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青天の霹靂16(男同士の勝負)

「はい、終わり」
そう言って廉は、廉夏と、冬眞の間にパンフレットが差し込んだ。そして、冬眞に何かを投げる。
冬眞は、それを、左手でうまくキャッチをすると、それを確認することなく、冬眞は、廉に自分が抱えていた廉夏を廉に渡しキスをする。それに、廉は驚いた。
「ンゥ」
廉夏も驚いたように、目を見開く。
「早く行って来いよ」
廉は呆れたように言う。
「痛くなくなるおまじないです」
冬眞は、ウィンクする。それを、廉は呆れて見てた。そして、冬眞は何処かへ行く。
「ああ、我慢できなきゃ、廉さんに言って下さい」
「言っちゃって良いの? 今、案外感じちゃってるんだけど」
廉夏は股を合わせる。
「すいません。言わないで、下さい。お願いします」
冬眞が頭を下げると、廉は可笑しそうに笑う。
そう言って、冬眞はどこかにいく。
「どこいったの?」
廉は慣れた仕草で、廉夏をお姫様抱っこし、ソファーに下ろす。
「そのうちわかるさ。それより、我慢できるか?」
廉はそう言って笑うだけだった。
「我慢できます。冬眞をからかっただけって。廉兄、分かっているでしょ?」
「まぁな」
廉はそう言われて笑う。
「それより何?」
廉夏は首を傾げる。
冬眞のことを聞いていると、分かった廉は一言返す。
「すぐ分かる」
「あれ、これ、どうしたの?」
救急箱を指さす。
「お前達が、漫才している間に受付で借りてきた」
「廉兄、それやめて。私を著(イチジル)しく誤解してるわ」
「そうか? 俺は当っていると、思うがな」
「う~ん、だって、何か引っかかるフレーズがあった気がするんだよね」
「気のせいだろう」
あまりにサラリと言われ廉夏もそうかもと思ってしまうのだった。
廉は、こちらも慣れた仕草で包帯を巻いていく。
「これは、かなり厳重にテーピングしないとな」
真っ青になり、腫れていた。
「うわ~、痛そう」
「って、お前じゃないか?」
廉は人事のように言う廉夏に思わず笑って突っ込んだ。
「う~ん、それが麻痺しちゃってるものだから、痛みが分からなかったりするんだよね」
「まぁ、今はその方がいいさ」
手当が終わり、包帯を巻いてると、冬眞が紙袋を下げ、戻ってくる。
「どうぞ。気に入って頂けるといいのですが?」
心配そうに、冬眞は紙袋を廉夏に渡す。
何か分からず、廉夏は袋の中を恐る恐るみる。
で、見た瞬間廉夏の目は輝く。そこには、白くて黒のリボンの付いた可愛い靴が入っていた。
「靴だ」
「ヒールがなくても、パーティに出てもおかしくなく、あんまり締め付けない靴にしました」
「かわいい。センスあるよ、冬眞」
「気に入ってもらえたようで良かったです」
本当に気に入ったのか、廉夏はさっそく履く。
「今度から、パーティには、この靴履く」
「気に行ってもらえたなら、良かった。その代わり、僕にご褒美を下さい」
「何? 私で上げられるもの?」
「廉夏からしか、もらえません」
「私で上げられるものなら良いよ」
それに、廉は苦笑いする。廉はそれが何だか、分かったようだ。だから、廉夏に対して、はまったなだった。
「では、失礼して」
冬眞はそう言うと、廉夏の肩に手を置き、廉夏の唇に口付ける。
それに、廉夏は驚く。
冬眞の口付けはだんだん濃厚なものへと、変わっていった。廉夏は冬眞の胸を叩くが、次第に力を失っていく。冬眞は廉夏を満喫したあと、口を離す。
「バカ」
可愛い文句である。
「こんなんじゃ、足りない」
そう言うと、廉夏から冬眞に飛び付くように口付ける。
歯があたる。
《ガチ》
「いじゃい」
涙目になる廉夏。それを見て、冬眞は笑う。
そして、冬眞は苦笑いしながら言う。
「勢いありすぎですよ、廉夏。やるなら、優しくね」
そう言って、冬眞は優しく口付ける。
それに、不満そうに、冬眞の口に舌を入れる。先程までは、濃厚とはいえ、冬眞は舌を入れなかった。
だから、それに、驚いて冬眞は後ろに下がろうとすると、がっちり廉夏が押さえる。
「行かせないよ」
「ちょっと、待った」
焦ったように冬眞は言う。
「待たないよ。冬眞は私が嫌い?」
そう涙目で、廉夏が問うと、冬眞は深くため息をつく。
「何回言えば、分かるんでしょうね、この子は?」
そうため息を付くと、突如角度を変える。
それに廉夏は反応する。
「ううん」
廉夏の口から、涎が垂れると、冬眞はそれを追う。
「もったいないから、溢(コボ)しちゃダメですよ」
「だって、冬眞すごく上手すぎだよ」
廉夏はポウッとしてる。
「廉夏、大丈夫ですか?」
「相当上手いらしいな」
廉が苦笑いで言うと、冬眞は答える。
「廉さん程じゃないですよ」
「そうかも、廉兄は綺麗な女の人、侍(ハベ)らして食いまくってるもんねぇ」
「侍らすは酷いんじゃないか?」
「でも、本当じゃん。でもでも、そんな廉兄にも可愛いところがあるんだな」
「それはどこですか?」
興味深そうに、冬眞が聞けば、
「廉兄は今でも亡くなったお母さんのことが好きなんだな。や~ね、マザコンよね」
そう言われて、廉は罰の悪そうな顔をする。でも、否定はしないから、あながち間違ってはいないのだろう。
でも、育った環境を考えると、マザコンで片付けて良いのか冬眞には、分からなかった。
でもでも、廉もその事に付いては、そ知らぬ顔をする。
「覚えとけよ、廉夏」
そう言われ、冬眞の後ろに回って、廉夏は隠れる。
冬眞は首だけ後ろに回して、
「よしよし、大丈夫ですよ」
廉の方を向いて笑う。
「僕の奥さんをあまり苛めないで下さいよ」
「苛められたのは、この場合、俺の方じゃないのか?」
「さぁ、何のことだか。でも、以外な弱点をありがとうございます、廉夏」
「弱点を手に入れても、このあとどうするんだ」
「そりゃあ、このあとの勝負に手心を加えてもらいます」
「手心加えられたと言う勝負で勝ってお前は嬉しいのか?」
「それを言われると、あまり嬉しくないかも」
「それより、どうやって勝敗を決めるんだ?」
「決め方は、一つあるじゃないですか? たぶん、廉さんと同じ考えですよ」
そう言って、冬眞は廉に口付ける。
その瞬間、周囲からは悲鳴が上がる。
「こうやってねぇ」
「当事者同士でやるね。これ以外が私は良かったねぇ」
廉は嫌そうな顔をする。
「でも、これが一番早くて、確実でしょ?」
「まぁな」
イヤそうに、廉は言う。
「でも、お前この場でやるか、普通?」
ここは人の往来がある場所だったからだ。
だから、悲鳴が上がった。
で、みんな目を反らせないのか、固唾を飲んで見守っている。
「やりますよ。どこでだって。男として好きな女に負けていると思われるのは心外ですからね」
冬眞は目を閉じ廉の肩に手を置く。
廉の口を暫く蹂躙(ジュウリン)していると、廉も嘆息し、目を閉じ、冬眞の舌に逆らうように、逆に蹂躙してくる。
冬眞がもう参ったと、唇を離そうとすると、今度は廉が離さなかった。廉は、笑いながら言った。
「逃げるなよ。もう少しやろうぜ」
何故か、それに掛け声をかけたのは廉夏だった。しかも、何故か廉夏はスマホをかざしている。
「良いぞ。もっとやれ、出来ることなら、もっと舌を絡めているところを」
それを聞いて、廉も止める。
「何で止めちゃうの?」
1人不満げに廉夏が言う。
「辞めて欲しくないのはお前だけだと思うぞ」
「えっ、そんなことないと思うけどな。ホラ」
そう言って、周囲を指差す。その途端、見ていた者達は、蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。
「あ~あ、いなくなっちゃった」
「ありがとうございました」
冬眞はそう言い、廉に財布を投げ返す。しかも、ちょっと強く。それに、廉は驚いた顔をするが、すぐ理由に気付く。どうやら、自分の妻に借りた金と言うのが、夫しては嫌だったようだ。
今回は教会が近くにあるってことで、廉夏が、冬眞に2度目の結婚式を挙げたいと、ワガママ言ったため、冬眞はスーツでは来れなかった。で、冬眞はそれは聞き、タキシードできたが、タキシードに財布が入らなかったから、仕方ないのに。こう言う場で、夫としてのプライドが、顔を出すか? 難儀な奴だな。ヤッターぐらいに思っておけば良いものを。
廉はそれがわかり肩を振るわせて笑う。
「若いね」
それを言われた冬眞は、顔を赤くする。それを見て、廉はさらに笑う。

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