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可愛い子には変化をさせよ〜シン・手ぶくろを買いに〜

「おかあさん…さむいよ…おててが痛いよ…」

冬の朝。子ギツネの手は、霜焼けができて、真っ赤に腫れあがっていた。

「かわいそうに…」

母ギツネは、子ギツネの手を包み込む。

キツネ界には昔、「らいふはっく」があった。

「子ギツネの手を人間の手に変化へんげさせ、街に降りて手ぶくろを買いに行く」

今は「せきゅりてぃ」が厳しいので、無理そうだ。

「あれを、使う時だわ」

母ギツネは巣の奥から、長方形のツルツルした黒い板を持ってきた。

「なあに、それ」

「いいから、見てて」

母ギツネは黒い板をペタペタと触り始めた。
黒い板が一気に色をなし始め、触るごとに変化を見せた。

しばらくして、母ギツネが「完成」と言う。

子ギツネには、全く何のことか分からなかった。
母ギツネが見せてきた板には、キツネ耳をつけた少女が写っていた。

「何か、板に向かって、しゃべってみて」
母ギツネが促す。

「ええ…こ….コンにちは…」

すると、ハートやキツネの小さな絵が画面に溢れた。

「『ぶいちゅーばー』になって『すぱちゃ』をもらうに限るわね…」
「おかあさん、さっきから何言ってるか、全然わかんないよ」

すると、母キツネは微笑んで言った。

「人間も変化へんげする時代よ」


(母ギツネ、何者なんだ…)

これは、田原にかさんの「#毎週ショートショートnote」の裏お題に参加させてもらったものである。

ちなみに表のお題は「残り物には懺悔がある」である。こちらにも参加させてもらってる。



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