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サウジアラビアへ旅行する話

こんなことを書く

フランスからサウジアラビアへ旅行した話
長くなるので、シリーズにするつもり。この記事では旅行計画とか、サウジアラビアに着くまでの話をするぞ。

サウジアラビアって旅行できるの?

旅行に詳しい人はそう思うかもしれない。実はその反応は正しい。サウジアラビアは2019年まではビザの発行条件がとても厳しかった。2019年までビザ受け取れた人はムスリム or サウジアラビアでビジネスする人くらいなものだった。早い話、2019年までのサウジアラビア政府は欧米文化をイスラム文化の敵だと言ってたといってもいい。

しかし、話は2019年にさかのぼる。ムハンマド王子 [1] が近代的なサウジアラビアの政策を打ち出した。ビザの発給条件をゆっるゆるにして、ついでに宗教警察の権力も骨抜きにした。

そんなわけで今ではインターネットで申請すれば、eVisaを獲得できるようになった。ちな、Arrival Visaもあるが、どうも航空会社がビザなしでは乗せてくれない気がする。少なくとも、ぼくが今回つかったWizz航空ではビザが絶対条件だった。サウジアラビアに旅行するときにはeVisaが必須だぞ、よく覚えておくのだ。

そもそもなぜサウジアラビアへ?

よく聞かれる。なぜなら、ぼくの友人がサウジアラビアの大学で研究しているからだ。彼はアルジェリア系のフランス人。ムスリムなので、サウジアラビアは彼にとってちょうどいいのかもしれない。

大学がある街の最寄りはジェッダ。なので、今回の旅行はフランスのニースからサウジアラビアのジェッダへの旅行ということになる。

どんなルートで行く?

南フランスからサウジアラビアは航空業界では「中距離」に該当するようだ。旅行ルートは, ニース -> ローマ -> ジェッダにした。行き帰りで料金は700€。かなりお値打ちな料金である。

ニースからローマへはアリタリア航空、ローマからジェッダにはWizz航空を使った。Wizz航空はハンガリーの格安航空会社。ハンガリーの会社がなぜイタリアからサウジアラビアまで運行しているのか?謎。

乗り換えの苦難

ぼくの乗り継ぎはローマの空港でわずか1時間半しか余裕がなかった。チケットを買う時も「これ・・・大丈夫かなぁ」とものすごく心配だった。なぜなら、この1時間半の間にWizz航空のカウンターで書類チェックして、それから出国審査も済まさないといけないからだ。そう考えると、1時間半の乗り継ぎ時間は「コーヒーを飲むくらいのちょっと余裕がある」くらいの感覚。

しかしそうは簡単にいかないのがアリタリアである。心配してた通り、遅延した。正確には、アリタリアのせいではなく、バカンス時期のフランスはだいたいどの会社でも同じなのだが。遅延のせいでローマについた時点で、Wizz便まで40分を切っていた。これはマズい。

焦って考えてみると、ぼくはオンラインチェックインをすでに済ませている。Wizzのカウンターに行かなければいけないのは「書類のダブルチェック」に過ぎない。それならば、直接に搭乗ゲートに行ったらなんとかなるのではないか?ぼくはそう考えた。

いそいで出国審査を済ませ、Wizz便の搭乗ゲートまで走る。着いてみると、まだゲートは開いておらず、職員は暇そうにしていた。焦るぼくは「チケットがまだない。遅延があって、Wizzのカウンターに寄る時間がなかった。」と説明すると、職員はのんびりとチケットを発行してくれた。

結果から言うと、Wizz便もまた遅延していて、ぜんぜん急ぐ必要なんてなかったのだった。さらに、ぼくのように物理的なチケットを持ってない人達はたくさんいる様子で、搭乗の進み具合もおっそい。職員は慣れた様子でチケット発行してたので、きっとこの路線ではチケットなしで来る状況は珍しくないのだろう、と思った。

搭乗ゲートで待っている間に周りを見て気がついたことがある。サウジアラビアに向かう搭乗ゲートは他ゲートと違うフロアに設置されている。このフロアには他にも3ゲートある。なんというか・・・このフロアは明らかに風景が違うのだ。表現を恐れずに書くと、明らかに肌が浅黒い人と褐色の人が大多数。さらに服が明らかにムスリムとシーク教徒。ムスリムはそこらへんに絨毯を敷いてお祈りしてるし。他のゲートを見ても、ニューデリー行きに、リヤド行き。これ・・・もしかして宗教的に明らかに服装と人種が違う人達をフロアごと隔離してるのでは???

できれば写真でも撮って、雰囲気をお伝えしたいところだが、写真は止めておいた。お祈りの時間は神聖な時間である。異教徒が軽々しく手を出していいものではない。

機内からすでにムスリム

そうして苦難を乗り越えて機内に入ると、明らかに洋服ではない人たちばかり。女性のニカブ、アバヤ、ヒジャブはまぁいい。それなりに見慣れている [2]。

一番に気になるのは、裸にバスローブみたいな白い服を着てる人が多いこと。明らかに布の下は裸やんけ。白い服というと、石油王の服装をイメージする人が多いかもしれない。しかし、ぼくが機内で見た裸バスローブは石油王のそれとはぜんぜん異なる。

機内の様子はまさにこんな様子。写真の出典: https://worldclub.jp/turkish/umrah/  

後で調べてみると、裸バスローブはメッカに巡礼するときの正装だとのこと。つまり、機内にいた裸バスローブ集団はメッカに巡礼に行く人々だったのだ。ちな、メッカの最寄りの空港はジェッダである。だからジェッダ行きの飛行機には巡礼者が多いという理屈だ。裸バスローブの人々を見ても面白がって写真とか撮っちゃダメだぞ。巡礼は神聖な儀式で、異教徒がおもしろ半分で手を出してはいけない [3]

ちな、ぼくは機内で巡礼者に親切をした。巡礼者の老人が席を交代して欲しいと言うので、交換してあげたのだ。彼が言うにはぼくの隣の席は彼の妻なので、席を交代して欲しいということだった。正直なとこ、これはヨーロッパの論理ではない。ついでに言うと、ぼくはお金を余分に払って通路側席を指定したので、席交換は気持ちいいものではない。しかし、交換先も通路側だし、なにより彼の奥さんは体格がでかくて、ゴソゴソと動き回り、さらに前席の知り合いに話かけ続けてうるさい。ぼくはそう考えて席交換をしてあげた。彼はぼくの心の内を知ることなく感謝しただろう。つまり、ぼくは巡礼者の旅を手助けしたのだ。きっと、わずかながらでもアッラーの加護がぼくにもあることだろう

ところでWizz便の機体はA321だった。これがどんな機体かというと、短距離から中距離で使われる機体。東京から沖縄への距離レベルで運用される機体。ローマからジェッダはそれとほぼ同じ感覚ということだ。

そしてWizz便のキャビンアテンダントは高身長で美男美女だった。顔つきが東欧系だったので、ハンガリー人なのだろうか?とそんなことを考えていたものだ。

そしてサウジアラビアへ

離陸から3時間ちょっともすると、わざわざ「あと20分でサウジアラビア空域に入る」と英語でアナウンスがあった。到着ではなく、空域に入るだけだ。

「不思議なアナウンス・・・」と思っていると、イタリア語のアナウンスが続く「アルコール飲料をやめるように」。また、周りをみると、さっきまでヘジャブだけだった女性がニカブを着用し始めた。なるほど、だからサウジ空域に入れば、アルコール飲料は禁止だし、宗派に属する女性は規律に従わなければいけない [4]。だから、空域のアナウンスをしていたのだ。

その後、アナウンスは丁寧にも空域にはいる10分前と入った直後にもあった。それほどにサウジアラビアの領域に入るということは重みがあるのかもしれない。少なくともサウジアラビア人にとっては。

ジェッダへ

そしてようやく便はジェッダへと到着する。この時点ですでに8時を回っていた。

ジェッダの空港の様子。selfi組が多い。

入国審査は厳しいのかなぁ、と思っていたが、なんのことはない。たやすく審査を通過した。指紋を取られて顔写真の撮影されたことだけは少し特別に感じたが、まぁ外国人だし当然だろう。意外だったことは、写真撮影でsmileと言われたことくらいだ。公式写真で笑うように言われたのは初めてだぞ。

空港ターミナルに出ると、わんさかとTaxi? Taxi?と聞いてくる集団に遭遇する。ぜんぶ無視して欲しい。絶対にだ。そして観光客はUberを使うのだ。絶対に!空港のWifiに接続し、空港でSIMを買い、Uberを呼ぶのだ。間違っても、Taxiを紹介しようとやって来る人に頼んではいけない。

ぼくはタクシーカウンターに居た人に紹介された自称タクシー運転手についていったら、ボッタクリタクシーだった。タクシーカウンターに居るからと言って、必ずしも本物のタクシーだとは限らない。ぼくの場合は、空港警備員が偽タクシーだと教えてくれたので助かった。でも警備員もなんだか頼りないもので「君がこのタクシーを使うならば、それでOKだけどね」みたいなコメントを残して去っていった。偽タクシーの取締自体はやっていないらしい。

きっと、機内で巡礼者を助けた分、アッラーがぼくを助けてくれたのだろう。そう思っておくことにした。借りを早々に返してもらった。

夜のジェッダの街を歩く

偽タクシー事件を済ませて、Uberでホテルに向かう。

ホテルはbooking.comを使って予約していた。が、ホテルに着いてみると、そもそもカウンターがない。小さい机が一つあるだけ。チェックインを伝えると、紙の伝票を取り出して手書きをはじめた。どうやら予約の確認をしないらしい。ちな、ホテルの名前もなんか違う。Google Mapを見ると住所は同じで、価格がbooking.comと同じ。なんだか面倒になってしまって、このホテルに泊まることにした。

幸いにもbooking.comでは、現地払いにしておいたので、損は出ていない。ホテルにインターネットは無いとのことだった。うん、やっぱりbooking.comの情報と違うとこあったね。

シャワーブースがない。ダイレクトにトイレの横。まぁ、掃除は楽なんだろうけどさ。

フランスのSIMカードはネットローミング使用量がクソ高い。9.8€/Megaだそうだ。空港でSIMカードを買い忘れた自分を悔やむ。外国人がSIMカードを購入するには、VISAを確認する資格を持った店でなければいけないらしい。ふつーは空港で買えば問題ない。これからサウジに来る人は絶対に覚えておいてくれ。空港でSIMを買うのだ。絶対に。

お腹が空いたので、食事をすることにした。この時点ですでに夜の10時。レストランはそんなに開いてないだろうなぁ・・・と思って外を歩いてみる。店という店はぜーんぶ開いている。

服屋、スーパーマーケット、自動車修理工場まで夜12時まで開いている世界。それがサウジアラビアなのだ。

ホテル近辺の道を歩く。この写真の時刻はおよそ11時半。

いくつかのレストランを入ってみる。英語が通じるのかもどうかもよくわからんので、ゆっくりとはっきり、わかりやすい英語を話すように心がける。ときどき、店員がものすごいアメリカ英語が達者だったりすると、こちらがアホの子みたいに感じて恥ずかしい。

ぼくは現金を持ち合わせてなかったので、カードの支払いを聞いてみる。ちな、ぼくはRevolutのVisaとN26のMaestroの2つを持っている。Revolutは日本人でも簡単に取得できるので、オススメだぞ!

2つのレストランはVisaもMaestroも使えないと断られた。3軒目のシーフードレストランでは使えたので、ここで夕食を楽しむ。ジェッダは海に近く、シーフードも美味しい。さすがに刺し身はない(あるという噂も聞く)が、魚のグリルやその他いろんな料理は最高だ。ぜひ、このYoutuberを見てくれ!

食事したレストラン。わりかしキレイ。
40リヤルくらいだった。およそ10€に相当する。

お腹いっぱいになって満足したら街を散歩してみる。街はなんだか臭い。ゴミの生臭さと機械オイルが混ざったにおいだ。ぼくが知っている限り、このにおいはインドネシアでも似たにおいの記憶がある。サウジアラビアも要するにアジアみたいなものだ。ある種、似たところがあるのかもしれない。

街を散歩しているとガソリンスタンドが目に入る。価格をみると95(レギュラーガソリン)が2.33 Riyal、およそ、0.5€。やっっす!ちな、フランス出発時点で近所のガソリンスタンドは1.95€だった。石油産業がいかにサウジアラビアの主要産業かということがよくわかる。

激安ガソリン。フランスの約4分の1の価格。

[1] サウジアラビアは絶対君主国家なのだ。知ってた?
[2] 筆者はイラン文化に少し理解があり、ペルシア語を少し理解できる。さらにフランスのムスリムとの交流も多い。なので、イランやヨーロッパで一般的なヒジャブはぜんぜん珍しくない。
[3] 余談だが、メッカは異教徒が進入禁止。メッカの一部とかではなく、メッカの都市自体に異教徒は入れない。Visaに宗教申告欄があったのはおそらくこれが理由。メッカで建設作業にあたる作業員は、作業のためだけにムスリムに改宗するのだと。その手があったか!
[4] サウジアラビアのムスリム宗派はワッハーブ派と呼ばれる。ムスリムの中でもかなり戒律を重視する学派。これを根拠にしてサウジアラビアのイスラムは厳しいという話になっている。まぁ、実態はここ数年でサウジ王家みずからがサウジの法規制改革している。結果、ワッハーブ派の戒律を無視することになっている。王家にとっても厳格すぎるワッハーブ派イスラム法学者は目の上のたんこぶなのかもしれない(と分析するムスリムの意見を聞いたことがある)。


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