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プールでズル

小学校5年の夏休み明け。プール最後の日。

私が子どもの頃は、プールの授業が厳しかった。
泳げない私は、毎年夏休みの水泳特訓みたいなのに半強制的に出席させられていた。
だけど一向に上達はしなかった。
25メートル泳げない私は赤帽、
25メートル以上泳げる子は青帽、
50メートル以上泳げる子は白帽と決まっており、5年生にもなると
赤帽を被っている子も少なくなっていて…。
私はプールが嫌いだった。

プール最後の日は、
クラス対抗で競走したり個人戦があったりと、
心がドーンと暗い。憂鬱。
ズル休みしなかったのは、まだ私の心が
汚れていなかった年頃だったのだと
感心してしまう。

そしてとうとう私の出番。
数人の赤帽たちとプールにドボン!
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今回もまた頑張ってはみたけれど、
苦しくて怖くて、プールの水をいーっぱい
飲んでしまいそうで、息継ぎのようなことも
もちろん出来ず、
いつもの溺れそうな私の泳ぎで10メートルの
ところで立ってしまった。
ビリだったと思う。

15メートル、20メートル、私の前に
立っている子たちが見えた。

A君17メートル、B子さん21メートルと
結果が呼ばれていく。

気づいたらプールサイドから、ブーイング。
『あいつ、歩いてるぞ。進んでる!』
私を見て、みんなが笑っていた。
私は15メートルのところまで、
無意識にそーと歩いていたようだ。

恥ずかしかった。
ゆっくり少しずつ後退りした。

なぜか凄く笑っていた。
泣きたいのに笑っていた。



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