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台湾芸能界の衝撃

台湾の人気ロックバンドMayday(中国語表記:五月天)のボーカル Ashinが、中国のコンサートで「僕たち中国人は…」と発言したことが、台湾で大論争を巻き起こした模様です。

台湾人は「台湾人である」というアイデンティティを強く持っています。自らを「中国人」と呼ぶことには抵抗があるし、他の国の人からも「台湾人と呼んでほしい」と思っています(私がオセアニアに留学したときに出会った台湾人の友人はみなそうでした)。

Maydayが中国で「僕たち中国人は…」と発言したと知った時、私は正直、「ここまで来たかー!」と思ってしまいました。台湾トップクラスのミュージシャンである彼らでさえ、中国を持ち上げる発言をさせられるぐらい、圧力がかかっているのか?と。

彼がこの発言をした時期は、中国の軍が台湾を四方八方取り囲み、軍事演習を行っていた時期です。もちろん、蔡英文氏の後任である民進党の政治家が次の総統になったことを受けての「威嚇」です。

Maydayは10年くらい前に日本進出したことがあるのですよね。そのときは「台湾のミスチル」と紹介されたりしてましたが、私の印象だとミスチルをはるかに超えた影響力があるバンドです。台湾人に限らず世界の中華圏の人は、老若男女問わず、1、2曲は彼らの曲を歌えるはずです。中華圏では数万人規模のスタジアムのチケットを数分で売り切ることができる、集客力のあるバンドです。ヨーロッパ、アメリカ、オセアニアでもツアーを行っています。

長年Maydayのファンである私の友達によると、彼らはデビュー当時は民進党の集会で歌ったり、台湾語の曲を多く歌っていたようです。

ところが、ある時期から全く政治に関して発言しなくなり、また台湾語で歌うこともなくなって、北京語(いわゆる標準中国語)のみになったとか。

有名になるにつれ、何らかの圧力がかかったか…中国大陸に進出する際、台湾独立派であると見られないため、「台湾」を全面に出すのはNGになったのだと思われます。

台湾にいる友達によると、台湾の芸能人(やスポーツ選手)は「台湾独立派」と見られると、中国大陸での仕事をキャンセルされたり、コンサートができなくなるようです。このような中国当局からの圧力を「封殺」と呼ぶんだとか。封殺…(怖)。

Maydayの問題発言のとき、同じ時期に中国でコンサートをしていた台湾人アーティストも、中国を持ち上げる発言をしています。こういうのを見ると、何らかの圧力がかかっていたのだろうと考えるのが自然です。

台湾人のアーテイスト、スポーツ選手は大変ですね…

今回の事件で彼らを攻撃していた日本のネット民もいますが、そういったことは止めるべきです。日本と台湾では全く事情が違うし、台湾ではビックアーティストになればなるほど、政治的な圧力と自分の信念との間で苦しいはずです。

台湾の彼らのファンも、気持ちは複雑だろうけど、彼らがそう言わざるを得なかった背景を理解してあげてほしい…と思います。

そして個人的には、今後日本政府は、どんなことがあっても台湾の味方をしてほしいです。日本は台湾を裏切って中国を選んだ過去があります。同じことを繰り返してほしくないと強く思います。

最後にMaydayが初期のころに作った台湾語の曲「I love you 無望」を、同じく台湾のバンド Egg Plant Egg (中国語表記:茄子蛋)と一緒に歌ったものを載せておきます。このバンド名、野菜のお茄子+たまご、っていうことですよね?面白いバンド名ですね~。

ジーンズ系の服を着ているのがMaydayのボーカルAshin、メガネの長身の男性がEgg Plant Eggの黃奇斌です。

こうやって聞くと、中国語が分からない私でも、北京語と台湾語は全く違う!と感じます。これは完全に別の言語。台湾語はサウンド的には広東語に近い気がします。まあ広東省と、台湾語の起源の福建省はお隣さんなので、似てても不思議はないですね…

ちなみに Egg Plant Eggは台湾語で歌うバンドです。メンバー3人全員1990年生まれ。現在30代半ばで台湾語の能力を維持しているあたり、すごいなと思うんですが…おじいちゃんやおばあちゃんと同居していた、というバックグラウンドなら、台湾語の維持は可能だったんでしょうか?ちょっと彼らの背景が分からないですが…

Maydayは現在ほとんどのメンバーが40代後半のはずで、彼らの年代ですら、台湾語の維持は難しいはずです。

もし台湾の言語事情に詳しい方がいらしたら、教えていただきたいです。

追記:Ashinも背が高いはずですが、Egg Plant Eggのボーカルはもっと高く見えます。一体何センチやねん…「南の中華圏の人は小柄」だと思い込んでいた私の価値観を覆してくれます。






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