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青天の霹靂9(掃除)

「廉夏嬢、どこから、やりますか?」
廉を送り出し、リビングに戻ってきて冬眞が聞くと、廉夏は何やら真剣な顔で、何かを捜している様子だった。
「あった」
それは、何の変哲もない、箱だった。廉夏はそれを開けると中の手紙だけだし、贈り物の部分はポイ捨てする。
そして、冬眞が戻っていることに気づくと、少しウナダレる。
「あっ、冬眞兄。仕事行けなくさせてごめんね」
廉夏は、冬眞に頭を下げるが、冬眞は笑って言う。
「元々の結婚休暇です。別に気にしないで下さい」
「でも、冬眞兄。仕事、大好きじゃん」
「仕事が好きなのは否定しませんが、このままの状態はね」
廉夏はグルリと顔を動かし、周囲を見る。
「やっぱ、駄目?」
「ええ」
冬眞はすぐ頷く。そして、その後質問する。
「確かに、でも社長直々に、掃除を仰せつかりましたから、今日は廉夏嬢といれます。ところで、一つお聞きしたいことがあるのですが、良いですか?」
そう言われ、廉夏はキョトンとする。
「何?」
廉夏は、割れた鏡や、どこかが欠けている櫛やら、藁人形たちをゴミ袋に入れていく。
その際、一つ一つ名前を呼んでいく。
初めは、ワラピーだった。
で、次は、ワラの助になり、ワラオ、ワラコ、ワラミ……ワラノシン、ワラゾウで、終わる。
さらには、いつの間にか、その藁人形達は、おめかししもしている。
いつやったんだ?
「なぜ廉夏ちゃんは、こんなに藁人形を可愛がるのですか?」
「う~ん、分からないか? そうかもね。冬眞兄は、当事者だもんね」
そう言われ、今度は冬眞が首を捻る。
「えっ?」
「だって、これって全部私が冬眞兄と結婚したから、送られてくる代物でしょ? と言うことは、ただ単に妬みってやつでしょ? 送ってくる人は、恨みを込めて、送ってくるんだろうけど、私にはただ焼いてるだけしか感じられない。だから、逆に命一杯ノロケられる代物なんだな。だから、捨てられなかっただけだったりして。でも、おじいちゃんがあんなに、もろいとは、思わなかった」
「ま、それが豪造さんらしいと言えるのでは?」
「つまり、いつも突拍子もないことをやってしまうが、以外や以外メンタルは打たれ弱かったってやつね」
「早い話が、そうです」
なぜか二人の間で、豪造のことは、こうして話が付いた。
聞いたら、豪造は怒るに違いない。
でも、そんなこと露知らず、二人はとにかく、ゴミ袋に捨てる。
ゴミ袋15個で終わった。

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