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酎愛零、浮上航行を再開す(アリジゴクからの脱出)

 お久しぶりです、酎愛零です。

 ここんとこ低浮上でした。何をしていたのかというと、「小説の書き方」という終わりのない迷路ちっくなものにはまってしまい、いろいろなものを読んではあーでもない、さまざまな話を聞いてはこーでもない、と、アリジゴクの巣に落ちたアリよろしくあがいておりました。

 創作において、素人ゆえの勢いというものはあるかもしれませんけれども、同時に自信のなさというものも存在するものです。書いたものを読み返すたびに痛感が増していく自分の未熟さ、稚拙さといったものが重くのしかかり、(自分に物語を書くことなどムリなのでは……?)といった自己嫌悪におちいって、何から手を付けていいのかわからなくなり、答を探してまた読み返しては自信を失うという実にまずい負のスパイラルから抜け出せずにいました。これはたとえるなら根のない木に花を咲かそうとするくらいの不安であり、または材料だけそろえてレシピなしで料理をするような心もとなさというものです。このままでは創作自体を忌避してしまう、そうならないためにはどうすればよいのかを、外部から知識をかき集めることでなんとかしようとして、なんともならなかったのがこの2週間でした。どこにも、私の望むような答はなかったのです。

 結論から言いますと、私はすでに解答に近いものを自分の中に持っていて、それを後押ししたり、確信を与えてくれるようなやり方を探していただけなのだと思います。でもそれは「自分のためにつくられた、自分だけのやり方」であって、それを外から探してきても、せいぜいが「似て非なるもの」どまりで、それこそ砂糖の山からひと粒の塩を見つけるような、どだいムリな注文でした。

 こうして、求めるものを見つけられず、noteに顔も出さずに、ムダに時間だけが過ぎていくかと思われました。しかし、この2週間は、ムダではありませんでした。


 見つけたんですよ。塩のひと粒を。


 もちろん、「小説の書き方」で検索して出てくる砂糖の山からではありません。もっとかんたんなところが──いうなれば塩の坑道みたいなところがあったのです。それは

 TRPGのシナリオブック

 でした。TRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)とは、ゲーム機などのコンピューター機器などを使わずに、あらかじめ設定されたシナリオとルールに沿い、人間がキャラクターを演じる(=ロールプレイする)ことによってシナリオを進めるアナログゲームの一種です。(ちなみに和製英語)

 TRPGをやったことがある人、それもゲームマスターをやったことがある人ならおわかりいただけると思います。このゲームは言わば「ルールのあるごっこ遊び」であり、緻密で奥深い世界設定とキャラクター設定であればあるほどゲームマスターの引き出しが増えてゲーム世界を堪能することができ、さらにルールの縛りやサイコロの出目で行動の成否を決める偶発性によって必ずしもプレイヤーの思い通りにならないというところにおもしろさがあります。
 プレイヤーを引き込む印象的なシーン、やる気を起こさせるプロット、興味をそそるあらすじ、誰もが納得するシナリオ、異なる人生を堪能できるストーリー、磨き抜かれた表現の数々。プレイヤーはおのおのが創り上げた(色んな意味で)魅力的なキャラクターを演じてシナリオに千変万化の彩りを加えるとともに、自分たちやゲームマスターの想像を超えたストーリー展開に一役かうことができ、ゲームマスターはその精妙なさじ加減によって、市販されているゲームシナリオをこの世にひとつしかない傑作へと変えるチャンスを与えられている、それがTRPGの魅力です。

 このゲームを成立させるためには、プレイヤーに「いや、そうはならんやろ」と思わせてはなりません。ゲームマスターの未熟さを隠したり、本来のシナリオに引き戻して軌道修正したりするために、それまでに起こった出来事を無視して話をねじ曲げて不自然な展開にしてはいけないのです。逆に、たとえ不運な偶然(それもプレイ続行不可になるような)が続いたとしても、プレイを続けられるように不自然さを感じさせずに整合性を取らなければならないとも言えます。そうでなければ序盤で再起不能になったプレイヤーを置いてけぼりにして話を展開し続けることになり、置いていかれたプレイヤーから『じゃあ、帰るわ』というセリフを引き出しかねないのです。必要なのは、臨機応変な対応力、豊かな表現力、そしてなによりも「物語の組み上げ力」です。

 シナリオブックをめくりながら私は目をらんらんと光らせていました。このアプローチの仕方は、小説の書き方ではないけれど、かなり近いのでは?というか、私が漠然と思い描いている理想にかなり近いのではないか?と思ったのです。シーン、プロット、あらすじ、シナリオ、ストーリー、表現の磨き上げ、世界設定の仕方とその表現の仕方、キャラクター造形の仕方とその表現の仕方。キャラクターに関してはゲームマスターだけでなくプレイヤーの技量や慣れによるところがあることを差し引いても、これをまとめあげれば小説の書き方として転用できる!と、考えました。

 小説を書く人なら、その書き方に千差万別があって当たり前です。どれほど高名な小説家に教えを請うても、出てくるのはその小説家の書き方であって、他の人がそのまま使えるものだとはかぎりません。その点、TRPGのルールブックなら、基礎的なことはすべて共通認識として万人に受け入れられるでしょう。というか、ルールなので万人に共通認識として受け入れられるように作ってあるのですから。

 あとは、これを論理的に組み上げて、小説の書き方というHow toものとしての体裁を整えれば、私の望む教科書的なものができあがるはず。TRPGのゲームマスターがやるように、きわめてシステマチックに組み上げ方を構築すれば、それが私のやり方になるはずです。
 創作は感性だ、感受性のおもむくままに筆を走らせるべきだ、という方もいらっしゃるでしょう。しかしそれはそれ、これはこれ。おのおの自分に合った制作方法を取ればよいのであって、そこに優劣はありません。差があるとすれば、やりやすいか、手間がかかるか、くらいであり、これは流れ作業で製造する工場と、自分のまわりに部品を置いてひとつひとつ組み上げてゆく手工業の差というところだと思います。それぞれに合ったスタイルを取ればよいですし、そうしてできあがった作品にどのような価値を見出すかは手に取った人しだいであることは、何も変わりません。

 これから「小説の書き方」を書く、というと、かなりだいそれたことをしようとしているように思いますよね。たしかに、万人に理解でき、納得できて、しかもそれを使えば誰でも小説が書けるようになる、というものを作るのはたしかに至難の業でしょう。それこそ神の技かもしれません。でも、自分だけのためだったら、そんなに難しいことではありません。自分という読者あるいは生徒に語って聞かせ、理解させ、納得させ、実践させるにはどうすればよいかだけ考えていればよいのですから。それをどこかの誰かが参考にするかどうかは、また別のお話。


 とにかく、ここしばらく私を悩ませていた迷いは晴れました!今回ははからずも潜航モードになってしまいましたけど、これは自らの意思で潜ったのではなく、なかば深海に引きずりこまれたようなものでしたからね……決してnoteをやめたわけではありませんのでご安心?ください。
 今日からはまた浮上航行モードに復帰し、ちまちまと投稿しながら、新たなるミッション「小説の書き方」を執筆してゆくこととします。少なくとも夏頃には形にしたいと思っておりますので、そこまでに、いささか不躾なお願いではありますけれども、自分はこんな書き方をしているとか、こんな書き方をしている人がいるとかの情報をお持ちの方は、お教えいただけるととても助かります。



 お久しぶりに最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 それでは、ごきげんよう。

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