見出し画像

最近出来た友達

最近新しい友達が出来た。向こうはそう思ってはいないかもしれない。何せ私たちは同じ言語やコミュニケーション方法を持たないから。相手はこの辺りを縄張りにしている猫である。
日が暮れると現れて朝方にはいなくなる。野生で生きているだけあってその顔つきは厳しい。私はヘビー級猫アレルギーで、近づくだけで目が腫れ上がる。だから見かけても興味ないです、という姿勢を貫いている。本当は猫を吸ってみたい、撫でたい、愛でて甘やかしたい!と言うぐらいには好きだ。けれど1度、目も鼻も塞がって気管も腫れ上がり呼吸困難になってからは距離をとるしかない、自分は犬派なんで、という姿勢を貫くことでこの今にも猫ちゃん〜ちゅーる買って来たよ〜ん!となりそうな衝動を抑え込んでいる。
そんなスルーし続ける人間に向こうは気を許し始めた。毛艶も悪い、ケガもしている、この猫ちゃんは苦労してるのだな、と思い通りすがりにカツオの水煮缶を買い物した中から置いてきた。このその場しのぎで無責任な行動は非難されても仕方ないと分かっている。ただ、この猫が一生に1度ぐらいなんかおいしいものを食べた、という経験があっても許されるだろ。許される世界であれよ、と思っている。
それからは会う度に綺麗な水を用意したり、話しかけるようになった。
なんとなく初めて見た時より表情が柔らかな気がする。約束はしていないけどだいたいこの時間、というのもありいつもの場所でお互い待ち合わせるようになった。
このまま野生で生きていくんですか?とか、ケガが治って良かったですね、とかほんの少し一方的に話しかけている。明日は雨だから会えませんね、とか。それに対してにゃあ、と鳴いて返してくる。私は痒くなりだした目を擦りながら家に帰る。
私は猫さんに対してどうするとか、どうしたらいいのかとかわからない。ただ、私たちは友達だから今日も会いに行く。
君に会えないとそれなりに寂しいし、心配だ。困った時は頼ってほしい。
この気持ちは友情だろう。あなたが私ににゃあ、と鳴いてくれるのをその答えだと思っている。
思うぐらい自由だし。
まだ名前のない、もしくは色んな名前があるのかもしれない、会話がいらない新しい友達。
たくましく、自由に生きてくれ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?