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「気まぐれドラマレビュー」

久しぶりに、地上波の連ドラを見た。

フジテレビ金曜夜9時「イップス」。篠原涼子・バカリズムがタッグを組むという、夢のような豪華ドラマである。「刑事コロンボ」、「古畑任三郎」の系譜を受け継ぐ倒叙型ミステリー(犯人が最初にわかるミステリー)である点も興味をそそられる。

ただ、そのうえで第1話をチェックすると……いささか期待はずれだった印象が否めない。

以下、その理由を簡潔にまとめてみた。

1、 犯人に魅力がない

「古畑任三郎」は犯人役のラインナップが大きなキーポイントであった。中森明菜、明石家さんま、木村拓哉、福山雅治……時代を彩る豪華キャストが毎回犯人を演じ、天才刑事・古畑任三郎と渡り合ってきた。ネームバリューはもちろんのこと、山城新伍や菅原文太など、「この人が犯人を演じるの?」という意外性もまた、「古畑任三郎」を支える大きな魅力だったはずだ。

もちろん、犯人そのものの魅力もはずせない要素である。古畑の犯人たちは皆切れ者で、策士であった。だからこそ、老獪にして飄々とした古畑と時として対等に息詰まる攻防を演じることができたのだ。

その点、「イップス」は物足りない。第1話のゲスト(犯人)はトリンドル玲奈で、元アイドルのサウナ熱波師という設定なのだが、キャラクターが充分に掘り下げられていないため、今ひとつ感情移入できないのである。

古畑の犯人は時に狡猾で傲慢でありながら、どこか人間くさく可愛げがあった。古畑と対峙する彼らは単なる殺人者ではなく、ひとりの人間として血の通った振る舞いを見せていた。だからこそ、「古畑任三郎」は良質な人間ドラマとしても成立していたのである。1話45分という限られた時間の中で犯人を立体的に描き、魅力的な人物として描き出したのは三谷幸喜の手腕と言えるだろう。

トリンドル玲奈が悪いとは言わないが、表の人物設定以外には伝わるものがなく、キャラクター造形が平面的である印象が否めない。

さらに言えば、ネームバリューもある程度ほしいところだ。今でいえば広瀬すずや長澤まさみ、ベテランでは天海祐希といったところか。

2、 犯人との掛け合いがない

ミステリーの醍醐味は刑事(あるいは探偵)と犯人の掛け合いである。倒叙型ミステリーでは「どうやって犯人を追い詰めるか」に重点が置かれるから、必然的に犯人・刑事の心理戦の重要度は高まるはずだ。古畑任三郎と小清水弁護士(明石家さんま)との法廷での息詰まる攻防は現在でも名シーンの1つである。

「イップス」でも当然犯人との掛け合いらしきものはあるのだが、長くて3ターン程度で終わってしまうため、どうにも盛り上がりに欠けるのだ。肝心の自白シーンもあっさりしているため、やはり肩透かし感が否めない。

……とまあ、いろいろとマイナスばかり挙げてしまったが、久しぶりの倒叙型ミステリーだし、バカリズム主演ということで、最後までチェックするつもりである。

最終話のレビューもお楽しみに。

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