太宰病再発

次の箇所のリズミカルな文体と照れ隠し風表現。
あゝ、太宰だなあ!
昨年あたりから太宰を読み直しています。この歳になりますと、若い頃の読み方と違って、しみじみ
と文体を味わえるのでしょう。
(以下抜粋)


一日一日を、たっぷりと生きて行くより他は無い。明日のことを思い煩うな。明日は明日みずから思い煩わん。きょう一日を、よろこび,努め、人には優しくして暮らしたい。青空もこのごろは、ばかに綺麗だ。舟を浮かべたいくらい綺麗だ。山茶花の花びらは、桜貝。音たてて散っている。こんな見事な花びらだったかと、ことしはじめて驚いている。何もかも、なつかしいのだ。煙草一本吸うのにも、泣いてみたいくらいの感謝の念で吸っている。まさか、本当には泣かない。思わず微笑しているという程の意味である。
太宰治『新郎』(昭和十七年)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?