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「内なる差別意識と向き合う」
ラジオを何気なく聴いていて、ちょっとした違和感が残る場面があったので、書き留めておこうと思う。
MBSラジオで放送されている深夜のトーク番組。メインを担う極楽とんぼ・加藤浩次がプライベートでのショッピングで経験した「ちょっとした違和感」をエピソードトークとして披露していた。
ざっとまとめると、「大型家具店の店員がベッドで居眠りをしていたため買う気をなくした」という内容なのだが、加藤のテンポの良いトークにスタジオは湧いていた。
そのトーク自体は、別段問題はない。せっかく足を運んだ家具店であろうことか店員が商品であるベッドに堂々と寝転がっていたのでは、弾んだショッピング気分もしぼんでしまうだろう。
問題はここからだ。
加藤のトークに相槌を打つように、レギュラーメンバーの元ジャニーズ系タレントが質問したのである。
「……日本人ですか?」
質問の主語は明らかに、ベッドで眠っていた店員だ。要するにジャニーズ系タレントは、家具店の店員が日本人だったのかと加藤に問いかけているのである。
お気づきだろうか。
家具店の店員の国籍とトークの内容は、本来何の関係もない。店員が日本人であろうとアメリカ人であろうとフランス人であろうと、あるいはエチオピア人であろうと、「家具店の店員」である限り、トークの本質には何ら影響しないはずだ。
にもかかわらず、ジャニーズ系タレントは言葉を差しはさんだ。短い相槌を打つことによって、「家具店の店員が日本人である」という点を際立たせようとしたのである。
(店員が日本人か?)という問いかけの根底には、根深い差別意識がある。
なぜなら上記の問いかけは取りも直さず、「外国人ならば多少ルールが通用しなくても仕方ない」ということを前提にしているからだ。
その前提が根本から誤っていることは、賢明な読者の方ならばおわかりいただけるだろう。先ほども触れたように、家具店の店員がどこの国の生まれだろうと本質的な問題はないからだ。
おそらく、件のジャニーズ系タレントは無意識のうちに(あるいは意識的に)外国人を「ルールを理解できなくても仕方のない存在」として認識し、日本人とは本質的に異なる「ソトの人間」として位置づけているのだろう。
だからこそ彼は、「(店員は)女性ですか?」とは聞かなかったのだ。
「店員は日本人ですか?」という問いかけの裏には、(日本人ならばそんなルール違反を犯すはずがない)という意識がある。
言うまでもなく、それもまた差別意識の表れだ。
(日本人ならば……)と(外国人ならば……)という意識は、「ウチとソト」に分ける論理において表裏一体だからである。
テレビで時折見かける「日本スゴイ系番組」が薄気味悪く感じられるのは、その根底に「ウチとソト」の論理が透けて見えるからだ。
ラジオ番組では元ジャニーズ系タレントの発言をことさらに問題視することなく、普段通りにコーナーが進行された。
その意味では、私の指摘はいささか理屈っぽいのかもしれないし、いちゃもんに近いのかもしれない。
しかしながら、まがりなりにも言葉のプロとしてはわずかな違和感も見過ごすことはできないのだ。
「内なる差別意識」の基本構造については、こちらの書籍がわかりやすい。
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