愚かなれど 我が心
以前から「メンヘラ」という言葉をよく目にするけど、どういう意味なのか大した関心も持たずにいた。きっとメルヘンチックな思考の持ち主を指す表現だろう、くらいに思っていた。
なんだ、全然違うじゃないか。「精神的に不安定な人」のことを言うのか。
ネットスラングというわけね。
では、語源とされるメンタルヘルスとは何か。
厚労省のここでの説明によれば、「近年、こころの病気は増えていて、生涯を通じて5人に1人がこころの病気にかかるともいわれています」と続く。
「気持ちが沈んだり、落ち込んだりすること」を「こころの病気」と定義するなら、そんなモンにならないで一生を過ごせる人の方が稀少なはずで、って言うかそんなヤツおらんだろと、フツーに思う。
さらに関係ないようだが、厚労省が「心」を「こころ」と平仮名で表記する意図はなんだろう。
担当者の中に、夏目漱石の愛読者でもいるのか。それとも単に、イメージで使い分けているのか。
あえて言葉に広がりを持たせたい文学や詩の世界と違い、ここは「心」と厳密に定義すべき気もするが、いかがなもんだろう。
それはさておき、心の浮き沈みを繰り返すうちその動揺にも慣れ、「人間なんてみんなそんなもん」くらいな認識が生まれることで、物事の一つひとつに動じなくなる。
それこそが、老いることの特典だろう。ある種の”鈍さ”が育つ見返りのように、生きることがラクになっていく。
だから重い心の病であれば、若い頃に死なない加減で患ってしまうのがいい。
理由は、”恋の病”と同じことだ。免疫をつけず齢ばかり重ねると、ご本人はともかく周囲が巻き込まれ、迷惑する。”愚か”であっても許されるのが、老いとは真逆の若さ故の特典だろう。
(なんて他人ごとみたいに書いているが、僕なんかけっこう”愚か”なままに生きてきて、今もって危ない自覚がある。さすがにもう、大丈夫かなあ)
若い頃であれば体力・気力充実している一方、金も名誉も、失うものだってそんなにないはずで、一途に対象と向き合って味わう不安や絶望は後々の人生の糧に、きっとなるはずだ。
ところが日本人の寿命が延びるのと比例して、中年以降に心の病にかかる人が増えている。
こうなると、なにかとしんどい。すでに組織の中で一定の地位もあれば、家庭を築いている人も多い。そこに小さな子供でもいたなら、自分のメンタルひとつで路頭に迷わせるわけにいかない、となる。
影響を受けるのが自分だけで済まなくなっているからますます抱え込み、そのこじらせ方もひどくなる。
気の毒な話だ。(明日に続く)
イラスト hanami🛸|ω・)و
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