親子別性だった夫の話・全4話を読み終えて

正直に言うと息子を別れた夫の姓のままにしておくのは最初全然理解できなかった。いつか夫の元へ返そうと思っていたのも然り。
名家の元夫には息子が居なくて跡取りに我が子しかいないからと旧態依然な思想に縛られていたのだろうか。
育てた息子は賢く立派に成人させて称賛されたいがために厳しく接していたのだろうか。
等々色々考えてしまったが、どれも違う気がする。
夫の元へ返そうと思うなら自分で育てたりしないだろう。厳しく接していても可愛くて仕方なかったであろう。
息子が美大へ行くのを反対してるのに、美大卒の家庭教師をつけて受験対策させているじゃないの。
「ててなしご」と息子に言った同級生の親の元へ息子の手を引いて文句を言いに行ったじゃないの。
何より政夫くんが喧嘩しながらも母親と対話できてるじゃないの。
父親が亡くなって母親が告別式どうする?と聞いた時「そっと行ってお線香だけあげてくるよ」と会話できるほど二人はしっかりして別性なのは全然感じさせない。
負けず嫌いな母親が旧態依然な考えで息子を立派に育て上げようとしていたけど、息子の可愛さにもうとっくに父親の元へ返そうなんて思っていなかった筈だ!…と思う。

一人だけ別性で過ごしていた政夫くんが結婚して子供も生まれて、もう一人じゃなくなった。
「かつてあんなに孤独だったのが嘘のようだ」に泣きそうになり
「苗字は書類を書くときに必要なただの記号と化した」
「しかし、与えられたその記号が歴史を刻みルーツとなって新たな意味を持ち始めた。」
新たな意味を持ったと言う政夫くんに幸せが降り注ぎますように。

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