ポチっとな
2024年11月現在、自民党と公明党の与党は過半数を割り込んでいる。最近の衆議院選挙で両党は議席を大幅に減らし、過半数を維持することができなかった。
この結果、与党の運営に大きな影響が生じる。野党が一つにまとまれば、すぐにでも政権が転覆しかねない綱渡りの状態が続くからだ。
自民党と公明党は、国民民主党との協力を模索し、政策協議を進める。
特に消費税の減税や社会保険料の軽減など、国民民主党が主張する政策について、協議が行われている最中だ。
その主な要求内容は、以下の通りとなる。
〇 消費税の減税
国民民主党は、消費税を一時的に5%に引き下げることを提案している。
物価高対策として実質賃金がプラスになるまでの間、消費税を減税することで国民の手取りを増やし、家計を支援すると主張する。
〇 社会保険料の軽減
国民民主党は、社会保険料の負担軽減を目指している。特に、現役世代の社会保険料負担を軽減するための政策を掲げている。
具体的には年齢ではなく、負担能力に応じた窓口負担の見直しや、公的保険の給付範囲の見直しとなる。
〇 所得税の減税
国民民主党は、所得税の減税も提案している。
基礎控除額を103万円から178万円に引き上げることで、年収500万円の場合、年間13万2000円の減税効果があるとの主張だ。
〇 エネルギー政策
国民民主党はエネルギー政策として、ガソリン代の負担軽減や再エネ賦課金の徴収停止を提案している。
安全基準を満たした原子力発電所の再稼働や、火力発電の高効率化による現実的なカーボンニュートラルの推進も掲げている。
〇 教育支援
教育支援に関して国民民主党は、「教育国債」を発行し、子育てや教育・科学技術予算を倍増することを提案している。
3歳から義務教育化し、高校までの授業料完全無償化や給食代・修学旅行費などの無償化も目指している。
〇 「トリガー条項」の凍結解除
国民民主党は、ガソリン税の上乗せ部分の課税を停止する「トリガー条項」の凍結解除を求めている。この条項は、ガソリン価格が一定の水準を超えた場合に、ガソリン税の一部を一時的に停止する仕組みだ。
具体的にはガソリン価格が高騰した際に、消費者の負担を軽減するために導入されたものになる。この条項の凍結解除を通じて、ガソリン価格の安定化と消費者の負担軽減を図ろうとしている。
僕たち庶民は税金の負担が重すぎると感じており、これが日常生活における大きな不満となっている。このような重税感を解消する施策として、国民民主党が掲げる要求のほとんどは、首肯できるものばかりだろう。
一方で、この要求が額面通り受け入れられるとは、現時点で誰も思わないはずだ。
おそらく与党側は財源の裏付けがないと主張し、財政健全化を重視しているため、財源が確保されていない政策は受け入れにくいと回答を渋るだろう。
与党と国民民主党の間で政治的な駆け引きが行われ、要求を受け入れる代わりに、自党の政策を支持するよう求めるはずだ。与党の政策が優先されるため、競合する場合は優先順位が低くなるのが当然という理屈に立っている。
実際に国民民主党は22年、「トリガー条項」凍結解除を実現するため自公との政策協議を始め、同年度予算の採決で賛成に回るなど、野党として異例の対応に踏み切った。
その後も断続的に協議を続けたものの、自公が慎重姿勢を崩さなかったため、実現には至らず終わった。与党から完全にハメられた格好である。
代表自身も、今一つ腰が据わっていない。今回の要求はいかにも国民優先の政策ばかりだが、過去の彼の行動をみれば、主張が180度違うはずの地方の首長と野合したりもしている。
昨年は岸田文雄内閣や自民党の支持率低迷について、LGBTなど性的少数者への理解増進法の制定に伴う保守層離れがあると分析しながら、ご本人はアメリカの駐日大使とレインボーフラッグ(LGBTQ+の多様性を象徴する旗)を振って、街を行進したりもした。
確固としたポリシー、一貫性が感じられないのだ。
もしかすると、政治家に真っ当な人間性を求める方が間違っているのかもしれない。国民にとって益に資することであれば、実現に向け後押しするのは他を差し置いても当然だろう。
「トリガー条項」凍結解除一つとっても、財務省はガソリン税の減収が財政に与える影響を懸念しており、一貫して否定的な立場を示している。
その財務省のレクチャーを鵜吞みにする政治家やマスコミによって、実現性は薄いとの刷り込みばかりが、連日繰り返し報道されている。
彼らは、僕たち「国民」の仲間ではないらしい。
アメリカの大統領と政党が交代することが決まり、現在のおかしな駐日大使は今月いっぱいでご帰国の予定だ。後任になる大使は、おそらくこれまでと真逆な見解を示すことになるだろう。
アメリカのポチと呼ばれ、常に超大国に翻弄されることが日本の宿命のように思われているが、それとて相手のせいというより、主体性をまるで持たなくなった日本の側に、より多くの責任があるように思う。
この機会に、国民民主党が掲げた政策に関し、「国民」の仲間ではない側の見解に流されることなく、自らその良否を考えてみるべきかもしれない。
それは特定の政党を支持するという事でなく、一つ一つの政策の中身に、しっかり目を向けてみる習慣をつけることだろう。
いずれも僕たちの暮らしと国の未来に直結する、大きなテーマばかりだ。
イラスト Atelier hanami@はなのす