四条通とひとりぼっち
「そんなことのためにね、生まれてきたん違いますよ。戦争いうてね、憎み合うために生まれてきたんちゃいますよ。」
四条通には左翼系の演説が響く。オーディエンスは残念ながらなし。正直人々は自分たちのことに目を向けるのが精一杯で、
それどころではないようだった。やはり戦争のために生まれてきてはいなかった。
今日も私は四条通を歩く。
もうすぐ12月だ。
クリスマスソングが流れる街中。
溢れかえるのは日本人のカップルだけではない2023の四条通。パンデミック前よりも活気のある街。京都。
喧嘩?してる?そんなカップルさえもはや羨ましい。
誰かの会話で呼ばれた自分の名前。いるよな、カノンなんてどこにも。
「旅先で手を繋いでいるカップルを見るともはや神秘を感じる」
と友達は言ってたのを思い出した。普段カップルに対しての羨望的な自分の中の意見を否定に変えることしかできていなかったので、
共感しすぎて軽くスルーしてしまうほどだった。
旅先でもこんなに二人の世界で、手を繋いで歩いていられるのは、確かに本当に幸せだと思った。
自分の国、もしくはどこかで出会って、それで東アジアの端でデートをしているんでしょう?
神秘である。
自分の中に目を向けると、誰かと手を繋いで旅をするほど成熟していなかった。いや、それは誰にも、どんなライフステージの
人にも許されているはずのことだと思うけれど、許されていない、と感じる気持ちが強かった。
こんなに若くて、一番輝いているときなのに。
人と関わるのも、自分を繕ってやっとのことだし、もはや何が本当の自分かはわからない。
なるべくポジティブに振る舞うけれど、「あなたはどうせ色々と充実していて、ひとりぼっちじゃないんでしょう」という
気持ちがよぎる。もはやこの自分のネガティビティを知られたら、嫌われてしまうと思い、もう自分を曝け出すなんてできないような気がしている。
とにかく今は、そう言う気分なんですよ。真っ直ぐ京阪沿線に向かって、家に帰ろう。今日も私は街の端で燻っている。