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中国人の英語発音はなぜよくわからんのか?

この記事は次のシリーズの1つ。

海外で働いたことがある人ならば、中国人と英語でコミュニケーションしたことがあるだろう。こう思ったことはないだろうか?「何言ってるか、ぜんぜんわからん(´;ω;`)」

この記事は、「なぜ、彼らが言ってることがぜんぜんわからんのか?」、その原因に迫ってみる。

おまえ、だれだよ?どの目線からもの言ってるん?

ぼくはドイツの中国系企業で働いている。同僚にはものすごい数の中国人がいる。コミュニケーションは英語を使う。まれにドイツ語を話す中国人同僚もいる。

英語だろうが、ドイツ語だろうが、彼らが話す音にはかなり癖がある。ぼくは慣れるまでかなり時間がかかった。

ぼくは言語への興味が強い [1]。中国人たちの発音にも興味があったので、中国語を勉強した。

中国語の勉強をすると、彼らの英語に癖がある理由をよく理解できた。なので、書き残しておこうと思ったわけだ。

中華英語による見られる3要素

中国人の英語発音によく見られる特徴は大きく3要素ある。ソースはおれ。

1. イントネーションの位置ずれ。
2. 中国語の母音を使う。
3. 中国語の子音を使う。

これら3要素は複合的に発生する。1と2のコンビが最頻度(おれおれ統計調べ)

ちな、ぼくの耳では1, 2, 3複合ケースの中華英語をいまだに正しく理解できていない。まるで、ノイズがかかったラジオのように聞こえる。

さて、これら3要素をひとつづつ見ていこう。

イントネーションの位置ずれ

この要素は90%くらいの中華英語話者に見られる(ソースはおれ)。

例をあげよう。

"slide"は"li"の位置にイントネーションがある。しかし、中華英語だと、su-lai-dou になる。"su"は一声で、"lai"は3声だと思う。社内のほとんどの中国人は同じ発音するので、おそらく中国人話者に一般的な傾向だろう。 

他の例は "investigation". この例は話者によって違う。ぼくの近いとこにいる同僚は"ve"で3声を使う傾向。ジェネラルマネージャーは "ve"と"ti"で1声(3声かも)になってる。どちらも "ga" のイントネーションを無視している。

おそらく、この要素の発生原因は何らかの当て字だろう。つまり、英単語を覚えるときに、何らかの漢字を当てはめて覚えているのだと思う。

中国語の母音

ところで知っているだろうか?中国語には母音が36音もある。完全に違う音、というよりは、組み合わせで36音になってるという方が正解だろう。

日本人にもっとも厄介な母音は鼻母音だ。こいつが16個もある。基本的に、鼻母音はふつうの日本語話者には識別不能な音 [2]、と言っても過言ではない。だって、日本語に存在しないのだもの。

中国人話者は英語でも鼻母音を使う [3]。すると、音はまるで違って聞こえる。まずは単語だけで見てみよう。

さきの "investigation" は "on" が鼻母音になりやすい。すると、in-ve-sti-ga-sho (インベスティゲショ)のように聞こえる。

単語だけでも厄介だが、文になるともっと厄介だ。例えば、音声をヘボン式アルファベットに書き起こしてみる。ぼくが日常的に聞いている音だと思ってもらえらばいい。"?"は識別不明な音を意味する。

ai an-da-st-??? ???-ve-sti-ge-???? ??-su-l-??.



この音の正体は次の文である。 "I understand the investigation result."

鼻母音で消えてしまったのは、次のふたつ

  • understand の underst "and"

  • investigationの "in" vestiga "tion"

鼻母音になるだけで、聞き取りが困難になるとわかってもらえたと思う。

中国語の子音

中国語は子音の種類も多い。そして、英語と異なる子音もある。

以下はあくまで自分の私見で書く。ぼくは中国語の子音への理解が足りてない。そもそも中国人の同僚が発音する子音もそれほど認識できてない、と自覚がある。

  • "r". 中国語の "r" は明らかに英語と違う。IPAを参照してみよう。中国語のr子音はIPA 137のʐ。一方で英語の"r"はIPA 122のr [4]

  • "ch". 中国語の "ch" はIPA 105。英語の"ch"も IPA 105の発音になるケースもある(例えばFrench)。だけど、/k/ IPA 109 になることもある、例えば character. [5]

  • "sh". 中国語の "sh" は IPA 136。英語の "sh" は IPA 134

ぼくが日常会話の範囲で気になるのは特にこの3音。

この3音のうち、致命的な違いは 英語のIPA 109の "ch"。この 英語のIPA 109 "ch" を 中国語のIPA 105 "ch"に置き換えられると、単語として認識できない。

"r" と "sh" は中国語の子音でもなんとか認識可能なレベル。感覚的な表現で書くと、中国人話者は鼻声で英語の"r" と "sh" を発音するように聞こえる [6] 

出身地域と関係あったり?

この感想もオレオレ統計なので、一意見として捉えてほしい。出身地域で中華なまりのレベルに差があると思う。

まず、一番なまりが少ない地域は、台湾出身、香港出身。台湾は教育熱が強い国と聞く(ソースはおれ)。それで英語の発音矯正にも力が入ってるのかもしれない。香港出身者はそもそも政治的な理由で別の国と言ってもいい。

次に、比較的に認識しやすいなまりは広東語地域。官語地域出身者によると、広東語話者は鼻母音をうまく使えないらしい。それで中華英語の訛りが緩和されているのか?

一番に認識困難な傾向が強いのは、官語地域。いわゆる「正統中国語」なので、認識困難になるのもあたり前か?

例外ケースは、非中華圏の2世や留学経験者。2世は中国語以外の母語を知っているし、留学経験者は自分で発音矯正したのだろう。

締めくくり

この記事では、ぼくが普段から感じてる「中華英語ってこんな感じよね~」という感想をまとめてみた。

とても正直なこと言う。ぼくはまだ中華なまり英語が苦手だ。長時間聴いていると、頭が疲れる 😫
疲れてるときには、イライラもする 😒

さらに正直に言おう。ぼくは中華なまりがひどい人との会話を避ける傾向がある。ついでにちょっとバカにしてる傾向もある。

しかしそれでは根本的な解決にはならない。そこで、こういう記事を書いたわけだ。


 [1] 現在のところ3外国語を日常レベルで使ってます。ちな、学士(外国語)。
[2] 日本語だけを知っている人間、ということを意味する。
[3] 中国人だけを責められない。フランス人英語の癖も鼻母音。フランス英語は "cool"と言われるのに、中華英語はスタンド・アップコメディーで馬鹿にされる(をよく見る)。納得いかないけど、これが現実か。
[4] もっとも英語の "r" は異音が多い。Wikipedia記事参照
[5] 音を分析すると、英語は曖昧な言語ってよくわかりますね。英語の方が他の言語よりもよっぽどムズイ。昔はぼくも「英語の方が簡単や」って思ってた時代もありましたが。
[6] ちなみにドイツ語では shとchの子音は存在しない。ぼくの観察範囲内では、中国語ネイティブはドイツ語のschに中国語shを割り当ててる気がする。もちろん、これは不正解。かなり認識困難なミス。とは言え、スイスドイツ語のschも中国語shに近い(と思う)。

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