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心震わすジュディの歌声(1)

 今年の3月、公開を楽しみにしていながらコロナ禍で諦めた映画がありました。『ジュディ 虹の彼方に』。ハリウッドミュージカル全盛期を彩った天才歌手の伝記映画です。この映画では彼女、そして当時のハリウッドの闇にかなり踏み込んでいて、デビュー当時から大人の都合でその才能や人生までも消費された彼女の姿が映し出されているようです。

 とは言え、映画未視聴で深いところまでは知らない私でも、彼女がとてつもない波乱万丈な人生を送ったことは一応把握していて・・・だからという訳ではありませんが、彼女の歌や演技にはそれが喜怒哀楽どのようなパフォーマンスであっても、強く人の感情を揺さぶる力があると感じます。
楽しい歌を聴けば身体を動かさずにいられない気持ちになり、悲しい歌を聴くと心の奥からぎりぎりと搾り上げられるような切なさを覚える。
 その才能ゆえに時代に翻弄された彼女の感情が、役や歌を通してダイレクトに伝わってくるような気がする。まさに唯一無二という言葉がぴったりのアーティストだと思うのです。
 ・・・前置きが長くなりました(^^;)それでは彼女の生い立ちからご紹介していきます。


 ジュディ・ガーランド(Judy Garland、本名フランシス・エセル・ガム)は、1922年6月10日アメリカ合衆国ミネソタ州で生まれました。幼い頃より2人の姉とともに「ガム・シスターズ」として歌手活動を行い、12歳のときにMGMのオーディションに挑みます。この時最終審査に残ったもう一人がディアナ・ダービン(『オーケストラの少女』などに出演したソプラノ歌手)で、二人はテストの一環としてショートフィルムに出演しました。

 それがこの『Every Sunday』という作品。
結果ジュディが選ばれMGMの専属女優となったのですが、実は「ジュディを降ろせ」と審査員が告げたところ間違って合格と伝わった、なんてエピソードもあるんです。実際どうだったんでしょうね?

 デビュー後しばらくは端役ばかりの日々が続きますが、1938年には『Broadway Melody(踊る不夜城)』に出演、有名な俳優クラーク・ゲーブルへのファンレターという形で♪DEAR MR GABLE (YOU MADE ME LOVE YOU)♪を捧げ注目を集めました。

 その後、1939年にあの『オズの魔法使い』に出演し、世界的な名声を得た彼女。♪OVER THE RAINBOW♪はミュージカルに興味が無い人でも知る名曲になりました。この出演はMGMが有名子役だったシャーリー・テンプルに出演を断られたことで実現したそうで、運も実力のうち、というのを痛感しますね(^^;)

 さらに同時期には名タレントのミッキー・ルーニー『アンディ・ハーディシリーズ』(いわゆる裏庭ミュージカル)に出演。

 『Babes on Broadway』(1941)より♪How About You?♪
”6月のニューヨークが好き あなたはどう?
ガーシュインの曲がお気に入り あなたはどう?”

 一人の時は語り掛けるようにしっとり、二人の時は少しおどけて楽しげに、歌い方ががらっと変わるのが面白いですね。
 ジュディはもちろん、ミッキー・ルーニーもまた多くの人に愛された大スターでした。どこか三枚目な雰囲気を持ちながら、溢れるエナジーと何でもこなす才能で晩年まで活躍した彼。ジュディ同様子供の頃から芸能の道を歩んでいた彼とは兄妹のように仲が良かったそうですが、この微笑ましいナンバーからそれが伝わってくる気がします。

 彼女が一番輝いていたのはおそらく1940年代。上記の『Babes on Broadway』以外にも数多くの映画に出演し、MGMの二大スターフレッド・アステアジーン・ケリーとも共演しています。(アステアとの共演は50年代)ジーン・ケリーとの初共演は『For Me and My Gal』(1942)で、まだ新人だったケリーと息の合った歌やタップを披露しました。彼女は振り付けを覚えるのが早く、一度見ただけでほぼ完ぺきにこなしたと言います。

 裏庭シリーズ最終作となった『Girl Crazy』(1943)は、ガーシュインの名曲を詰め込んだ素敵な作品となりました。♪But Not For Me♪(1:03~)の自分に言い聞かせるかのような切ない歌声はジュディならではですし、明るくJAZZYに歌い上げる♪I Got Rhythm♪(1:36~)も最高です!

 1944年の『Meet Me in St. Louis(邦題:若草の頃)』より、いまやスタンダードナンバーとなった名曲♪Have Yourself a Merry Little Christmas♪での優しく暖かな歌声。小さな身体から繰り出される迫力ある歌声は彼女の特徴ですが、一方で歌に寄り添い繊細に表現する彼女も素晴らしいです。
 この映画の監督は後に夫となるヴィンセント・ミネリ。彼との間に生まれたのが、やはりミュージカル女優として有名になったライザ・ミネリですね。
それはさておき、ストーリー・歌ともに甘酸っぱい青春を感じさせる可愛らしい作品です。

だいぶ長くなってしまったので、1945年以降のジュディについては別記事にて。彼女のエンターテイナーとしての才能がどんどん深まる過程を、出演作と共にご紹介できればと思っています。

それでは最後まで読んで頂きありがとうございました。
よろしければまた遊びにきてください(^^)

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