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中尾有伽×戸田真琴×飯田エリカ 海辺にて振り返る、私たちの真剣勝負

新しいグラビアのかたちを提示するとともに、人を愛する方法を模索するプロジェクト「I’m a Lover, not a Fighter.」。中尾有伽さんをモデルに迎えた第1弾が、本日をもってついに終わりを迎えました。

撮影日の約1週間後にあたる3月中旬、中尾さんと戸田真琴、飯田エリカは七里ヶ浜に足を運んでいました。この対話は、3人が海を目の前にして思い思いに紡ぐ言葉たちをそのままに記録したもの。「写真に残る」ことの重さ、身体と消費、修正の文化、人を美しいと思うことーー。静けさの合間にひそむたしかな情熱が、あなたにも伝わりますように。

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中尾:今日は何を話せばいいの?

飯田:撮影終わったあとも話してたと思うけど、あのときは疲れ果ててたから。打ち合わせではめっちゃ喋ってきたけど、作品をつくるにあたっていろいろあったじゃん。まこりんと私が2人で話したことを載せるのも必要だと思うけど、今回は人を撮ること、女性を撮ることに対しての挑戦で、映る人の意思も大事にしたい企画だから、3人で話したかったんだよね。

中尾:正直、3人でつくってたから全部最高です! ってなるじゃん。提供する側としてあまりにも自己陶酔というか、めちゃくちゃ最高だと思いすぎてやばいんじゃないか。

飯田:最高だけどね。

戸田:ぶっちゃけどうでした? 撮影全部終わってみて。

飯田:聞きたい。

中尾:もう、始めはよくわからなくなって、何にもできなかったかな。

戸田:本当に? 森のシーンの撮影とか?

中尾:私たちの好きなことを自由にやろうという企画だけど、自由なのってめちゃくちゃ不自由でもあって。それを1回意識したらずっとそうなっちゃう感じで。最初の何枚かはどうしようって思いながら撮ってもらってた。

飯田:最初ね。

戸田:写真撮ってる様子を見て思ってたんだけど、撮る側だったら「撮らされている感覚」って絶対あるなと思っていて。ポーズが1個変わったからシャッター押さなきゃとか、今、もしかしたらいい顔しているかもしれないから撮らなきゃとか。自分がいいと思っている瞬間とどれくらい折り合いつくんだろうなと…。

私が写真を撮る人にならないし、なれないだろうなと思うのは、ものすごく対人関係で臆病だからなんだよね。自分の美学と反しても撮らなきゃ、という瞬間が対人だと出てしまうと思う。人に優しくするだけが美学なら正解かもしれないけど、そうじゃない、そことは関係のない場所にある美学が私の中にはあって…。そことの折り合いがつかないから、瞬間で切り取ることはできないなと思った。でも今回って枚数が限られてるじゃん。1シーンにつきフィルム3本ずつで、撮った順番そのままに公開される。

飯田:全部見せるね。

戸田:飯田さんはシャッターを押す瞬間ってどういう感覚だった?

飯田:やばかった、今回は。何だろう…。もともと、モデルさんは露出することでリスクを負うのに、カメラマンはまったくリスクを負わない撮影が多いことが不平等だなと思ってたから、枚数を制限して全部公開するという晒しをすることで、ちょっとはバランス取れたかなと思った。ほんのちょっとだと思うけど。

自分で課した縛りだったけど、撮り始めたら想像以上にそのジャッジが重くて。1シーン撮って「これやばいな」と思ったんだよね。普段の撮影1回分の気力を、1シーンの撮影で使っちゃった。もしかしたら1回分以上かも。それこそ、普段だったら中尾とも話しながら、ぴりぴりしないで撮るほうが自分っぽいのに、今回はカメラの中に集中するしかなくなって、コミュニケーション取る余裕がないというか。見て考えて、シャッターを切るまでに使うエネルギーがとんでもなくて。

撮影前に打ち合わせしたときに、青木さん(ヘアメイク)から「中尾さんと飯田さんは親密な関係だから、それがいいときもあるけど今回は表現しないほうがいいんじゃないか」と言われていて。撮るときにしかわからないことってあるなと思ってたけど、自分が思ってた以上に親密さを排除することになったな。

戸田:今回はテーマがあって、写したいもの自体が親密さより孤独感、世の中から異質な存在という方向だと思ったから、普段の撮影とは全然空気違ったよね。

飯田:私やばかったよね。

中尾:私もやばかった。

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scene1 forest #04」より

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