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りえちゃん係

小学校1.2年のとき、
私はりえちゃん係であった。

りえちゃんは、ちょっと気難しくて
みんなで行動するのが
少し苦手な子だったと思う。

何か気に食わないと、
授業中でもトイレに隠れて
出て来なくなってしまい、
先生や他の子が行っても出て来てくれず、
何故か私が声をかけたときに
出て来てくれたので、
自然と私がりえちゃん係になっていた。

何度か、りえちゃんのお家に
遊びに行ったこともあった。
りえちゃんは里子であった。
当時はその意味もわからなかったが、
母がそう言っていた。
おばさんはとても優しかったように思う。
歳の離れたお兄さんがいたが、
今思えば、よそよそしい雰囲気もした。
時折笑うりえちゃんの顔は可愛く、
たまにスイッチが入った時には、
どうしようもなくりえちゃん係を
辞めたくなったけど、
りえちゃんがトイレから出てきたら、
気まづいながらもお互い苦笑いしながら
教室まで戻って行って。
何故かりえちゃんを嫌いになることはなかった。

3年生になるとりえちゃんともクラスが分かれ……
そこからずーと、
りえちゃんのことを思い出すこともなかった。

社会人2年目。
忘年会で当時勤めていた科の先生と
先輩ナースとで、
小料理屋のようなところに行った。
お店は忘年会シーズンということもあり
混み込みで、人手が足りていない様子であった。

着物でお給仕をしてくださる方も
バタバタしている感じで、
手が足りないのか奥の調理場から、
太ったおばさんが出てきた。
おばさんは私をずーと見て、
神山さん?って声をかけてきた。

誰なんだろう? ? ?

りえちゃんだ。

あのりえちゃんだ。

その人は、私ににっこり微笑んだ。
そしてもう一度ニコッと笑ったとき、
上の前歯4本が無かった。
根元から虫歯になっていて黒い歯が
少し残っていた。

隣にいた先輩から、知り合い?と聞かれ、
聞こえないふりをした。

連絡先教えて!と言ってきたその人に、
私は小さい声で 後でね。
と言って席を外した。

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あのときの私は強張った怖い顔を
していたと思う。
連絡先は教えなかった。

あれから25年以上…
りえちゃん、お元気ですか?



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