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「殺し合いだということが、つくづくよく分かります」

8月25日 ロシア独立系メディア メデューサ:(3,729 文字)

ウクライナの森や畑は、地雷のせいで、ほとんど戦闘中と同じような状態です
ー地雷除去部隊の目を通して見る

4月、ウクライナは世界で最も地雷の多い国の一つとして認められた
国家緊急事態局(SES)は、地雷や不発弾が国土のほぼ半分を汚染している可能性があると見積もっている
内務省の予測では、8月中旬までに汚染された土地の完全な除去には、5年から10年かかる可能性があるという

最も地雷が多いのはキーウとチェルニヒウ州で、ロシア軍の撤退の後、4月上旬からこれまでに10万個以上の爆発物が除去された
ウクライナ人写真家パブロ・ドロヒは、メデューサの依頼で、地雷除去作業が行われているキーウ、チェルニヒウ、スームィ州を訪れ、その様子を伝えてくれた
そして、ウクライナ人ジャーナリストのヴァシル・カリナ氏が、ウクライナの地雷除去について、地雷除去部隊とともに語ってくれた

スームィ州の池

池の底の不発弾を調べなければならない
戦闘中に多くの砲弾が落ちている

チェルニヒウの森林地雷原
チェルニヒウへの道

これはブチャの近くの森です
グレネードのピンが葉っぱの間にかろうじて見えている
ローマ(キーウの救助隊の責任者)と私が話しているとき、文字通り道から15メートルほど離れたところで、彼は枝についているそれを見つけました
最初は何を言ってるかわかりませんでした

よく見ると、手榴弾のピンを見つけることができます

ローマは「この辺に手榴弾があるんだ」と言いました
30秒ほど静かに周りを見渡して、同じ木にズボンがぶら下がっているのを見つけました
ローマがナイフで慎重にズボンの裾を上げると、そこには手榴弾が仕掛けられていました
つまり、トラップでした
不意に裏切られて死んでいくような感じ...

ほんの30センチほどのところでした
私は簡単に引っかかったと実感しました
もし触れていたら、私たちは簡単に引き裂かれていたでしょう
最初はあまり危機感がありませんでした
しかし、このトラップに出会ってから、足元をよく見るようになりました
奇妙に見えるもの、逆に普通すぎるものにも注意するようになりました

白樺の樹皮に残る砲撃の傷跡
この「傷」が癒えるまでには、長い時間がかかるでしょう
地雷除去隊には、「戦闘一日、地雷除去一カ月」という方程式があるそうです
第二次世界大戦の不発弾が今でも見つかることがあります
この戦争によって、この場所はこれから長い間、閉ざされてしまいます

白樺の樹皮に残る砲撃の傷跡

イリヤ(ウクライナ国家緊急事態局 火工品課のチーフサッパー キーウ、ブチャ)

「地雷や不発弾について、その設置方法や撤去方法についての知識があれば、原則的には普通の仕事です
そうですね、もちろん怖いこともあります
大抵の場合、あるのかないのか分からない、トラップの印を探しています
恐怖心は常に持っているべきです
なぜなら、恐怖心がなければ、自分自身や周りの人、一緒に仕事をする人たちを傷つけてしまうからです
弾薬は5メートル先まで届くし、榴散弾なら200メートル先まで飛んでいくことをいつも意識していなければいけません
同僚だけでなく、一般市民にも被害が出る可能性があります」

砲撃の被害を受けたブチャ付近の森

自然と人間の行いの対比が印象的です
殺し合いだということがつくづくよく分かります
白いテープの外側では、爆弾処理班が残っている不発弾を処理します
ローマは、爆発で3人の花火師(爆弾処理係)がここで死んだと言いました
何かのせいで大爆発を起こし、三人の工兵がここで死んだそうです

Grudの砲撃で被弾している松の木

セルゲイ(国家非常事態省の爆弾処理班長 キーウ州、ヴォローゼン村)

「危険な場所には、赤い杭やテープ、『地雷』と書かれた看板などで目印をつけます
地元住民に、危険な地域であることを理解してもらうためです
現地の人が何かを見つけ、直接私たちのところへ、処理を依頼することもあります
しかし、戦利品として持ち帰ってるケースもあります」

野原を歩いてみたくても、それは厳禁です
ブチャ付近の道路沿いには赤い杭がよく見られます

ニコラス(国家非常事態省の爆弾処理班長 チェルニヒウ州、ヤゴドノエ村)

「5カ月前から、毎日朝8時のスタートです
部隊を分け、4〜5人ずつでそれぞれの担当エリアを進みます
32日前からヤゴドノエ村(3月3日から31日まで露軍に占領された)付近の森を進んでいます
ここで我が軍が、ロシアの兵器と弾薬を破壊しました
ここでは森が焼け野原になっているのがわかりますか?
全てが壊れ、散乱していました
目の届く範囲は、すでに全てクリアにしました
今は、金属探知機で弾薬を探す段階です
(爆発の破片が)飛び散ったときに、何かが地面に落ちたのかもしれません
1日に少しずつ、十数平方メートルから百数十平方メートルです
それで50個くらいの爆発物が見つかるんです
どの程度汚染されているかによりますが、一般的には、スピードではなく、クオリティーが重要です
このビジネスは、タイムリミットを決めません」

ヤゴドノエ村からほど近い場所の「どこでもドア」

ローマに何が怖かったかと尋ねてみた
「そう、怖かったのは、一番怖かったのは、家の中です
一番危険だったのは、イルピンの家屋処理でした
どこに死が待っているかわからなかった
どこでもあったんです」
ローマはグラスの中、洗濯機の中、人形の下の食器棚の中で手榴弾を発見したといいます
ロシアのスナイパーが活動していた痕跡のある部屋に入って、同僚が爆破されてしまったという
石膏の下に手榴弾の入ったペットボトルが隠されていたのだ

ブチャ近郊の森にある露軍キャンプ跡地

トラップや地雷、不発弾はこのような場所で発見されることが多い

「4月から爆弾処理班が撤去作業を続けているが、まだまだ課題は山積みです
残念なことに、地元の人たちはしばしば不注意な行動をとります
軍用機器を見つけ、鉄くずとして売ろうとするのです
普通の人々の話です
ある親子がグレネードランチャーを見つけ、父親が目を離しているときに、息子がボタンを押した…手榴弾が息子の頭に命中して…彼は殺されました」

セルゲイ

「家や壁に『泊めてくれてありがとう』『汚してごめんね』というような文字が書かれていることがあって驚きました
そして同時に、手榴弾やトラップワイヤも見つけました
トイレや子供用マットレスの下、ベッドの中からも手榴弾を発見しました
なぜロシア軍がこのようなことをするのか分からない」

このヒマワリに近づきたいが、またしても近づけない
白いテープの先は、地雷の危険な領域が広がっている
今は草が生い茂り、除去作業はとても無理な状態だ
地雷除去作業員たちは、緑が落ち着く秋を待っている

セルゲイ

「平和な住人たちは、キノコやベリーを摘むために森に行きます
牛を放牧する必要がある人もいる
林業業者はここが仕事場です
しかし、その領域が危険であることに変わりはないのです
地元住民による爆破事件が多発していて、多くの機材が弾薬を踏んで壊れています
マカリフスカ地域の爆発が一番多いです
最近も、森の中で女性がトラップに吹き飛ばされ、病院に運ばれる途中で死亡するという事件があった」

ブチャに向かう道沿いの地雷原

ロシア軍が撤退した後、畑に行ったトラクターがよく地雷で吹き飛ばされている
マスコミでもよく報道された

イリヤ

「まだまだ、やるべきことはたくさんあります
国全体で正式な人員は600人ほどしかいないんです
なので、今、スタッフを増員するために、新しい人材がトレーニングを受けているところです
そのため、車両や設備、保護具などが必要です
いくつかの国際機関が支援してくれていますし、私たちの部署でも装備や保護手段を購入しています
従来のスタッフでも(仕事に必要な)機材は不足しています
何でも消耗品です」

チェルニヒフの森での爆弾処理班の作業の様子

ニコライ

「金属探知機の使い方には順番があります
一人目が5メートル歩いて、その少し後、左か右に二人目が歩き始める
検出器が重ならないようにね
信号が鳴ったら、隊員は手を挙げて無線で同僚に伝える
ペグで印を付けて作業を開始する
他のメンバーは安全な場所に退避する
発見した砲弾を丁寧に掘り起こす
爆発物であれば(時には鉄くずを見つけることもある)慎重に処理して一時保管場所に持っていく
そして、ゴミ処理場で廃棄する」

チェルニヒウの森で隊員たちが集めた砲弾

砲弾の重さは40kgほど
手作業で運ぶ
常に気を張っていなければならず、体力的にもきつい仕事だ

イリヤ

「二、三年で引退できるでしょう
引退まで、地雷除去をして、そして人を育てます
いや、無駄ではないと思います
確かに、ドンバスではいい仕事をしたのに、この地域全体が再び地雷と砲弾に覆われてしまった
でも大丈夫、私たちは誰かの命を救ったのです
我々の仲間、民間人を、今、助けています
もちろん、再度攻められるのは困ります
そんなことにならないようにと願っています」

スームィのトロシュチャネツという町の近くの池

隊員たちやダイバーはここでも働いた
でも、まだ未確定だ
おそらく、私たちは皆、これから長い間、安心することはできないでしょう
(終わり)

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