見出し画像

詳細不明だったモスクワ撃沈

12月13日 ウクライナプラウダ:(5,248 文字)

「ネプチューン」がロシア艦隊の旗艦を破壊できた理由

2022年4月13日は、巡洋艦「モスクワ」を沈めるには最悪の日であったと思われる
朝からウクライナ沿岸の黒海の上空は、激しい雨雲に覆われていた
水面からわずか数キロメートルの高さを厚い雲が覆っていたため、上空から海の中のものを見ることができなかったのだ
飛行機も、「バイラクタル」も、光学衛星も役に立たなかった

このような状況下では、地球を斜めに観測できるオーバー・ザ・ホライズン・レーダーが役に立つ
しかし、4月13日、オデーサ地域のネプチューン・コンプレックスのオペレーターの手元には、18キロメートル以上離れたターゲットをほとんど見ることができない従来型のレーダーしかなかった

オーバー・ザ・ホライズン・レーダー:水平線や地平線より下に存在する対象を捕捉することができるレーダー。詳しく知りたい方はリンク先を参照ください。

これは巡洋艦「モスクワ」にも分かっていたことで、モスクワの乗組員は完全に安全だと考えていただろう

「空からは見えない、岸辺からも見えない」ことを理解していたのだ
それに、非常に本格的な防空システムも搭載しており、その他の防御システムもあった
そして、ウクライナ沿岸まで120キロの距離をとって航行したと、『ネプチューン』の製作に携わったウクライナのロケット科学者の一人がオフレコで語っている

4月13日、ウクライナは思いもよらず、まさにその天候に助けられた
「ネプチューン」のオペレーターは、手元にある従来のレーダーでは「モスクワ」をとらえることはできなかったはずだった
しかし、捉えることができたのだ
そこで、数分間の激しい迷いと相談の末、「発射」の号令をかけ、短い間隔で2発のミサイルがロシアの巡洋艦に向かって飛んでいった

到着予定時刻までは6分余り
この数分後に何が起こるか、誰も分からなかった

ウクライナの軍事関係者に何十回となくインタビューを行い、数週間かけて歴史的な打ち上げの写真も入手し、ウクライナの「ネプチューン」がロシアの巡洋艦「モスクワ」を沈めた様子を再現しました

ネプチューンのバトル・クレッシェンド

ほとんど誰も知らなかったが、「ネプチューン」が初めて戦闘に使われたのは4月ではなく、本格的なロシア侵攻の初日であった

その時、ロシアの上陸船3隻がクリミアの港を出て、ミコライウ地方のウクライナ沿岸に向かって移動してきたのだ
この地域に上陸したことで、ロシア軍はミコライウとオデーサの両方を攻撃する足がかりができたのである
これらの船を破壊するために、最初の3基の「ネプチューン」が発射された

「最初の発射はオデーサ地方南部からで、ミコライウ方面に向けて発射された
ミサイルはオデーサの上空を通過しなければならず、街の安全を確保するために、本来の水面上5〜6メートルの高度ではなく、約120メートルの高さで発射された
そのため、ロシアに探知され、破壊された可能性が高い
「ネプチューンを狙って、ロシア軍の飛行機まで撃墜したのは興味深かった」と、ネプチューン・プロジェクトに関わる軍関係者が語っている

断定できないが、2月26日以前の出来事である
26日に、参謀本部は黒海上空でロシアの軍艦が自軍の航空機を撃墜したという公式報告を発表した

「ネプチューン」はどれも命中しなかったが、対談者によると、このミサイル攻撃の可能性を恐れたロシアの揚陸艦はクリミアに逃げ帰ったという
ロシア軍の 「驚き」は理解できるものだ
2月末に、「ネプチューン」はウクライナ軍に投入されていないはずだったからだ

2020年の国家試験に成功し、ネプチューンは採用されたが、現実にはプロジェクトは棚上げされた
しかし、その年の暮れになって、ルーチ設計局長のオレ・コロステフとゼレンスキー大統領の会談後、大統領要請でネプチューンのための資金が確保されることになった

キーウ・ルーチ設計局:ミサイルやドローンなどの設計、開発を行うソ連時代からの企業

タトラの新しいシャーシを使った最初の本格的コンプレックスは、2021年8月の30周年独立記念日のパレードの前に組み立てられた

チェコ・タトラ社の大型トラック

パレードでは、移動式コントロールポイント、汎用自走式ランチャー、輸送・充電用車両、トラクターなど、複合コンプレックスの全コンポーネントが発表された

しかし、パレードから導入まで何カ月もかかった
2021年12月、ウクライナ国軍海軍司令官オレクシー・ネジパパは、軍事テレビの話の中で、「ネプチューン」の第一師団が軍に入るのは2022年の春になるはずだと発表した

「春には完全に完成し、ウクライナ海軍の一員となる予定です
すでに一部の機材は購入済みで、春にはネプチューン・コンプレックスのディビジョン・セットが完全に準備できるでしょう」と海軍司令官は言っている

しかし、12月の時点でもまだミサイルが無かった
国が発注した軍用の最初のミサイルがオデーサに到着したのは、2022年2月20日のことだという
本格的な侵攻の数日前に、キーウの工場から届いたのだ
その後、ロシアは3度にわたってミサイルで砲撃してきた

幸いなことに、ネプチューンは戦闘任務につき、前述のロシア艦船からミコライウを救った

「ネプチューン」の目くらまし

「ネプチューン」の初使用は、ウクライナ軍に二つの印象を与えた
ミサイル開発者が訓練した複合コンプレックスの乗組員は、2月の発射後、軍部に不穏な疑惑を報告した
何かがおかしかったのだ

「オペレーターにとって、ミサイルがどこかに消えてしまい、どこにも命中しなかったことが一番残念なことです
そのため、最初の発射の後、3月頃から、コンプレックスを担当するオペレーターが良い意味で猜疑心を持つようになったのです
彼はすべてのミサイルをノードごとにチェックするよう命じました」と、状況をよく知る軍事関係者の1人が証言する

ミサイルの主要開発元であるキーウのルーチ設計局の専門家グループが確認に来たところ、非常に怪しいパターンを発見した

「キーウから専門家が来て、本当にびびった
その結果、すべてのミサイルの部品が一つずつ狂っていて、そのために本来の爆発が起こってなかったことが分かった
すべてを修理し、次の発射ではすぐに2発が正常作動しました」と、ネプチューンプロジェクトの関係者は言う

まるで、計画的な妨害工作のように見えた
しかし、ルーチ設計局では、意図的な妨害工作という説には傾いていない

「何かを『修正する』『確認する』ということは、常に必要なことです
それがこの製品の特異性です
ロケットは非常に繊細な電子機器を搭載しており、単純な輸送の段階でも危険が多くあります
妨害工作はなかったと思います」
ミサイル開発企業であるアップル社の関係者はそのように言い切る

同時に、別の2つの独立した情報源、特に陸軍指導部は、ミサイルが故意に破損された可能性があると指摘している

「そういう話は本当にあったことなんだ
すべてのミサイルに同じ故障があり、その結果、明らかに意図的なものだと分かるのです
全戦闘の中で唯一、裏切りが見えた時でした
しかし、すべてが解決され、『モスクワ』はもう存在しません」
と、情報部の関係者は言う

見つけたら沈める:「モスクワ」の破壊

4月13日午後4時頃、有名ではあるが、機密扱いのウクライナ製ネプチューン・コンプレックスのオペレーターが、レーダーで本当に予想外のデータを受信した

従来型のレーダーで、約120キロメートル沖に大きな目標があることがわかったのだ
黒海のこの海域で、これほどの大きさのものは、ロシア黒海艦隊の巡洋艦「モスクワ」の旗艦くらいしかないと思われた

しかし、従来型レーダーで、オーバー・ザ・ホライズンの距離にある目標をどうやって補足したのだろうか
ウクライナのミサイル専門家がオフレコで断言したように、自然が味方してくれたのだ

海上に高密度の雲があったため、レーダー信号が雲から水面に反射し、水面から雲に戻る。

「侵略開始当時、オーバー・ザ・ホライズン・レーダーが無いことを、ロシアも知っていました
しかし、雲が低く垂れこめ、水と雲の間の通路からの信号が行き場を失ったため、レーダーが突然「モスクワ」に到達したのです」と情報筋は説明する

ロシア側は、ウクライナ軍への接近不可能性に自信があったため、おそらく防空システムさえ作動させなかったのだろうという
仮に発動しても、ネプテューンを防ぐには大きな問題があった

「ネプチューン」は、最後の瞬間まで気づかれずに船に忍び寄る、静かな液体燃料ミサイルです
水上ぎりぎりを飛ぶので、従来の防空システムではほとんど見えません」と、国家安全保障・防衛会議の関係者は説明する

欧米のマスコミは、独自の解釈で事件を伝えている
ニューヨーカーによると、4月13日にウクライナはNATO欧州センターに標的の座標確認依頼を出し、そこから確認を取ったという
ニューヨーク・タイムズは、正確な座標を提供して欲しいというウクライナの要請に応えるために、アメリカの偵察機「P-8ポセイドン」が使用されたと主張している
専門誌「ネイビー・レコグニション」にも同様の情報が掲載されていた

ウクライナの軍事界では、同盟国の役割があまりにも誇張されていることに対し、否定的な意見がある

「『大きなおじさん』が助けてくれるという話は、すべてロシアに有利に働くだけです
実際、私たちは信じられないほど複雑な問題でも、自分たちで解決することができます
巡洋艦『モスクワ』を探すのが大変だったと本当に思っているのでしょうか?
小さな黒海に浮かぶ鉄と電子装置の120m級の山
どの衛星からも、どの範囲でも検知することができます
私たちは常にそれを目にし、記録してきました」
そのように軍司令部に近い関係者は憤慨している

「数十機の衛星から得たデータに加え、プリツーラ(8月、ウクライナが購入したことを公表した人工衛星)もさらに購入したのです
問題は、モスクワを見つけることではなく、モスクワに当てることだけでした」

そして4月13日、ロシアの巡洋艦は予想外にウクライナのミサイルの射程距離に入ってきた
16時頃、発見されるや否や、2機のネプチューンが発進し、次々とモスクワに向かって飛んでいった

「ウクライナ・プラウダ」は、この歴史的なミサイル発射の写真を入手することができた

しかし、この作戦で最も興味深いのは、ミサイルが海上に発射された直後のことである

ロケット科学者の計算では、この距離での「ネプチューン」の飛行時間は 6分強かかるはずであった
しかし、ミサイルが命中したかどうか、どうやって知ったのだろうか

この作戦に詳しい情報源によると、「バイラクタル」のオペレーターは、命中確認のための飛行を拒否したという
雲の上からでは何も見えないだろうし、雲の下を飛行すれば100%撃墜されることになるからだ

「それで、ヒットしたのかどうか、誰もわからなかったんです
しかし、その時、『モスクワ』が全速力で走りだしたのです
つまり、何かが起こったということです
巡洋艦の航跡が「ボイコー・タワー」の後ろに隠れようとしているのは明らかでした
これは大きな金属製の塊なので、まず、ミサイルはタワーを標的として捕らえ、その後ろにいる船は安全です」
ミサイル専門家はオフレコでこう語っている

ボイコー・タワー:ガス田掘削のプラットフォーム

同時に 4隻の船が別々の方向から「モスクワ」に殺到した
しかし、海上で予想外の嵐が始まり、救助活動は困難を極めたようだ

クリミアから「モスクワ」にタグボートが来たことをウクライナ軍が観測したことにより、この巡洋艦が危機的状況にあることが明らかになった

その夜、現職の安全保障担当の有力者の一人は記者にこう伝えていた「Moscow-everything」

翌日、黒海の嵐は静まった
曇り空が明るくなり、風もおさまってきた
嵐後の牧歌的な風景を破ったのは、数十キロ先からでも見える重厚な黒いシルエットだった

突然、シロナガスクジラが黒海に飛び込んできて、それが今まさに帰ろうとしているところだった
しかし、この「クジラ」は浮上できず、徐々に底に沈んでいった
2基の「ネプチューン」に被弾した「モスクワ」は、他の船で来た数百人のロシア人水兵に目撃されたが、彼らはなすすべもなく、その周囲を旋回しただけであった

大破した巡洋艦は、クリミアまで牽引することさえ不可能な状態だった

重要な、最初の数時間は、嵐のために失われた

本格的な侵攻の初日、2月24日に、スネーク島の守備隊から送り出されて来た占領艦隊の旗艦モスクワ
まるで、自然がウクライナを助けて、占領軍のその旗艦を沈めさせてくれたようだった

(終わり)
最後まで読んでいただいてありがとうございます😊🙏
どうか「スキ」「ツイート」「シェア」をお願いします!
できましたら、コメントで何か 一文字でもいただけると、ものすごく励みになります😣!😣!

サポートしようと思って下さった方、お気持ち本当にありがとうございます😣! お時間の許す限り、多くの記事を読んでいただければ幸いです😣