【官報】官報の発行に関する内閣府令のパブコメ実施(締切:8/29)
本稿のねらい
2024年7月25日、内閣府は「官報の発行に関する内閣府令」(内閣府令)を公表し、パブコメの実施を開始した。締切は2024年8月29日である。
以前、内閣府に設置された「官報電子化検討会議」がとりまとめた「官報電子化の基本的考え方(案)」について紹介したが、その後2023年12月6日に「官報の発行に関する法律」が成立し、同年12月13日に公布された。施行は公布日から起算して1年6月以内の政令で定める日とされている。
本稿は、内閣府令の内容のうち、特に電子官報の発行方法について紹介し、以前の記事において言及したプライバシーへの配慮まわりについても必要に応じて触れることを目的とする。
官報の発行に関する法律の建付け
第一章 総則
第二章 官報の発行主体
第三章 官報の掲載事項
第四章 官報の発行の方法等★
第五章 雑則
第六章 罰則
余談だが、新しい法令を学ぶ場合、まずは目次(章立て)を確認することをおすすめする。
官報の発行の方法等
官報は、所定の種別ごとに所定の構成により官報発行年月日等官報掲載事項を記録したデータにつき所定の改変防止措置を講じた上、内閣総理大臣の使用に係る専用サーバにアップロードし、内閣府のウェブサイトを通じて公衆が閲覧することができる状態に置くこと(https://www. kanpo.go.jp)で発行する(電子官報)(官報の発行に関する法律第5条第1項から第4項、内閣府令第6条から第13条)。
電子官報として発行した後、所定の期間、継続して内閣府のウェブサイトに官報掲載事項にかかるデータが掲載される(官報の発行に関する法律第8条、内閣府令第15条から第18条)。
この点、官報の発行に関する法律や内閣府令においては、ボット等によるクローリング等の対策に関するプライバシー配慮措置(下記図参照)についてまったく言及されていない。
これについては、「今後の技術革新を想定し、特定の技術を法律上明記せず(技術中立性)」(内閣府資料5頁)とされているが、フリーハンドに過ぎるきらいがある。
なお、同時に「官報に掲載された法令等の情報について、プライバシーに配慮しつつ、機械可読なデータ構造としていくことを重要な目標の一つとして取り組んでいくことが考えられる」ともされており(官報電子化の基本的考え方(本体)78頁)、今後の検討に期待したい。
官報の種別
本紙:行政機関の休日を除き毎日1回発行され、一定の分量の官報の掲載事項(法第3章に規定するもののうち、第3号及び第4号の種別に係るものに該当しないもの)が掲載される官報
号外:必要に応じて本紙とともに発行され、当該発行の年月日に係る官報の掲載事項のうち本紙に掲載されなかった事項が掲載される官報
号外国会会議録:法第4条第2項第2号の規定により内閣総理大臣と国会とが協議して定めるところにより衆議院及び参議院の会議録が掲載される官報
号外政府調達公告:政府調達公告事項が掲載される官報
特別号外:官報の掲載事項(法第3章に規定するもの)について公布、公示その他の官報に掲載する方法により公にする行為を行う緊急の必要があると内閣総理大臣が認める場合に発行される官報
官報の構成
別表記載のとおり(内閣府令第7条・別表)。
改変防止措置
インターネット上に配信される官報データは、次のいずれの措置も講じられる必要がある(官報の発行に関する法律第5条第4項、内閣府令第13条)。
①データの安全性・信頼性を確実に確保するための措置
十分な安全性を有する暗号技術を用いて、アップロードされる官報データを暗号化する措置で次のいずれにも該当するもの
(1) 内閣府のウェブサイトが真正なものであることを示すためのもの
(2) 当該アップロードされる官報データにつき改変が行われていないかどうかを確認することができるもの
②内閣総理大臣が作成したデータであること確実に示せる措置
電子署名法第2条第1項に規定する電子署名又は政府認証基盤の官職証明書に基づく電子署名
タイムスタンプ付与
閲覧者のコンピュータの記録媒体に複写できること
内閣府のウェブサイトにアップロードされた官報データにつき、閲覧者のコンピュータの記録媒体に複写(ダウンロード)できることが必要であり、電子証明書や官職証明書と分離することができない状態でなければならない(官報の発行に関する法律第5条第5項)。
この点、従前の「インターネット版官報」は1頁単位でPDFファイルが構成されており冊子単位でダウンロードすることができないこと、従前の「インターネット版官報」を閲覧するための目次は種別ごとに分けて表示され一覧性のある目次が表示されていないことが利便性を低下させていたが、 これらの点については、いずれも改修済みであり、電子官報にも活かされる。
この官報データを複写したものも法的に「官報」として取り扱われる(官報の発行に関する法律第12条)。
継続的な閲覧
内閣府のウェブサイトに官報データをアップロードした時点から起算して、閲覧・複写をするために必要かつ適当な期間として90日(閲覧期間)が経過するまでの間、継続してアップロードする必要がある(官報の発行に関する法律第8条第1項、内閣府令第15条)。
また、次の事項については、90日の閲覧期間が経過後も継続して内閣府のウェブサイトに掲載することにより公衆が閲覧できるようにする必要がある(官報の発行に関する法律第8条第4項、内閣府令第18条)。
法令
電磁的官報記録(専用サーバにアップロードされた官報データ)のうち次のいずれにも該当しないもの
① 個人の氏名及び住所、生年月日その他個人に関する情報が含まれる事項であって、当該事項を内閣府のウェブサイトを利用して公衆が無期限に閲覧することができる状態に置くことにより当該個人のプライバシーの確保に支障が生ずるおそれがあると認められるもの
② ①のほか、特定の名あて人に対する処分、通知その他の行政庁の行為に関する事項であって、当該行為の性質に照らして当該事項を内閣府のウェブサイトを利用して公衆が無期限に閲覧することができる状態に置くことにより当該名あて人又はその関係者のプライバシーの確保に支障が生ずるおそれがあると認められるもの
③ ①②のほか、特別の理由により内閣府のウェブサイトを利用して公衆が無期限に閲覧することができる状態に置くことに特に支障があると認められる事項
裏を返せば、個人や処分の名宛人又はその関係者のプライバシーの確保に支障が生じるおそれが認められるものは、90日間しかアップロードされないことになる。
このプライバシー確保のためだと思われるが、電子官報を発行する主体である内閣総理大臣以外の者が、電磁的官報記録(専用サーバにアップロードされた官報データ)の全部が記録されたデータベース(電磁的官報記録の全部を含む情報の集合物であって、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの)であって、当該データベースに記録された情報が他に提供されることが予定されているものを構成しようとするときは、内閣総理大臣の承認を受けなければならず、当該承認を受けずに当該データベースを構成すると30万円以下の罰金刑に処される可能性がある(官報の発行に関する法律第16条、第19条第2号)。
【参考】承認&取消しのプロセス
①申請書&事業計画書の提出(内閣府令第42条第1項)
②事業計画書の基準適合性の確認(同条第2項)
(1) データベースに記録された情報の正確性の確保その他の当該データベースの利用における安全性及び信頼性の確保に関する措置を講ずること
(2) データベースに記録された第18条各号に掲げる事項の提供に際して同条各号の支障が生じないよう配慮することとされていること
③基準適合性の継続的確認と取消し(同条第3項)
事業計画書に従ったデータベースの構成及び当該データベースに記録された情報の提供を実施していないと認める場合、当該承認を取り消すことができる
以上
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