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「知る」から始まる、コンサルティング

保険コンサルタントには、さまざまなタイプが存在することをご存じでしょうか。

大きく分けて、数字からアプローチするタイプと、人からアプローチするタイプ。

前者は、経営状況や決算書などの数字をもとに分析を行い、将来について一緒に考えながら、クライアントと共に問題解決に取り組みます。

後者は、お客様自身の歴史を深くお聴きし、その方がどのような価値観をお持ちなのかを知ることから始め、その上で会社の経営状況を伺い、さまざまな問題解決の支援を行っていきます。

私は、後者のアプローチを取ることが多いです。

深くその人物に迫る質問をする中で、「そんなことを聞いてどうするの」「あなたは保険のことだけしていればいい」と言う方もいらっしゃれば、「あなたみたいな人は他にいない」「面白い」と褒めてくださる方もいます。

私がお客様の人生に興味を持つ理由は、そこに多くのヒントが隠されているから。原点に立ち返り、深層心理に触れることで、より良い未来を築けると信じているからです。

今回は、これまでの経験を振り返りながら、私の仕事への思いや、特に会社を経営されているお客様との関わり方についてお話しします。



本当の想い、真の望みを聞き出すメンター

真っ暗な部屋にろうそくを灯すように、洞窟で光が差し込むことで出口が見えるように、人々に希望を与える存在になりたい。

私は、その想いでお客様と向き合っています。

例えば企業が成長するためには、社長の想いや理念を言語化し、組織全体に浸透させないといけません。しかしそれは、想像以上に難しく、一筋縄ではいかないものです。

そのため私は、4つのステップでお客様を支援します。

1.真の望みを聞き出す
将来のビジョンを一緒に築くため、壁打ちセッションを行いながら相手の話にしっかりと耳を傾けます。

2.想いを言語化していく
具体的には、「5年後、10年後にどのような会社に成長させたいか」「社員とはどのように働いていたいか」「周囲からはどのように認識されていたいか」そして、「どのような気持ちで日々を送りたいか」など、できる限り詳細に話し合います。

3.考えや思考を整理する
自分の想いを言葉にすることで、「自分は本当はこうしたいんだ」という気づきにつながり、具体的な行動へとつなげる手助けにもなります。

4.課題解決の伴走支援
売上、利益、資金繰り、採用、教育、事業継承など、その会社が抱える具体的な課題に合わせて、伴走支援を進めていきます。

目の前の暗闇を照らす、道しるべとなれるように

お客様自身の歴史を深く理解した上で支援を行うことを大切にしている私が、お客様とどのようなやり取りをしているのか、具体的な例をいくつかご紹介したいと思います。

エピソード1

とあるタイヤ販売事業を行う企業から、経営計画作成に伴い伴走支援を依頼されたときのお話です。

1.真の望みを聞き出す
社長とお会いし、ビジョンや理念の設定といった基本的な要素に加え、「企業が将来どのような存在になりたいか」という深い部分に焦点を当てて話を聴かせていただきました。

会話の中で、先代から引き継がれた仕事に対する考え方や地域貢献への取り組みについて話が出ましたが、社長の真の望みについて深掘りして聴かせていただきました。

2.想いを言語化していく
この問題を解決するために、私は壁打ちセッションを提案します。「企業が目指す姿」「社会に伝えたい価値観」「将来の社員がどのような状態であるべきか」など、年収や家族との関係も含めて詳細を聞き出す作業を行ったのです。

結果的に、「日本一のタイヤショップになる」というビジョンが掲げられました。このビジョンの実現に向け、チーム全体が一丸となるために経営計画書の冒頭には社長のメッセージを掲載することにしました。

このメッセージには、「人は変われる」という社長の強い信念が込められています。

3.考えや思考を整理する
社長は26歳で創業者であるお父様から、突然、社長の座を譲り受けました。代表を交代した当初、古くからいる社員さんから支持してもらえない時期があったそうです。しかし、多様な背景を持つ人たちと共に働く中で、徐々に共感してもらえるようになり、距離も縮まっていきました。

社長の思考が整理された結果、他人からの言葉や過去の出来事にとらわれず、まず自らが社員を信じる事の大切さに気づかれ、自己変革に取り組み、今では社員の幸せを心から創りたいと思われています。

この、社長の想いの奥底にある心の声にたどり着くまで、何度も対話を重ねました。明確な目標と社長の率直なメッセージが掲載されたことで、経営計画書はより具体的で実行可能な行動指針となりました。

4.課題解決の伴走支援
これは、思考を言語化して整理する「メンタルコンディショニング」を重視する私独自の伴走スタイルです。このアプローチにより、経営計画書はただの文書ではなく、組織全体が共感し、動き出すための魔法の書となったのです。

エピソード2

次は、ゴルフ場の芝の交換を専門に行っている会社の社長さんと、数多くの会社のメンターとして活躍されているY先生とのやりとりです。Y先生は、私のメンターでもあります。

ステップ内容は少し違いますが、第三者が介入し新たな価値が生まれた事例です。

1.課題を聞き出す
ゴルフ場の芝の張り替えを専門に行っている関西の法人さんとのやりとりです。その会社は代々続く老舗企業でしたが、慢性的な採用難で人手不足に陥っていました。さらに海外から安価な芝が輸入され、これまで長期に渡り取引をしてきた歴史あるゴルフ場でさえも低価格な芝に張り替えていくようになりました。

2.思考を整理し、想いを言語化していく
社長は「この仕事は3Kだし、人もこない。もうこの仕事には将来がない」と嘆きました。それに対し師匠は、「これはゴルフ文化そのものが危ぶまれる状態では?」と考え、話をしました。すると社長は「ゴルフ業界全体に影響を及ぼす深刻な問題だ」と認識を変えたのです。

なぜならば、海外の安価な芝は、芝の向きが皆同じで、ゴルフボールの転がり方が分からないという問題があります。ゴルフは紳士のスポーツとしての歴史が深く、芝を読むことはこのスポーツの魅力的な要素です。しかし、こういった事が形骸化している現状から、ゴルフ文化自体の危機だと理解したのです。

3.課題解決の伴走支援
この状況を目の前にして、「プロを目指している練習生やゴルフ愛好家たちに現状を伝え、『一緒にゴルフの文化を守ろう!』と働きかければ、人は集まるんじゃないか?」と提案したそうです。専務がその案に乗り、求人をかけたところ、瞬く間に人が集まりました。

これにより、芝の張り替えを通じて日本のゴルフ文化を守るという新たなビジョンが生まれ、ゴルフ好きが志を同じくして活動を始めることになったのです。

業界全体に閉塞感が漂う中、第三者の介入によって見過ごされていた価値や新たな可能性が浮かび上がり、これが大きな転換点となりました。

私は、このように企業や個人に希望を伝えたいと思っています。

真っ暗な部屋にろうそくを灯すように、または洞窟の中で光が射し込むことで出口が見えるように、人に希望を与える存在になりたい。

この願いは、もしかすると妻の病気の経験が影響しているのかもしれません。その経験が、私の動機付けや価値観に深く関わっていると、自分ではそう思っています。

希望を持つことの大切さ

妻の闘病中のことでした。

治療の選択肢がなくなったと言われた際には、最先端の治療法を見つけ出し、次の抗がん剤がないと言われたときには、適切な情報を得るために努力をしました。

出口の見えないトンネルの中にいても、このようにして、常に目線を下向きから上向きに変えるよう努めてきました。

そうやって希望を持つことで、新たなチャレンジが可能となり、行動を起こす力と生きる勇気が湧いてくるのです。

現代は企業にとって非常に厳しい時代で、特に中小企業では多くの会社が倒産しています。

中小企業の社長は、人生を賭けて事業を運営しており、しばしば家族も連帯保証に加わっているため、借金が返済できなくなると、その影響は家族にも及びます。

そういった中でも、実際に相談できる相手がいないというのが現実です。

例えば、税理士の先生は社長の身近にいますが、実際には、会社のビジョンや社長の悩みなどに寄り添っている方にはほとんどお会いしたことがありません。

多くの社長が、実際には一人で戦っています。

そんな状況の中で、私が社長の横で一緒に歩き、希望に向かって、伴走して支援できれば、それは社長にとって大きな支えとなると信じています。

また、そうすることで私自身も大きなやりがいを感じることができます。これこそが、私の伴走支援のスタイルなのです。

「ありがとう」の言葉が私の原動力です

私は、その人が人生でどのような経験をしてきて、何を考えて現在があるのかを知りたいと思っています。

そのやり取りを通じて信頼関係を築き、「頼んでよかった」と言っていただけることが、本当の繋がりだと信じ、そのために挑戦しています。

「自分の人生でこれほどまでに聞いてくれたのは、あなただけです」「創業時の気持ちを思い起こさせてくれてありがとう」と言っていただけることが、私にとっての大きな価値です。

それが、私がこの仕事において大切にしている考え方であり、私は、「ありがとう」を原動力にして力を発揮する、中小企業支援士なのです。


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