見出し画像

読書メモ:テレワークかそれとも出社か?

基本情報

『テレワークかそれとも出社か?』
独立行政法人経済産業研究所 岩本 晃一
ビジネス教育教育出版社 2023年5月10日初版

2020年2月、新型コロナが発生し、日本企業でもバタバタと導入が進んだ「テレワーク」。当時在籍していた前職の会社では、元々在宅勤務の制度はあったため、人事担当者的には世間程は混乱せずに済んでおり、むしろリモート環境が全社員に準備できておらず、情報システム部門の方がひっ迫していた。
政府から「緊急事態宣言」が発出され、学校は休校になり、いきなり始まったテレワーク。2022年3、4月頃は、自宅で仕事できるツールは揃っても自宅内の環境(執務、家族)で、仕事がはかどらないケースも耳にしていた。当時上司とリモートの打ち合わせをしていた時に、ベットで膝にPCを置いて腰が痛いと言われて、驚いたのは忘れられない。
昨今は、新型コロナも騒がれなくなり、各企業はテレワークの見直しが進んでいる。テレワークが始まってから課題と言われている「生産性」に関して、検討した1冊。

構成

第1章 アンケート調査から見えるテレワークの実態
第2章 テレワークが合っている人、合っていない人
第3章 テレワークを有効ならしめるための抜本改革
第4章 テレワークが期待される時代背景

感想

基本的に著者の岩本氏は、テレワークに賛成の立場(出社2日、リモート3日等の企業により幅はある)で、私も同様の意見である。
アンケート調査からテレワークの活用状況や日本でのテレワークでの生産性を解き明かしている。少し話はズレるが、個人的には「アンケート調査」は統計調査とは厳密に異なるため、信頼性に関しては注意が必要だと考えている。母数がいくつか、調査機関が信頼できるものかは、要注意である。今回は、信頼足りうるものである。
「テレワークは、日本の生産性を向上させる手段である」という主張もよくわかる。通勤時間がなくなり、作業に集中できるということがメリットとして記載されているが、加えて、自宅で行う業務を整理することになり、業務の棚卸にも役立つと思う。
一方で、テレワークの生産性が悪化する要因にも触れており、
①コミュニケーション不足
②仕事の内容自体がそもそも向いていない
③テレワークできる執務環境がない
この3点があるとテレワークしても生産性が悪化するとのことで、よく言われていたことである。
但し、気になることも記載されており、「テレワークには、ジョブ型雇用が向いている。日本型のメンバーシップ型雇用で、テレワークを行うと生産性が下がる」との話が出てくるのだが、これに関しては、疑問がある。テレワークを行うにあたり、各人に割り当てる業務を明確化するため、結果的にジョブ型の方がマッチするということだが、必ずしもそうとは限らないのではないか?「ジョブ型」が昨今叫ばれているが、「メンバーシップ型」でも十分テレワークで生産性を向上させることはできると思う。

・ジョブディスクリプションで業務が明確化され、「職務」で給与が決まるジョブ型
・一般に「総合職」であり、会社の指示・命令があれば何でも行い、基本的に「能力」に対して給与が決まるメンバーシップ型

ジョブ型とメンバーシップ型は、「何」で給与を決めるかというものであるため、テレワークの生産性とは直接的には影響ないはずである。確かにジョブ型の方が上司は部下を管理しやすいと思うが、上司の工夫次第で十分メンバーシップ型でも生産性は向上できると思う。(就業環境は、部下のモチベーションにも関わり、モチベーションも生産性に影響すると思うからである)

基本的には、テレワークか出社かの二者択一ではなく、業種、業務、家庭事情、繁閑等に応じて働く場所を従業員と会社で調整して、各社でガイドラインを定めて運用していくのが手間はかかるが、一番生産性があがるのではないかと思う。そういう意味では、テレワークと出社のハイブリットが現実的なのだろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?