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covid-19の日々


コロナ禍の中、母が有料老人ホームに入居して1年ほど経った、
2022年2月。
施設長から電話があった。
職員がコロナに感染したと言う。
私はかなり慌てた。
オミクロン株と呼ばれる変異株が、流行し始めていた。初期の株より、症状は軽そうだという話だったが、高齢者には死亡者もまだまだ多く出ていたし、何より母はワクチンを打っていない。
新しいタイプのワクチンは、因果関係はよくわからないものの、接種後に亡くなる方もいて、どれほどの効果があるのかも不明で、超高齢者には、どのような副反応が出るのかもわからない。施設の医者からの助言もなく、本当に迷いに迷った挙句、接種しない決断を私が下した。
私の決断は間違っていたのではないか。もし母が感染したら、命に関わる事態になるのではないか。
その職員は、発熱する2日前から休みで、施設には来ていない。今流行の株の特性から見ると、潜伏期間は2、3日なので、現時点で、他の人に感染している可能性は低いのではないか、と保健所の人から言われたとのことだった。
もちろん、何日か様子を注視します。
施設長はそう言った。

その何日かの間、かなり心配したが、幸運にも他に感染者は出なかった。
が、玄関先での面会に行くのも、怖くなった。もし、私が感染していたら。無症状の場合もあるという。知らずに私がウイルスを持ち込んで、母のみならず、他の方たちにまで迷惑をかけるようなことになったら。
施設側からは特に細かい指示は無かったが、回数を控えて、距離をとり、顔を見るくらいの短時間で切り上げることにした。
寂しがる母の顔を見るのは辛かったが、仕方なかった。
コロナ禍はいつまで続くのか、
こんな不自由な状況を、いつまで我慢しなければならないのか、
何故、今なのだろうか。
毎日、感染者数の数字に一喜一憂しながら、気の晴れない日々だった。

2022年8月。
施設長からの電話に、またもや私は息を呑んだ。
入居者に感染者が出たとの話だった。
発熱があった入居者がコロナと診断され、施設の人たち全員を検査した結果、当人以外、母を含めた入居者2人が陽性だったと言う。
今のところ、症状はないとのことだった。
またもや、ワクチン未接種が悔やまれた。
やはり最悪のことが頭をよぎる。
高齢ゆえの、合併症の可能性もある。
今後、発熱するのだろうか。
医療機関は逼迫している。
もし重篤な状態になっても、入院さえ出来ないのではないか。

隔離生活が始まった。モルヌピラビルという、特別に承認された薬を、処方してもらえると施設長は言った。
10日間ほど、部屋から出られない。
施設長が泊まり込みで、様子をみてくれるとのことだった。
施設長は毎日、写真や動画付きのLINEを送って来て、様子を知らせてくれた。お忙しい中の心遣いは、とても嬉しかった。
様子がわかると、取り敢えずは安心出来る。
発熱はしなかった。咳や他の症状も無いらしい。それでも何日かは気が気ではなかった。
毎日、動画の母の顔をまじまじ見つめ、顔が少し浮腫んでいるとか、ご機嫌斜めとか、細かい事が気になって、1日の終わりは祈りにも似た気持ちで、明日の母の無事を願った。

10日ほどで隔離生活は終了となった。結局発熱もせず、少し痰が絡んだくらいだった。食欲も落ちずに、無事乗り越えられた。
薬が効いたのか、その程度のものだったのかはわからないが、他の2人も元気だという。
最後の方は、動画の中の母の様子が面白くて、笑える余裕もあった。

コロナ、
covid-19が、世界中を席巻していたあの日々の渦中にあって、もちろん、誰しもが無関係ではいられなかったし、それぞれの苦難もあったと思うが、特に医療、介護の現場の方々のご苦労は大変なものであったと思う。
改めてお礼を申し上げたい。

最後に、

施設長からのLINE
母のお言葉である。


アメリカ製のお薬は、かなり飲みづらかったようである。


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