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愚かなれど 我が心

以前から「メンヘラ」という言葉をよく目にするけど、どういう意味なのか大した関心も持たずにいた。きっとメルヘンチックな思考の持ち主を指す表現だろう、くらいに思っていた。

「メンヘラ」とは、「心に病や闇などの問題を抱えている人」を意味する言葉です。「メンタルヘルス(心の健康)」が語源であり、元々はインターネット上の掲示板で、メンタルヘルスに関する書き込みをする人を指していました。
転じて昨今では、実際に心の問題を抱えているかどうかにかかわらず、共通した性格や特徴を持つ人に対して使われる傾向にあります。「精神的に不安定な人」という意味で日常会話にも使われることがあり、本文では、こうした特徴を持つ人のことを指して「メンヘラ」と記載します。

小学館「Domani」公式サイト「メンヘラの正しい意味・由来は?職場にいるメンヘラ気質な人への対処法も」

なんだ、全然違うじゃないか。「精神的に不安定な人」のことを言うのか。
ネットスラングというわけね。
では、語源とされるメンタルヘルスとは何か。

メンタルヘルスとは体の健康ではなく、こころの健康状態を意味します。体が軽いとか、力が沸いてくるといった感覚と同じように、心が軽い、穏やかな気持ち、やる気が沸いてくるような気持ちの時は、こころが健康といえるでしょう。
しかし、だれでも気持ちが沈んだり、落ち込んだりすることはあります。日々の生活の中でストレスを感じることも少なくありません。気分が落ち込んだり、ストレスを感じることは自然なことですが、このような気分やストレスが続いてしまうと、こころの調子をくずしてしまう原因にもなります。さらにこころの不調は、周囲の人に気づかれにくく、自分からも伝えづらいため、回復に時間がかかってしまうこともあります。

厚生労働省「メンタルヘルスについて」

厚労省のここでの説明によれば、「近年、こころの病気は増えていて、生涯を通じて5人に1人がこころの病気にかかるともいわれています」と続く。

「気持ちが沈んだり、落ち込んだりすること」を「こころの病気」と定義するなら、そんなモンにならないで一生を過ごせる人の方が稀少きしょうなはずで、って言うかそんなヤツおらんだろと、フツーに思う。
さらに関係ないようだが、厚労省が「心」を「こころ」と平仮名で表記する意図はなんだろう。
担当者の中に、夏目漱石の愛読者でもいるのか。それとも単に、イメージで使い分けているのか。
あえて言葉に広がりを持たせたい文学や詩の世界と違い、ここは「心」と厳密に定義すべき気もするが、いかがなもんだろう。

それはさておき、心の浮き沈みを繰り返すうちその動揺にも慣れ、「人間なんてみんなそんなもん」くらいな認識が生まれることで、物事の一つひとつに動じなくなる。
それこそが、老いることの特典だろう。ある種の”鈍さ”が育つ見返りのように、生きることがラクになっていく。

だから重い心の病であれば、若い頃に死なない加減でわずらってしまうのがいい。
理由は、”恋の病”と同じことだ。免疫をつけずとしばかり重ねると、ご本人はともかく周囲が巻き込まれ、迷惑する。”愚か”であっても許されるのが、老いとは真逆の若さゆえの特典だろう。
(なんて他人ごとみたいに書いているが、僕なんかけっこう”愚か”なままに生きてきて、今もって危ない自覚がある。さすがにもう、大丈夫かなあ)

若い頃であれば体力・気力充実している一方、金も名誉も、失うものだってそんなにないはずで、一途いちずに対象と向き合って味わう不安や絶望は後々のちのちの人生のかてに、きっとなるはずだ。

ところが日本人の寿命が延びるのと比例して、中年以降に心の病にかかる人が増えている。
こうなると、なにかとしんどい。すでに組織の中で一定の地位もあれば、家庭を築いている人も多い。そこに小さな子供でもいたなら、自分のメンタルひとつで路頭に迷わせるわけにいかない、となる。

影響を受けるのが自分だけで済まなくなっているからますます抱え込み、そのこじらせ方もひどくなる。
気の毒な話だ。(明日に続く)

イラスト hanami🛸|ω・)و


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