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Who Are You?

いつもイラストを拝借している hanami🛸さんから、素敵なピアニストのし絵を提供いただいた。
彼は何者だろう。モデルになった人物はいるのか。妄想の輪が広がる。

見た目は完全に黒人である。ここはアメリカ出身と断じてしまおう。ンドゥドゥーゾ・マカティニとか言われても発音しにくいんで、知らなかったことにしておく(実際知らんけど)。

ピアノを弾くためやや前傾になっているが、姿勢はけっこう良さそうだ。
痩せぎすの細面ほそおもてでちょっとナイーブな雰囲気。小ぶりな体型からして、今の人とは考えにくい。
決め手はメガネで、そうなると相当絞られてくる。

わかった!セシル・テイラーだ。
にしちゃ、表情が優しすぎるか。テイラーさんだとおひげ生えてるのに、イラストの人物にそんな気配はないし。指の立て方からして、メロディ奏でてるようにしか思えんもんなぁ。
なんたってこのオッサンだと、あんたピアノに恨みあるんかいみたいな、ガギョガギョピンパコグギョギョーンな音になっちゃう。
ほなセシル・テイラーちゃうやないかい。

それとも、若き日のハービー・ハンコックだろうか。この人ならリッチな家庭に生まれ、幼少の頃にクラシックの教育を受けてる。黙っていてもにじみ出る知性は、イラストの彼に共通するんじゃないか。
11歳のときシカゴ交響楽団と共演し、モーツァルトのピアノ協奏曲第26番『戴冠式』を披露した天才少年だったというから、そういう時代のハービーに間違いない!

とは言えなぁ、逆境にあってもどこか陽気さを失わないかつての黒人プレイヤーのしなやかさが、hanami🛸イラストからは漂ってくるんだなぁ。
ハービーさんはジャズ・ロックやフュージョンのパイオニアなんだけど、ちょっと本来のジャズから離れていく過程が、挿し絵の人物からも遠ざかっているような。
ほなハービー・ハンコックちゃうやないかい。

というわけで、やっぱりイラストのピアニストはビリー・ストレイホーンとなるわけである。
アメリカンジャズの作曲家、ピアニスト、作詞家、編曲家であり、天下無双のバンドリーダー、デューク・エリントンと30年近くを共にした人だ。

彼の作曲には「Take the 'A' Train」、「Chelsea Bridge」、「A Flower Is a Lovesome Thing」、「Lush Life」などがあり、目からよだれがいっぱいこぼれる名品だらけなんである。

当初はクラシック作曲家になろうとしたが、白人がほぼ完全に支配していたこの世界に黒人の入り込む余地はなく、挫折する。
差別は決して許されるものではないが、その後アート・テイタムやテディ・ウィルソンのようなピアニストの音楽に出会い、ジャズの世界へと導かれていったのだから、後世の我々にとってこれは奇禍きかとせねばなるまい。
ベートーヴェン32番で聴き手を圧倒するピアニストなら幾人もいるが、エリントンとのタッグから生み出される数々の珠玉の響きに、代えはいないのだ。
どジャズにならないエレガントなタッチは、西洋音楽を最初に志した残滓ざんしであろう。

「ビリー・ストレイホーンは私の右腕であり、私の左腕であり、私の頭の後ろにあるすべての目であり、彼の頭の中に私の脳波があり、私の頭の中に彼の脳波があった」とまでエリントンに言わしめた存在だった。
hanami🛸さんも、いいところに目をつけられたもんである。

え?違うんですか。
黒人じゃなくて、ちょっと日焼けしたダン池田ですって?
「オールスター家族対抗歌合戦」だったんかい。
ほなビリー・ストレイホーンちゃうやないかい。

イラスト hanami🛸
(最後のやり取りは私の頭の中だけの、妄想によるものです)

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