで鎌倉の海に着地させたい。
光 うん、動く前提?
あれ、飛ぶ前に一歩しか歩かないからね。
美桜 夜、動いてるらしいよ。
何ミリかずつ。
光 怖い話?ねえ、呪いの日本人形みたいな話?
ロボットの話だから。
颯太 開会式で見たかったよな〜。
俺が動かしたかったよ、なんなら。
美桜 ねえ、いいじゃんこんな話すんなら、学校来てすればさ。
光 美桜、甘いな。
颯太 そうだ、甘い、甘い。turtlbot(タートルボット)家ん中で走行できるという
お嬢様は違う。

美桜スマホから顔をあげる。

美桜 ちょっと部屋が細長いだけじゃないの!
光 タワマン!イッツア、タワマン、君、自慢、俺たち、不満。ラップか。
美桜 うざっ!
光 違うんだ美桜、マジで。
俺、多分、世界を救う。

美桜スマホに戻る。
颯太、自分のノートパソコンを開き始める。

美桜 そだねー。
颯太 そだねー。
光 颯太も聞けよ。
俺、神の啓示を受けたんだ。
美桜 そだねー。
颯太 そだねー。
光 いやいや、これはほんと!
今から一週間前、寝てたらいきなり、
ウォンって音がして。
美桜 はあ。
光 そんつぎ、映像が。
なんか、津波の映像なの。
なんか、それが近いぞ、みたいな。
美桜 なにそれ。
颯太 震災の動画とか見た?
光 いやいやいや。
これがさ、この場所で海を見てると、
なんか胸騒ぎがして、ここ動いたら皆に危険を
知らせられないっていう。
颯太 そんな理由の登校拒否??
光 いやほんと、マジですから。
実は今、チャットボットちゃん育ても片手間ですから。
ひたすら海を監視してるですねえ。
美桜 なんかまだエッチな動画でも見ててくれたほうがいいわ。
颯太 お母さん可哀相だな。
光 ええ!ちょっと?友達?
信じるという選択肢は?
颯太 (棒読み)うん、わ、わかったー。
美桜 そだねー。

颯太 そだねー。
光 おい、ちょ待て!
何かキャッチしてもお前らにゼッテー
教えないからな!

美桜、颯太、もう返事すらしない。

光 マジ頭くるわ。。

CUT

■颯太んちwithあやめ
蝉の鳴き声がする。
鎌倉の古い民家の風景
一人の私服の女の子が颯太の家の前にいる。
颯太が帰ってくる。

あやめ 颯太、これ
颯太 ありがとう。ごめんな、いつも。
あやめ いいの。ほとんどお母さんが作ってて、
あたしはちょっと手伝ってるだけ。
…もう何年になる?
颯太 4年。小5の時だから。
あやめ そうかあ。でも、颯太が元気になって良かったよ、本当。
颯太 あやめのお母さん、遅くなると心配するから
あやめ いいよ、送るとか。
洗濯物は?
颯太 大丈夫。
あやめ 困ってたら、言ってね
颯太 ありがとう。

それでもなんとなく送っていく颯太。
歩きながら

あやめ 颯太、受験どうするの?
颯太 うん?
あやめ あのね、お母さんが、もし颯太が大変だったら
受験の間だけうちに来ればっていうの。
颯太 ありがとう、な。
あやめ あ、そうか、ごめん。
なんかあったら、言ってね。
颯太 うん。
ありがとう。

あやめ、颯太の後ろ姿を見送る
CUT

■光の母
光の部屋
光の母親が仁王立ち
光はパソコンに向かっている

光の母 学校に行け、とは言わない。
し、
母ちゃんは、お前のその腕があれば食っていけるんだろうとは、思う。
光 だろう?
光の母 でも高校には行きなさいよ。
光 …母ちゃんさ
光の母 ん?
光 父ちゃんとはどうやって知り合ったの?
光の母 何よ。
光 普通に知り合ったの?
光の母 急に何よ。友達の紹介よ。
光 それ、合コンで知り合った結婚相手を親に説明するときの常套句だろ。
子供に何言ってんだよ。
本当はオンラインゲームだろ。

光の母 (ため息)そうだよ。あんたの父ちゃん、べらぼうに強かったんだよ。
光 それでチャットから交際が始まって、結婚したのはいいけれど、だ。
光の母 普通、浮気って徐々にバレるもんだけど、
ドア開けたら実物が立ってたからね。びっくりしたわ。
ハントされたのはモンスターと私だけじゃなかったってことよ。
光 くだらないなあ、大人は。
俺はそんな大人にならない。

高校は行きたくなったら行く。
俺は超能力者でもあるから、高校は必要ない気がするけど。
それで結婚したくなったら、オンラインでゲームする。そこは一緒。
でもそこで浮気しない、性格がいい、俺の嫁をゲットする。
光の母 ほんと、わかりやすく中二病だね、あんたは。
卒業したら、ロボ研のあの二人とは一緒じゃないんだよ。
まあ、お前が高校言ったとしても、違う高校だろうし。
秀才だからね、二人とも。
お前はすごいと母ちゃんも思ってる。
でもそれが内申的なスコアに繋がらなくて、実に残念です。
卒業してから、この部屋に一人で引き込もられたらと思うとね。
光 そんなことより、他に話あるんじゃないの?
光の母 は?
光 バイトの。
光の母 何言ってるの?
光 母ちゃんのカレー屋行くとさ、いつもさ、カレーが辛いの。
あのバイト君の出すカレーが辛いの
光の母 …柄本君?
光 そう。俺一回お店行った時、バイト君と僕だけだったの。
お母さんいる?って言ったら一瞬固まったの。
そんで、カレーの辛さ聞かれて、俺辛い方が好きって言ったの。
そしたらずっと覚えてて、それからずっとカレーが辛いの。

こないだ行って、カレーの辛さまた聞かれたから、
まだ辛さが足りないって言ったら、どんどん辛くしてきて、
食べてる間ずっと見てるの。
だからそっち向いたら、「あ、美味しいですか?」とか言うから、
好きだろ、母ちゃんの事って言っちゃった。
光の母 光!
光 そしたら奥引っ込んじゃって、しばらくしたらおもむろに出てきて
お母さんには何も言うなって言うんだよね。
光の母 はあ。
光 なんか言われてるんでしょ。
光の母 柄本君は、優秀なシェフです。
光 いいじゃん、再婚しちゃいなよ。
光の母 今はあんたの話だって言ってんでしょ。
光 俺の話はくるっと回って、母ちゃんの話になるんです。
母ちゃんがずっと一人だと、俺どっか海外行きたいとか思っても行けないでしょ。
光の母 行きたいの、海外?
光 ううん。でも。
俺はあのバイト君嫌いだけど、ね。
光の母 光、あんたの考える事じゃないし、母さんにそんな気は…
光 じゃ、考えてあげなよ。そんな聞き分けの悪い子供に育ってないから。
あいつ嫌いだけど。
光の母 は。
じゃああんたが高校行ったらそうするわよ。
光 ずるいなあ、大人は。
光の母 バカなこと言ってないで。
ここの志望校の欄、埋めときなさいよ。

光の母、プリントを渡して出ていく
光振り向いてプリントを握る。

CUT

■美桜の家

場面は美桜の家の朝
リビングの机に父親と弟。
パソコンを置いて、ヘッドセットをつけている。
二人とも上はスーツ、制服で、下はパジャマ
母親はちゃんとスーツを着ている。
台所から自分のコーヒーを出すところ。
そこにノートパソコンを持った美桜。

美桜 おはよう。
美桜の母 おはよう美桜ちゃん
今日のご予定は?
美桜 午前中は、家で授業。午後から学校。
美桜の母 あらそう。お母さんも、お父さんも午前中zoom会議で、
義臣もオンラインだって。
美桜 えーーー!?またあ!
またつながんなくなるじゃーん。
美桜の母 しょうがないでしょ。
重なるとき重なるんだから。
義臣の、ポケットwifiにするから。
美桜 えー!
ノートパソコンを開いて操作
美桜 やっぱりかくかくいうじゃん!!
ちょっと誰か抜けてドトール行ってよ〜。
美桜の母 会議終わったら、そうするから、はい、我慢して。
美桜 えー、授業終わっちゃうじゃん。

美桜の父、紙に「あと30分黙って!」と書いて見せてくる。

美桜 ああ、もう、やる気なーい。
美桜の弟 あ、ねえちゃん、ポケットwifiつないだ?
ねえ、つないだ??
やめろよお。
ねえお母さん、ねえちゃんがあ。
美桜 ああ、うっさい!
うっさい、うっさい!

美桜の父 美桜、お願いだから静かにね!
美桜 ああ!!

スマホを手にする美桜。
Discordの画面がスクリーンに映し出される。
美桜 ありえない。繋がらない。
友達① 笑える
友達② 草生える
友達② うち両親とも出勤。結局行かないと回んないとかなんとかブツブツ言ってる。
友達① 美桜んとこは両親、ちゃんとした会社だからじゃん。

美桜 あーあ。

美桜、立ち上がって客席に向かって話し始める。

美桜 父母とも大手メーカー勤務で、
産まれたときから大船のタワマンで、
小さい時は良く家にお父さんやお母さんのお友達が
子連れで来て、ベランダでバーベキューやったり、
花火見てたりした。

私たちも大きくなって、そういうのが減って、 
その人達も今、子会社に出向とかで、
ますます来なくなった。

それでも時々家族だけで、ベランダでタコ焼きパーティーやったりしてる。
ウチは、仲良し家族なんだとは思う

でもわたしこの家族が将来、シュルシュルって
萎んじゃうみたいな気がしてて。

シュルシュルという音
暗転

スクリーンにLINEの画像

光から

「来た!ウォン来た!
ちょっとお前ら、うち集合」

CUT

■最初のウォン

学校。
颯太のところに行く美桜。
光のLINEを見ながら、どうする?行く?
面倒臭いなあとかやってる。
その様子を遠くからじっと見ているあやめ。
しょうがない、行ってやるか、と言って、
教室を出ていく二人。
目で追うあやめ。
ちょっと振り向く美桜。

光の部屋

颯太 早退して来てやったぜ!
美桜 ねえ、どこのニュースにもなってないよ。
光 黙って、なんか俺にまだこう、メッセージ来るかも知らないし。
颯太 結局、日常ってことだな。
美桜 何もないね。何も、ない。
ゲームやろ、ゲーム。
颯太 俺気になるサイト見つけた。

颯太、パソコンをカタカタ言わせる。

光 あいつサイトの名前じゃなくてURLで覚えてんだ。
とんだ変態だな

スクリーンに、
ガンダムファクトリーのガンダムシミュレータの動画
美桜のスマホからゲーム音楽

光 お前ら静かにしろよ。
気が散るのよー。
ゲームの音楽が絶頂になって場面転換

CUT

■あやめと美桜
光の部屋からの帰り道、
美桜はあやめの姿を見つける。
あやめに駆け寄る美桜。後ろから肩を掴む。

美桜 ねえ、何?
あやめ え、何ですか?
美桜 何って、磯村さん、いっつもこっち見てるでしょう?

あやめ、下を向く。泣きそう。

美桜 違う?
あやめ 違うわよ。
美桜 そうか、そうね。私じゃ無くて、颯太、見てるんでしょ。
私、颯太と付き合ってる訳じゃないからね。
あやめ 知ってるし。
わ、私だって別に、好きとかじゃ無くて、幼馴染なだけよ。

美桜、あやめのカバンをちょっとのぞいて、本を引っ張り出す。

美桜 何これ?

あやめ ちょっと!

プログラミングの本(Mookがわかりやすいかも)
美桜、ペラペラめくりながら

美桜 磯村さん、そんな趣味あったの?
あやめ 榊原さんはさ、頭いいからさ、そんな本なくてもできちゃうと思うけど、
私はわかんないから。
美桜 私だって別に、関心あるわけでもないよ。
颯太と違ってね。
ねえ、日本て先ないでしょう?
あやめ は?
美桜 物心がついた時から絶望しかないじゃん、日本。
生まれる前は世界一だったとか、ちょっと信じられん。
うちの両親だってなんか浮かれて、
いい時代にここまで引っ越して来ちゃったけど、
あの人たちもこの先どうなるかわかんないよ。
お父さんの会議の話も、聞こえてくる限り厳しいし、もしかしてお父さんも出向かもってお母さん話してたの聞いちゃったし。

…ごめんねなんかペラペラ。友達にも言えないこと言っちゃった。
あはは。

あやめ居心地の悪そうに話を聞いている。

美桜 お父さんに教わって、ちょっとプログラミング得意だなって思って。
弟もしっかりしてないタイプだし、親も安心だろうなって。
あやめ 榊原さんってやっぱり、しっかりしてるよ。偉いよ。
美桜 颯太だってああ見えてしっかりしてるよ。
光はあれだけど。
颯太は、いいエンジニアになんじゃない?

あやめ 榊原さんもそう思うんだ。
うん、そう。颯太はきっと、夢を叶えると思う。
世界でも有名なプログラマーになると思う。
私も、お、幼馴染として、出来ることは手伝いたいってそう思っているだけ。
(なんとなく我に帰って)
えと、あの、じゃあね。

パタパタと去る

美桜 け、健気・・・・・・。

スクリーンにWebニュースが映る。
そこには大きな見出し。
「インドネシアで大津波」

CUT

■ずっとこのままで

颯太 マージかー
光 マジよ、あんた達俺のことバカにしすぎ。
颯太 すげーよ。おい、予言ビジネスはじめようぜ!
美桜 そんな漫画あったね
でもたったの一回じゃん。
たくさん当てないとさあ
颯太 その間ずっと、こうしてんの?
おいおい、お前の14歳の青春はどうなっちゃうのよ。
山行こうぜ
川行こうぜ
光 コロナだからどうせみんなこうなんだよ。
俺は今こうやって有効活用している。
美桜 あーあ。文化祭あったらな
颯太 ロボ研恒例、AI恋占いとかな

美桜何か思い出したように、颯太を見る。

光 ああ、コロナの間、俺の細胞分裂止まらないかな。
  なかったことに!この二年、なかったことに!
颯太 美桜、何だよ。
美桜 ううん、何でもない。
あ、そのペットボトル私の。

飲み干す颯太。
かっこいい喉仏。
美桜、目をそらして、後ろを向く。

美桜 自分の、買いなよ。
颯太 なんだよ、ケチだな。タワマン美桜のくせに。
あ、じゃがりこ食う?
美桜 いらない!

鎌倉17時の鐘が鳴る
CUT

■ウォン
学校。
教師が授業を進めている。
スクリーンに美桜のLINEが映し出される

光 来た!ウォン!
  今後のはやべーよ。
  早く来い!

美桜抜け出す。颯太も抜け出す。
それをじっと見ているあやめ。

いつもの光の部屋

光 なにこれすげー強い
絶対なんかが起きるんだよ
美桜 でもまた外国かも知れないじゃん
どこだかわかんないとさー
光 ああ来てる来てるー
颯太 なんか、お前、不憫だな
光 俺可愛そう?しょうがないよ。神に選ばれし男なのよ、きっと。
颯太 もっとこう、思春期らしいことで悶絶しないの?好きな女子とかさ。
美桜 (思わず)颯太、あんた、あやめと付き合っちゃえば?
颯太 何だよ、それ。
光 え?何一人だけ。なに?さっきの、ふり?このコロナ禍において。
颯太 ちげえよ。
美桜 なんかさあ、
颯太 そんなんじゃないよ
美桜 面倒だから、付き合っちゃいなよ。
颯太 うるせえな。
光 あ、くるくる何これ、すごい。すごい。
颯太 お前関係ないだろ。
美桜 私が面倒なんだよ。
関係ないのに絡まれて
じゃあ振っちゃいなよ
颯太 なんかあやめはお前の方が絡んできたって
美桜 なんかじっと見られてたから、聞いちゃっただけだよ。
颯太 あいつとは幼馴染だからさ。変な噂立てんなよな。
美桜 は?あんたにはそう言うだろうけど、
絶対、向こうはそう思ってないよ。
本心なんか言うわけないじゃん、好きな人に。
面倒臭いな。

睨み合う。

光 お前らマジでいい加減に。
すごいすごい近い

スマホが鳴る、と同時に地鳴りがする。

美桜 地震…?
颯太 結構大きい。

■ばあちゃんがいない
光 え?え?待って待って。
美桜 ・・家帰る。
光 よせよ、ここ、ここにいれば大丈夫なように
わざわざ高いとこに建ててあるんだよ。
今外出るなよ。
颯太 ばあちゃんがいない
美桜 え? 

光、颯太からスマホ取り上げる。
GPSが光ってる

光 何これ。ばあちゃんにGPSつけてるの?
美桜 え?いつから?
光 ちょっと待て、大変だ、
このGPSって…!これ、海の中だ!
颯太 ばあちゃん!
光 颯太!

出ていく颯太。追いかける美桜。

光 待てよ颯太!
おい待て!美桜も!

CUT

波の音
場所は砂浜
3人が走り込む
警官が2人で作業中

アナウンス
この地震による津波の心配はございません
この地震による津波の心配はございません

颯太 婆ちゃーん
婆ちゃーん
美桜 おばあちゃーん
警官 君たち何してるんだ
颯太 ばあちゃんが、ばあちゃんが。
警官 危ないから家に帰りなさい。
津波の心配は無いけど、万が一ってことがあるだろう?
颯太 ばあちゃんが、海の中にいます。
警官 なんだって!

警察官が連絡を取っている

美桜 私、お母さん呼んでくる。
光 俺も。
美桜 (と、立ち止まる)でも、GPSが正しくって、あんな沖まで流されてたら、
助からないよね。
光 ああ。今からいくら海上自衛隊とか頑張ったとしても、助からないよな。
美桜 そうだけど。
…待って。あんたん家寄らして。
光 なんだって!?

CUT

■ガンダムだ!
光の部屋
美桜、颯太のガンダムシミュレーターを開く

美桜 光、あんた、ハッキングできる?
光 何言ってんの?

美桜、光を揺さぶる

美桜 あんたこの部屋に一日いて何やってたのよ。
できるでしょ、それくらい。
光 無茶なこと言うなよ、今、それどころじゃ。
美桜 それどころよ!颯太のおばあちゃん助けるのよ!
光 はああ?どうやって!
美桜 いいから、調べてよ、すぐに!
光 無茶言うなよ。
美桜 私、動かし方覚える。颯太の見ててなんとなくわかるけど。
光 一歩しか動かないって言ってんだろ。
美桜 動かしてないだけかも知れないじゃん。
その間にお婆ちゃん、もっと遠くまでに流されちゃうよ。
そしたら救えるの、これしかないって。
光 ああ、もう、なんなんだ。
あ、やべえ。
美桜 どうした?
光 頭の中アドレス降ってきた。
美桜 来た、超能力者。
光 うおお、なんだこれ、IDとパスワードが透けて見える。
美桜 一生食うのには困んないな、光

コマンドを叩く光。

光 うおお、本当に到達しました。
やった!!
美桜 どいて!
光 おお??

コマンドを叩く美桜。

光 ねえ、歩いているの?
美桜 わかんない。モニター無いし。
光 モニターたってな。。後、歩いて来たらどんだけ時間かかるのよ。
あそこから鎌倉まで。
美桜 そう、そうよね。

颯太が部屋に入ってくる。

美桜 颯太!
動いたは動いたんだけど。
颯太 どいて。

颯太、コマンドを打つ

颯太 これで、良し。
美桜 颯太、何やったの?
颯太 あとは祈るのみ

颯太、祈り始める。

光 な、何?
颯太 お前らも祈れ。
光 は、はい。

3人で祈る。
しばらくすると外でゴーッっと言う音がする。

美桜 何、この音

3人窓に駆け寄る
と、
横浜のガンダムファクトリーのガンダムが空を飛んでいる。

美桜 うっそ。。
光 まじか。。
颯太 ガンダムに、ばあちやんのGPSの場所まで飛ぶようにコマンド打った。
光 お前、天才。

ガンダム、海に向かう。
と、海に着陸する。
手を海に差し出して、何か救う。

光 な、なんか救った!
美桜 望遠鏡、望遠鏡!

望遠鏡を覗く颯太。
スクリーン
老婆がロボの手の中に。

光 ば、ばあちゃん!!!!

CUT

■助かったばあちゃん
海岸
波の音
周りに警官と、あやめとあやめの母

あやめ 颯太くん!
あやめの母 颯太ちゃん、心配した通りになって!
あやめ 家に行ったら、颯太くん居なくて、
おばあちゃんも。
そしたらが海の方がざわざわしてて、警察の人に聞いたら、
おばあちゃんが流されたって。
颯太 ばあちゃんは??
座っている颯太のばあちゃん
颯太 ばあちゃん!
颯太のばあちゃんが振り向く
颯太の祖母 (ぼんやりと)颯太かい?
良かった。みなさんお揃いで、今日はまたどうしたんですか?
颯太 ばあちゃん。。。

光と美桜、顔を見合わせる。

CUT

■颯太の家
颯太の家 汚い。
颯太と光と美桜がいる。

颯太 婆ちゃん、一回一人で家に帰れなくなってから
外に出るのが怖くなったみたいだから
外に出るって思わなかった。
地震が来て、俺が居なかったから、探しに出たらしい。
あやめん家、うちの両親が死んだ時からお世話になっててさ、
婆ちゃんがこうなったら、二人暮らしはもう無理だって。
行政に頼れって。
でもさ、2人で暮らして来た家族だったからさ。
光 言ってくれよ。
颯太 やだよ。そんなん。
そんなん考えなくていいとこだったじゃん、お前の部屋。
光 ごめん

泣き出す颯太
近寄ろうとして近寄れない美桜

光のモノローグ
同級生だと思ってたのに颯太は一人で色んなこと抱え込んでた

俺は子供だったから、本当に何にも気づかなかった。
俺は子供で、ずっとこのままでいられると思ってた。

いや、俺たちは、だったと信じてる

ゆっくり暗転
CUT

■ロボ研休みの夏休みの終わり
颯太の家からの帰り道
光は美桜と歩いている。

光のモノローグの続き
僕たちは泣いても良かった
まだ14歳でぎり子供の王国にいれた
でも泣き止んだら子供に戻る事はきっとない

暗転
CUT

光のモノローグの続き
あの日から僕達はなんとなく疎遠になった
    
   光の部屋

颯太だけは、時々思い出したように部屋にやってきた
颯太のばあちゃんは、市の施設に預けられた。
僕はなるべく、家の話題をふらず、ただただゲームばかりしてた。
僕はお腹に力を入れて、翔太、必ず進学しろよと、念を送っていた。

そして、本当に、大人になんないと何にも守れないんだな、と思った。

CUT

■エピローグ
アジアの街の喧騒の音

光のモノローグの続き
ロボ研休みの夏休みから数年たっただろうか。
それから俺は、母の仕事の都合で京都に行った。
バイトの柄本君が絡んだ事情もあったようだ。
京都の高校を出て、専門学校で本格的にプログラミングを学んだ。

アジアで働く光。
同僚はタイ人

光のモノローグの続き
日本は昔よりますます貧しくて、大体高校を出ると海外の学校に行ってそこに移住するケースがほとんどになった。
プログラマーは重宝され、俺も外国で就職した。
一回大津波ときに、ウォンがなって、
僕が避難を促し、日本から来たヒーローとして一躍時の人になった。

スクリーン
ニュースで一躍ヒーローになった画像

僕は外貨を随分稼いだ後に
福島の原発石館作業のロボットのプログラミングをした。
貧しくなった日本の安定した就職先は、原発の後処理しかないと言われていたものだが、それもようやく一段落する。

ロボ研の他の二人もプログラマーになった。

スクリーン
颯太のかっこいい海外の映像

颯太は高校進学してまもなく奇跡的にばあちゃんがお亡くなりになり、
少しの遺産を持ってインドに渡ってそこで勉強した。

スクリーン
包丁を手にしたインド人女性を制する颯太の映像

なんだかやつはモテの遺伝子を持つ男で、
なんどか刺されそうになったらしく
未だに独身である。

美桜はあの後、両親が揃ってリストラに会い、
タワマンも売って、父親の実家がある尾道に行った
美桜は高校を出てすぐ就職し、弟を大学に行かせた。

美桜はそれからなんと県議会議員を経て防衛庁のサイバー部隊となり、
国のサイバーセキュリティに大きく貢献することとなる。
スクリーン
「元気、勇気、いわき」みたいになった、美桜の映像

僕の生まれた故郷も移住した先も、一回隣の国の企業に随分買収されたが、
その国も同じように貧しくなり、また、全員出て行った。

「鎌倉をインドにしてしまえ!」みたいな静止画数枚のカット
インド人がいなくなる静止画数枚のカット
「京都にサファリパークを!」お寺の前にシマウマがいる静止画数枚のカット
アフリカ人がいなくなる静止画数枚のカット

僕の超能力は、20代も半ばになり、女性を関係を結んだ途端に、なくなった。

光が女性と関係を結んだ短い動画
世間から忘れられた光の短い動画     
            CUT

学校に生徒がいる。
光のモノローグの続き
世間から忘れられた僕はその後、中学のプログラミングの先生になって、
太陽電池でロボットを生徒と作る。

白衣を来た光が、ロボットを手に教室に入る
ロボ研の生徒たちが教室にはいる。

光 僕は今、ロボ研休みの夏休みを、取り戻している。


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