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映画レビュー:ポンペイ★★☆☆☆

──酎 愛零が「ポンペイ」を観て感想を書く話──


 噴火が始まるまで耐えましょう。


 どうも、お昼にとんかつを食べたらおうちでの夕食もとんかつだった私です。

 今回はTVで放映されていた映画で「ポンペイ」を観ました!




 結論から言いますと、5点満点中、2点。

 東京国立博物館で開催されている展覧会「ポンペイ」に合わせて観た(というよりポンペイの展覧会をやっていたから放映されていた)のですけれども、うーん、展覧会の予備知識として見るには物足りないというのが正直なところでした。前半にドラマパート、後半に災害パートとおおまかに分かれていて、この前半部分の視聴を耐えられるかどうかで評価は変わってきます。ダメな人はダメでしょう。

(※ここからはネタバレを含みます。ネタバレが嫌な方はブラウザバックでお戻りください。)



■あらすじ

 ローマ軍の急襲により村を焼かれ、住民が虐殺されたケルト民族の集落。死体にまぎれて生き延びた幼い男の子は奴隷として売られ、腕の立つ剣闘士として日々を送っていた。地方巡業をしていた彼らが向かったのは、ローマ帝国の植民都市、ポンペイ。商業盛んな活気あるポンペイの街で、ケルト人の青年は道中で関わり合いになった裕福な商人の娘と偶然再会する。娘はこの地に派遣されてきた高官に言い寄られていたが、実はローマで求婚を断って逃れてきていたのである。その高官の腹心に故郷を滅ぼした仇敵の顔を見つけるケルトの青年。ポンペイのコロッセオでは因縁の「ケルト民族討伐戦」の再現をすることとなり、青年は数人の仲間と共に一方的に不利な状況で戦うことを余儀なくされる。頻発する小さな地震に不安な表情のポンペイ市民。コロッセオでの死闘のさなか、ついにヴェスヴィオ火山が噴火し……


■良かった点


・ヴェスヴィオ火山噴火の描写
 大迫力です。猛スピードで迫りくる火砕流の絶望感はお見事!そして、起こる事象も「順番通り」です。ちゃんと考証が仕事をしていると見ました。
 順番通り、というのがなにかと言いますと、下手がこの手のお話を作ると、いきなり火山が噴火して火山弾が降ってくる、とやりがちなものですけれども、ちゃんと地震から始まっています。大地を引き裂くような揺れ、のち噴火、というプロセスを踏んでいます。そして津波の描写も波がいったん引く→津波と化して襲ってくる、という順番でした。港に停泊していた船が波にさらわれて町なかを破壊しながら突っ込んでくる場面は、日本人ならあの津波被害のことをまざまざと思い出して戦慄するでしょう。
 当たり前のことですけど、フィクションです。あんなに炎を上げながら岩って降ってくるかな?思いましたけど、それを割り引いて鑑賞しましょう。


・ポンペイの街並み
 発掘されたポンペイの街並みを、わかる範囲で再現しています。あの有名な横断歩道のところとかですね。そこに人々がひしめくさまは、たとえば横浜あたりの繁華街の賑わいを想像していただければ近いと思います。ポンペイは商業都市であり、港湾都市でしたからね。私も人の多い海辺の街に暮らしていますので、このポンペイの街並みには親近感を持ちました。途中1カットだけ入るパン屋さんで売られているパンは、展覧会「ポンペイ」でもグッズになっている形のあれです!
 災害ものとか、パニックもの、戦争ものって、舞台となる場所への感情移入ってだいじになると思うんですよね。見知った、親しみのある街が破壊されていくのは恐ろしさとか、悲しさが引き立てられます。

・男気+筋肉+おっさん=大正義
 これは単純に私の好みです(・∀・)
 主人公を打ち負かすほどの強さを持つ剣闘士最強の男(黒人のおっさん)が、戦いの中で主人公と友情を結び、主人公の背を守って戦ったり、逃げ遅れた子どもを命がけで救出したりと大活躍。強敵との一騎打ちの際『この蛮人が……ローマ人のように死ねると思うな!』という罵倒に対して『なら見せてみろ──ローマ人は剣闘士と同じように死ねるか?』と啖呵を切る場面は激アツ!やっぱり男気あふれる筋肉おっさんキャラはいい!(ʃƪ^3^)


■賛否両論点

・敵がしぶとい
 モブのローマ兵はまさにモブでしかありませんけれど、ラスボスの元老院議員と腹心の将校がやたら強い上に打たれ強いです。特に元老院議員(かなりのお歳)の打たれ強さは異常。全力疾走する戦車チャリオットがひっくり返って投げ出されているのに、さしたるダメージもなさそうな感じで襲ってくる上、剣闘士として1,2を争うはずの主人公を圧倒する剣技を見せます。このあたりは人によって賛否分かれるかもしれません。歯ごたえのある敵だ、と思うか、もういい加減にしてよ、と思うかですね。私はちょっとしつこいかな……と思いました。


■残念だった点


・残酷描写から始まるので最初がきつい
 冒頭のシーンです。女子供も皆殺しの上、死体を木に逆さ吊りにするなど、なんとも念入りにケルト人たちの虐殺シーンを見せつけてきます。ここでくじけてしまう人は多そう。おそらくここでローマ人に対するヘイトを高め、奴隷剣士である主人公サイドに感情移入させるのが狙いでしょうけど、文化的な掘り下げを求めてこの映画を観た人をふるい落としてしまうかも。


・ポンペイの文化や芸術にフォーカスしているわけではない
 私的にすごく残念だったところ。かつて人が生き、暮らしたポンペイを再現してみせるなら、食文化や習俗、設備、芸術方面にもっと寄ってほしかったですね……正味1時間45分のうち、1時間くらいが剣闘士たちと主人公とヒロインとのあれこれに費やされているので、途中何度か早送りしました。


・主人公が薄味
 たしかにそこそこハンサムではあります……ありますけれど、復讐に燃えた執念深さを感じるでもなく、ラストシーン含めてなにか名言じみたセリフを吐くでもなく、淡々とした印象です。お馬さんと仲良くなれる特技あり。


・音楽はそれ以上に薄味
 なんかこう……盛り上がりに欠ける劇伴なんですよね……良くも悪くも主張しないので、全然頭に残らなかったです。

・とってつけたようなラブロマンス
 どう見ても美人ではないヒロイン。大した接点も無いのにこんなに急接近しますかね。私がドライなだけなんでしょうか。それとも吊り橋効果?人物像の練り込みがさほどでもなく、あまり感情移入もできませんでしたし、ラストシーンのために用意されたヒロインという印象が拭えませんでした。むしろ馬との絆を強調して馬がヒロインでも良かったのでは。

・途中でラストシーンがわかってしまう
 で、そのラストシーン。映画を観ていくと、(こりゃ死亡エンドか生存エンドの2択しかないな)(それも7:3で死亡エンドだな)というのがわかり、しかもオープニング映像でポンペイ犠牲者の石膏像の映像が流れているので(あっ……ラストの絵これだ)と悟られてしまいます。たぶん。
 どんな形態の物語であれ、「そうくるか〜!」と思わせるのと「あ〜、やっぱりね」と思われるのかでは感動の度合いが違うのではないでしょうか。


■総評

 剣闘士たちの戦いと、ポンペイの貴族の娘とのラブロマンスを織り上げてゆき、大迫力のヴェスヴィオ火山噴火のスペクタクルで魅せる活劇・災害映画。作りそのものはていねいなので、剣戟アクション好きな方、災害・パニック系が好きな方は、おひまがありましたら1度ご覧になってもよいのではないでしょうか。

 ただし、ポンペイとはなんぞや、ポンペイの文化や歴史とはなんぞや、という期待を抱いて観るとやや肩透かしをくらうかもしれません。ポンペイのポの字も知らない人が観てもあまり楽しめないでしょう。逆にこの街と、ここを襲った悲劇についてある程度ご存知の方だったら、ラストシーンを見て『いやそんなにキレイに残るんかーい!』とツッコミを入れることうけあい。

 男気あふれるマッチョのおっさん好きならそれでも観る価値はありますよ!笑笑



 というわけで星ふたつ!ヴェスヴィオ火山噴火が1:06くらいあたりなので、噴火の様子だけ見たい方はここまでスキップしましょう!笑笑 




映画評価基準
★★★★★:何度でも観たい
★★★★☆:ぜひ観たい
★★★☆☆:観ても損なし
★★☆☆☆:一度観ればいい
★☆☆☆☆:観なくてもいい
☆☆☆☆☆:お金を捨てたいなら




 今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 それでは、ごきげんよう。

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