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【愛されたいって言えなかった】第8回「幼稚な願望を乗り越えろ」

「愛されたい」をテーマにお送りしている戸田真琴の連載第4回。毎月、さまざまな角度からテーマについて掘り下げていく予定です。何かの要因で表になかなか出ることのなかった「愛されたさ」を発掘したり、誰かの愛されたさについて考えてみたり、私たちの人生を真綿で締めるようにじわじわと縛っているあの「誰かに(自分が望むやり方で / 満足に / 濁りなく)愛されたーい!」というほぼ実現不可能な巨大願望についてみなさんと考えていけたらと思っています。愛されたかったエピソードも募集したりする時もあるかもしれません。愛されたい!と一度でも思ったことのあるあなた、ぜひお付き合いいただけますと幸いです。

前回の記事はこちら↓


【愛されたいって言えなかった】第7回「幼稚な願望を乗り越えろ」

 初夏の香りにまだ見ぬ夏の思い出を空想し、どうせそれも叶わないと先回って落ち込んでいるみなさん、こんにちは。戸田真琴です。

 先日5/14~15にかけて、I’m a Lover, not a Fighter.初の展示会を開催いたしました。3rd season「Don’t hurt my heart.」の展示と、同時にLoverとしての初の作品集の受注会も行いました。お越しいただいたみなさん、遠くから成功を祈ってくださったみなさん、たいへんありがとうございました。さまざまな眼差しと感受性との出会いがあり、とても幸福で切実な二日間でした。

 「撮影したすべてのカットを掲載する」という約束で作品を発表し続けているLoverですが、初めての展示では改めて、飯田さんによるセレクトで数十枚の写真が暗室にて焼かれ、額装されてみなさんのお目にかかることとなりました。これまで、フィルムといえどデジタル画面でしか見ることのできなかった作品たちが、初めて紙に焼かれたことで、同じ写真であっても、前に見た時と印象が変わったり、より隅々まで目が届いたり、あたらしく発見があったという声もたくさん聞きました。私自身、これまでしっかりと見ていたつもりでいたものが、さらに、もっとずっと豊かであったということに気付き、たまらない気持ちになりました。髪の先にしたたる水滴の中にも細かに世界が映り込むこと、眼球がまさに透明の球体であること、肌の内側にある悲しみがたしかに青白く透けて見えること、暗闇が、ほんとうにどこまでも深く真っ黒かったこと。ひとつひとつを見ていると、眠っていた感受性が揺り起こされるような、ぱちぱちと弾ける美しく苦しい感激が打ち寄せてきました。そう、この世界にはまだまだこれまで見えていなかった美しいものが存在しているし、感受性がひらかれるほど、それらは、眩くあなたのことを迎え入れてくれるのだと思います。私たち、もっと、感じることができる。それを伝えられる、そして感じ取っていただける展示だったと記憶しています。


 こうして改めて作品に向き合った自分も含めて、この世には、自分には「見えていない美しさ」があるのだということを、もっと受け入れていくことが大事なのではないかと思いました。たとえば、どうして「魂のグラビア」と冠してこのプロジェクトを始めたかというと、今グラビアをつくる側にも、それを見る側のメイン客層の人たちにも、被写体の女の子の「見えていない美しさ」があまりにもあると感じているからでした。その多くが、「純粋」「妖艶」「さわやか」「クール」……などおおざっぱに数パターンに分かれた“都合のいい理想の女の子像”をすでに思い浮かべられた上で、生身の被写体たちをそのどれかに当てはめるようにイメージをつくっているのだろうな、と感じるような展開をしています。これは商業作品に関わらず、アマチュア同士のポートレート撮影の作品を見ていても、はたまたアイドルを応援している男の人たちの話を覗き見ても、個人的な恋愛の話題の中でも、感じ取ることの多い現象です。自分の中にすでに「女の子はこういうものだろう」「この子はこのタイプの性格だろう」などと予想と理想が混じった願望が生まれてしまうと、人は、なかなかそのフィルターを外して見ることが難しくなるようなのです。今日も世の中には理想の女の子の登場するフィクションがつくられ、理想の女の子像が写真に、映像に、撮られていきます。そういった作品を味わうことの甘ったるい美味しさも、理解はしている私ですが、そんな男の人たちに向けて、どうしても思ってしまうことがあります。


理想化によって見えなくなるもの

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