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金魚水槽、大ピーンチ!


私はその日、とても焦っていた。
お茶のお稽古初め、2021年初釜の日。
朝早く起きて、着物を着て、美容室で髪を上げてもらって、袋帯をしめてもらう。その予定だった。

いつもの休日よりは早く起きて、いつものとおり金魚におはよーのあいさつをしようと水槽を見て、私は凍りついた。
金魚が、動かない。

え、どうしてどうして、何があった?
水温計は9度。ヒーターが付いていない。
ウソでしょ、ちょっと、どうして、みんな生きてる?

とにかく金魚!助けなきゃ。
あわてて水が入りそうな容器に水道からぬるま湯を入れ、カルキ抜きを入れ、金魚水槽のフタをとって金魚をすくって仮容器に入れた。今思えば至極乱暴だけれど、昨日までヒーター入りの水でぬくぬく生きてたのに、急に寒くなって動かなかった金魚たち。どうかお願い、生きてて!そんな思いで仮容器に入れたとたん、金魚たちは泳ぎ出した。
うわーん!生きてたー、よかったー。

どうやらヒーターが故障したらしい。こんな時に!
とにかく水温を保たなければ。ホットカーペットの上に仮容器を置き、バスタオルと毛布でグルグル巻きにした。
水温計とブクブクも仮容器に移した。

どうしよう、これから出かけなければいけないのに。とりあえず水温計を見ながら着物を着た。美容室の予約の時間になる。化粧をしてるヒマはない。
水温はなんとか大丈夫そうだ。とりあえず、髪と帯をやってもらいに美容室へ急ぐ。
美容師さんに事情を説明して、とにかく急いでやってもらった。支払いをしてすっぴんのまま急ぐ私。美容師さんはさぞ呆れていたことだろう。

金魚が心配だったのと、化粧をするために、初釜の前にいったん家に戻った。仮容器の金魚たちは生きていた。よかった。水温も下がってない。

ふと、金魚がいない水槽の方を見て、私は愕然とした。水が漏れていて、まわりが水びたしだったのだ!

さっき、金魚を移動させようと急いでフタをあけたとき、手が滑って、ガラスのフタを水槽の中に落としてしまった。その時、水槽が割れたらしい。

ウソでしょー!焦る私。
時間がない。初釜をあきらめるか…でも何て言えばいいのだ。金魚が…なんて言ったらそれこそ皆に呆れられてしまう。
とにかく、このままにはできない。
着物姿のまま、私は急いでポンプで水をくみ出した。水びたしの周りを拭いて、なんとか被害を食い止めた。

仮容器と金魚は何とかなりそうだ。
化粧しなければ初釜にも間に合う時間だ。
私はお茶のお道具バッグをつかんで、急いで初釜に向かった。

訪問着に合わせて、金糸が入った袋帯を二重太鼓に。髪をすてきに結ってもらって…なのにすっぴんの残念な私。マスク必須の時代でよかった。その年の初釜のことは何にも覚えていない。写真も一枚も残ってない。とにかく金魚が心配で、それどころではなかった。

初釜を終えて、大急ぎで帰宅。
金魚たち、ちゃんと生きてて泳いでいた。まずはひと安心。
今朝の、水槽から仮容器への移動を考えると、水合わせどころじゃない、信じられないくらいの環境変化だった。金魚には大変なストレスだったに違いない。生きててよかった。
ホントにごめんね、乱暴なことをして。

着物を脱いで、すぐに近くのペットショップへ。割れた水槽と同じものがなかったので、とりあえず、一回り小さいプラスチックの水槽と濾過フィルターとヒーターを買った。
しばらくの間はこれでなんとかするしかない。

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