見出し画像

ニュースつぶやき:「非常停止ボタン・車内非常ボタン」

 走行する電車内で気分のすぐれない乗客のために車内非常ボタンを押した他の乗客が、降りたホームで非常停止ボタンをも押した話。


 先日、朝の通勤ラッシュの埼京線で、車内非常ボタン(SOSボタン)が押され、さらにそのあと、ボタンを押した乗客が降りたホームで非常停止ボタンも押したということがありましたね。

 元となったX(旧Twitter)の投稿では、停車駅が近いのに車内非常ボタンを押すことの是非、さらにホームの非常停止ボタンを押すことの正当性がさかんにリプライされているようですわ。


 みなさんは、これらふたつのボタンをごらんになったことはございますでしょうか。


 車内非常ボタン(SOSボタン)は電車内についているもので、車両の連結部のドア付近などにある赤いボタンです。近くにSOSマークがあります。主な用途は、緊急を要する非常事態──ドアにものを挟んだまま列車が動き出した時、車内で犯罪行為を目撃した時、救急手配が必要な時、なんらかの異常を乗務員に伝えたい時、となっています。
 押すと「列車が緊急停車し、係員が対応します。マイクのある車両では、非常ボタンを押した後、乗務員にお話ください。」と書かれているので、基本的に押すと止まるようなのですけど、今回の埼京線は止まらなかったとのこと。
 まあ、当たり前といえば、当たり前ですわね。駅と駅の間で止まっても緊急対応に適した態勢が取れるとは思えませんし、火災とかではないかぎり、そのまま走行して最寄り駅に停車するというのが普通でしょう。

 今回は次の停車駅までもうすぐだったので他の乗客からは『押すな!』という声が上がったそうですけども、これは、へたに列車を止めて対応が遅れるよりは次の停車駅でスムーズな救護活動へつなげた方が良いと思われたのでしょう。このあたりは周りをよく見て、落ち着いて判断できることが条件となりますわね。でも、基本的には押していいと思います。実際に列車は止まらなかったわけですし、都内を走る列車なら、たいてい乗務員さんとつながるマイクがありますから。



 問題は、そのあと。

 車内非常ボタンを押した乗客(傷病者本人ではない)はホームに降りたあと、非常停止ボタン(列車非常停止警報装置)を押したのです。
 非常停止ボタンを押すと、駅構内では警報ブザーが鳴り響き、運転士さんや車掌さんが非常ブレーキをかけて列車を停止させます。また、一部の鉄道事業者では、この装置と連携して、周囲の列車に異常を知らせる防護無線が自動的に発報されるシステムもあるとのこと。

 つまりこのボタンは、押すと電車が緊急停止するのです。へたをすると周囲の電車も。主な用途は、列車を止めなければならない事態──線路に人が転落した時、進入する列車に接触しそうな人がいた時、線路内に列車の運行に支障があるものを発見した時、となっています。



 ですので、今回のこの場合は、不適切な使用……になってしまうのではないかと思うのです。すでに列車は止まり、傷病者を連れ出すことはできるのですから、これ以上他の列車に緊急停止の信号を出す必要はないわけです。

 しかし、すべての乗客に、それもパニックを起こした一般の乗客にそこまで冷静な対応ができるのかというと、それも疑問ですわ。「非常」という文字のついた赤いボタンを見たら、わらにもすがる思いで押してしまう人はいらっしゃるでしょう。何よりも、正しい知識の普及が必要ですわね。

 ちなみに、不必要に電車を止めた場合、威力業務妨害罪などが適用され、鉄道会社から損害賠償請求される可能性もあることも知っておいた方がよいでしょうね。






サポートしていただくと私の取材頻度が上がり、行動範囲が広がります!より多彩で精度の高いクリエイションができるようになります!