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この戦争は、どう始まったか -バフムート大隊(1)

2023年1月18日 ウクライナ・プラウダ:(3,634 文字)

ドンバスとは私たちのことです。私たちは自分の国のために戦っています。

ウクライナ軍「Great Battles」プロジェクトは、数ヶ月前から激しい戦闘が続いているバフムート周辺を訪れました
私たちが目指したのは、本格的な戦争が始まって以来、街を守り続けているにもかかわらず、ジャーナリストによってほとんど語られることのない部隊についてお伝えすることでした

夕方、ソルダール郊外の5階建てビルに陣取ったホロドニー・ヤール旅団(注)の2人の斥候に、さらに4人の兵士が増援に駆け付けた
その位置は、俗に言う「ビハインドライン(前線の向こう側)」で、殆ど包囲された、難しい重要な場所だった
6人は、プリジンのPMC「リーグ(注)」の傭兵たちが注力している、ほとんど破壊された空のアパートの入り口を守ることになった

ホロドニー・ヤール旅団:ウクライナ国軍第93機械化旅団

リーグ:ウクライナの事情通の人々はワグネルの中の古株の精鋭部隊を「リーグ」と呼んでいる。詳細はPMC(2)を参照ください。

夜は比較的穏やかだった
敵のスナイパーが動いており、散発的にマシンガンの音が聞こえてきた
夜明けとともに、敵は攻勢に転じた
まず、5人編成の小集団が、守備隊の人数や武器、射撃位置などを調べる偵察作戦を実施した
その後、強力な砲撃とともに、小隊による新たな攻撃が行われた

この戦いは6時間休みなく続いた
リーグの傭兵たちは、なりふりかまわず、入り口を奪おうとした
時には1メートルの距離まで接近して戦った
誰もが落ち着いており、スムーズに、射撃位置を入れ替わりながら作業していた
冗談を言い合い、励まし合いながら

ロシア軍は、家の周りに遺体だけを残して撤退していった
しばらく休んだ後、砲撃とともに、新たな攻勢が始まった
それが30時間続いた
しかし、敵はソルダール防衛隊の陣地を越えて市内に侵入するどころか、この入り口を越えることもできなかった

ロシア軍は、少なくとも2個分隊(約20人)を失っただけだった

休憩しながら、ホロドニー・ヤール旅団の二人が「みんな、どこの大隊だ」と聞いたとき、4人が「バフムート領土防衛軍」と名乗ったことに驚いていた
ホロドニー・ヤール旅団の戦闘員だとばかり思っていたのだ

30歳の「フィズルク」(コールサイン)迫撃砲隊長によると、他部隊から「お前たちはクッソ最高だ」と、バフムート部隊はよく褒められるという

難しい戦闘任務を、少ない武器と、創造的で危険な方法で解決しているからだ
昨日までは鉱夫や学校の教師だったので、プロの軍人が普通はやらないことをやっているのだ
彼らは開戦当初からバフムート周辺に陣地を構え、休息を取ろうとさえしなかった
実は、彼らは全員、地元の住人達である
ここが彼らの家であり、彼らには逃げる場所などないのだ

意外なことに、領土防衛軍バフムート大隊の存在は、ウクライナ・メディアの視聴者だけではなく、近隣の塹壕でバフムート住民と行動を共にしているウクライナの他の部隊の兵士たちにも知られていないことが多い

第93機械化旅団(ホロドニー・ヤール旅団)の将校がTwitterでTRO(領土防衛軍)のバフムート大隊に言及するまで、私たちも知らなかった
その将校はバフムート大隊の迫撃砲を絶賛し、砲弾を次々とロシアの塹壕に正確に打ち込んでいく映像を流した

そして、私たちはバフムート大隊を探すことにした
彼らの話は驚くべきものであり、ロシアのプロパガンダのシナリオを完全に破壊しています

「ドンバスはウクライナのために戦っている。私たちがドンバスだ。」

ホロドニー・ヤール旅団の人々に大きな感銘を与えた4人の戦士を指揮していたのは、コールサイン「ジョージアン」と呼ばれるローマンだ
彼はビジネスマンとして成功している
本格的な戦争が始まる前、彼はドネツク州のライマンとシヴェルスクでナイトクラブを経営していた
自信家であり、明るく活発な中年男性である
歌と踊りが好きで、その仕事を選んだそうです
人を喜ばせるのが好きなのだという

戦争が彼のビジネスを完全に破壊してしまった
彼の故郷の村も破壊され、すぐに回復することはないだろうと彼は考えている
もう帰る場所は無く、戦後はこの国の別の地域で一から事業を始めるつもりだという

「今までよりも、もっと良い、新しいお店を作るつもりです」とローマンは言う

しかし、それは戦争が終わってからの話です
今、彼は自分の国と、8年間ロシア人に犯され続けた小さな故郷のために戦っています
2月24日、彼は迷いはなかったと言います

「ロシアの正体は、2014年からわかっていました
私たちはドンバスに住んでいて、何が起こっているのか、誰が有罪で誰が正しいのかをこの目で見てきました
だから、私の決断は揺るぎないものでした」

彼は荷物をまとめ、バフムートの領土防衛軍入隊事務所に向かった

そして、この成功したビジネスマンは、わずか数カ月で、優秀な指揮官となり、射撃の名手へと変身を遂げた
自分が正しいと信じて疑わないそうです
他の隊員たちと同様、もう戦闘中に恐怖を感じることはなく、すべてが簡単にこなせるようになったという

ローマンにとってこの活動が楽しいものでないのは明らかだが、彼はやらなければならないと思っている

「『あなたは人を殺している』と言われることがあります
しかし、私はまだ一人も殺していません
なぜなら、私たちの土地にやってきて、私たちの子どもを殺し、女性を犯し、私たちの物を奪う者たちは人間ではないからです
人間ならそんなことはしないはずです
それらは悪霊です
だから、浄化しているだけです」

ソルダールではロシア兵を見ましたか?

そうなんです、ほとんど顔が見えるほど接近して戦ったこともありました
そして、彼らの目は怯えきっていました
無線での会話も聞こえてきました
その様子は、力づくで追い立てられているような印象を受けました
「行け!くそったれ!俺は行けと言ってるんだ!」
と大声で毒づいていました

彼らの前方には、ソ連製の古いジャケットを着た、動員された男たちがいました
そしてその後ろには、ボディーアーマー、カメラ、照準器付のライフルなどでフル装備しているワグネリートが控えていました
私たちが最前列の敵を倒すと、ワグネリートは次から次に動員兵を前に押し出してきました
本当にロシアは軍人を肉のように扱ってます

ロシア人に何か言いたいことはありますか?

ジョージアンは「ウクライナへようこそ!クソったれ!」と、今では定番となったセリフを言った

「バフムート周辺では十数か所の陣地を押さえており、いたるところで激しい戦闘が繰り広げられています
そして、ソルダールでは、一人のロシア兵に降伏を勧めたことがありました
彼は負傷していて、壁の向こう側に横たわっていた
我々は降伏するように叫びました
『こっちに這って来い』と
彼はそれを望まず、手榴弾がその役割を果たしました
こんな感じです、すみません」

この半年間、敵の精鋭部隊の攻撃の波が、花崗岩の岩のように堅固なバフムート要塞に押し寄せてきた
この間、敵は何千人もの戦闘員を失ない、わずか数キロしか前進できていない
ローマンは、ウクライナの防衛者の精神は、侵略者の精神よりはるかに強いと言う

「もし、ロシアと同等の装備と大砲があれば、この戦争はとっくに我々の勝利で終わっていただろう唯一、足かせになっているのは、ロシアが我々の20倍もの銃を持っていることだ
しかし、ウクライナの兵士はとても勇敢です」とジヨージアンは言う

ローマンは、制服も装備も似合っている
軍隊によく馴染んでいるようだ
「自分はもうビジネスマンではなく、軍人である」と感じたのはどのようなときかと尋ねると、意外な答えが返ってきた

「私はまだ、自分を本物の兵士だとは思いたくないんです
あの頃の生活に戻りたい、楽で明るくて良い生活に戻りたい
私は、自分を兵士とは思っていません
それが今の心境です

平和な国に住み、自分の好きなことをして、娘を育て、妻を愛したい
そして、全て悪い夢だったと忘れてしまいたいです

私は軍人ではありません、違うんです
今、このような不愉快なことをせざるを得ない、この国のただの善良な一人の人間にすぎないんです」

ローマンは、2月に、ドンバスは劇的に変化したと考えている
それ以前は、ロシアに同情的な現地人もいた
しかし、この侵略は、ロシア人に対する幻想をほとんど拭い去った
ローマンの意見では、今、侵略者を支持しているのは、正気でない人たちだけだという
もう、決断はなされたのだ

「ドンバスはウクライナのために戦っています
私はドンバス人です
そして、我々の大隊、旅団はすべてドンバス人です」
ローマンはそう話す
(つづく)

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