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ヨハン・ユスト・シューシャルト(Johann Just Schuchart :London. ca.1741-1753))破損したテナージョイントの修復記録 9

ジェームス・ウッドによる改造

シューシャルトのバスーンについて、ネットの記事を探していたら以下のようなことが判明しました。

この楽器はもともと4-Keyなのですが、19世紀ロンドンの木管楽器製作者、ジェームス・ウッドによって改造されたようです。

・Low E♭とF#キーの付加(あきらかにキーのデザインが違う)
・ウィングジョイントの南端は高ピッチ対応のため2度カット(その後延長された)

E♭キーは19世紀のもの、B♭、Dキーは18世紀ロンドンのデザイン
F#キーのデザインは19世紀のもの

これらはおそらくウッドの仕事だと推測できます。
その後オリジナルに近い長さに継ぎ足されていますが、この仕事がウッドによるものかは定かではありません。

真鍮部分と色の濃い部分が延長された

ジェームズ・ウッドは、1799年から1832年にかけてロンドンで活動した楽器製作者です。1799年には「楽器製作者」、1802年には「楽器商」として記録されており、1804年にはヘイルの後継者となりました。1821年には「ジャス・ウッド父子」として、1832年には息子のジョージが後継者となりました。

ウッドは、1810年頃に「ゴーディング、ダルメイン、ポッター、アンド・ウッド」(ゴーディングの項を参照)や「ゴーディング・ウッド・アンド・ Компаニー」のパートナーとして活動していました。レンダルによると、ウッドは「主にゴーディングやダルメインのために、大量の楽器を製造していました。これは、クラリネットやその他の楽器の型を見れば明らかです」。

また、1809年のブリタニカ百科事典には、「完全な調律のバソンは非常に少な​​い。バーカー(パーカーの誤植と思われる)、ウッド、ミルハウス(ミルハウスの誤植と思われる)、クレーマー製のものが一般的に好まれている」と記されています。どうやらウッドの楽器はうまく調律されていたようですが、19世紀に好まれた調律法、おそらくより平均律に近い音律を良しとした可能性もあるのでは、と想像します。

実際にシューシャルトに付加されたF#キーを使うとほぼ平均律のF#が得られます。

ウッドが製作した楽器は、現在以下の場所で見ることができます。
フルート: アメリカ合衆国ワシントンD.C. [8点]
フラジョレット: バーンコレクション
クラリネット: 英国ロンドン王立音楽院: 326 C/10 (12,000ポンド相当)
バソン: 英国オックスフォード: 321 (9,000ポンド相当)

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