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モンスターの系統分類

 系統分類学とは、生物間の類縁関係を調べることで各生物を系統的に分類する学問であり、生物学の基礎をなす分野の一つである。系統分類学は、1735年に自然科学者であるリンネの著書『自然の体系』(Systema Naturae 第1版)によって、生物を階層的に分類する仕組みとして提唱され、今日まで進歩を続けている。

 現在の系統分類学には、
・生物のゲノム配列の比較解析によって得られた情報を基にする分子系統
・比較解剖・比較発生学などによって得られた形態情報を基に分類する方法
の、大きく二つの方法がある。
 一般的に、前者による分類は後者による分類よりもコンセンサスが得られる場合が多い。しかしながら、絶滅した生物の多くはゲノム情報が消失しているため、後者による分類に頼らざるを得ない。

図1. 爬虫類におけるカメの系統的位置
a, b は形態情報に基づいた系統樹。c はゲノム情報に基づいた分子系統樹。a,b および c では、カメの系統的位置がそれぞれ異なる。この違いは、カメが「甲」や「無弓型の頭蓋骨」といった独自の形態的特徴をもつことに起因する。図はBRH JT生命誌研究館のサイト内のものを一部改変。

 モンスターハンターシリーズに登場するモンスターが、何の情報に基づいて分類されているかは明記されていないが、おそらく形態情報に基づいているものと思われる(メタ的発言になってしまいますが、ゲーム内モンスターのゲノム情報なんてあるわけないですからね・・・)。
 本稿では、モンスターの形態進化の考察に先駆け、モンハンシリーズを代表する4つの竜グループ(飛竜・鳥竜・獣竜・牙竜 ※海竜は除く)の系統的位置を、実在する(した)生物のそれと比較する。

図2. モンハンシリーズに登場する竜群の系統的位置
飛竜系統は竜脚亜目(ピンクの四角)に属する。実在した竜脚亜目の系統として、テコドントサウルスやディプロドクス類、マクロナリア類が挙げられる。鳥竜系統は鳥脚亜目(緑の四角)に属する。実在した鳥脚亜目の系統として、イグアノドンやパラサウロロフスなどが挙げられる。本来、鳥脚亜目は鳥盤目に含まれる系統であり、竜盤目に含まれている理由は不明である。獣竜系統は獣脚亜目(水色の四角)に属する。実在する(した)獣脚亜目の系統として、アロサウルスやティラノサウルス、スピノサウルス、鳥類が挙げられる。牙竜系統はすべて四脚亜目(オレンジの四角)に属する。四脚亜目はモンハンのモンスターのみで構成される独自の系統である。系統樹はモンスターハンター大辞典 Wikiのものを一部改変。

 本稿では、モンハンに登場する飛竜、鳥竜、獣竜および牙竜の系統的位置を紹介し、実在する(した)生物たちのそれと比較した。系統樹を参照すれば、4つの竜グループが亜目レベルで分かれていることが分かる。翼をもつ飛竜および鳥竜は、それぞれ竜脚亜目と鳥脚亜目から出現していることから、飛竜および一部の鳥竜がもつ翼は、2つの亜目内で独立に進化したと考えるのが妥当である。モンスターの系統分類を理解することは、各モンスターの形態的特徴がいかにして進化してきたかを理解するための一助になるだろう。


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