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「ますだおかだはなぜ(松竹の中川家)になれなかったのか」

中村計著「笑い神 M-1、その純情と狂気」読了。2000年から始まった漫才の頂上決戦「M-1グランプリ」を軸に、笑い飯、千鳥、ブラックマヨネーズなど歴戦の勇者たちの栄光と葛藤を克明に記録したドキュメンタリー。

笑い飯をはじめ、吉本芸人のルポルタージュが綴られる中で、ますだおかだの記録が出色だった。「M-1」の歴史においては数少ない松竹芸能所属のコンビということで、当時は差別と偏見がかなり強かったようだ。「非吉本」という重圧を見事にはねのけ、ますだおかだは2002年のM-1でチャンピオンの座に就く。

その後、彼らは実力派漫才コンビとしてブレイクし、現在まで安定したポジションを築くことになるのだが、「非吉本」の栄冠に苦虫を嚙み潰し、2003年以降のM-1でスタッフたちにプレッシャーをかけた吉本サイドの動きは、あまりにも見苦しい。

2004年はアンタッチャブルの優勝で幕を閉じたものの、それ以降は2009年のサンドウィッチマンまで、吉本芸人の優勝が続いている。

M-1が国民的なエンタメと化した現在ならいざ知らず、「M-1=吉本」であった黎明期にはファイナリストはおろかチャンピオンでさえも、吉本の「見えざる思惑」がはたらいていたのではないだろうか。

「非吉本」ということなら、アンタッチャブルも詳しく取り上げてほしかった。

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