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映画『Soundtrack』のサウンドトラック。

『Soundtrack』(二階健監督作品、主演はSUGIZOさん、柴咲コウさん)は、ミニシアターで上映された作品で、まだ、ブレイク前の、柴咲コウさんが主演されている。

私が、初めて、ひとりで埼玉県から、東京都まで、観に行った、思い出の映画だ。

幼い頃、赤の悪魔(山口小夜子さん)に、
両親を殺害された兄妹は、
森の中の小さな家で、兄はバイオリンを使って作曲活動をし、妹は両親のことで言葉を失ったが、絵本作家として暮らしていた。

しかし、食事を調理中に、妹は火事によって亡くなってしまう。

最愛の妹を亡くした兄は、悲しみのあまり、家にひきこもるようになる。

そんな折、妹に瓜二つの少女が、
兄にバイオリンを教えてほしいと訪ねてくる。

しかし、この少女にも、秘密があった…。

現実と空想が行き来する、ファンタジー映画なのだが、現代の問題点も織り交ぜた、社会派の映画でもある。

音楽は、SUGIZOさんが担当。

これが、素晴らしい。

アンビエントあり、ラジオ体操第一のデスメタル版あり、しかし、全篇を通して、バイオリンの優しい音色が美しい。

本編のラスト近く、兄はそれまでため込んでいたものを吐き出すかのように、
歯を食いしばって作曲する。

そして、部屋の真ん中にある大木の中に安置していた、綺麗なままの妹の遺体を空へと還す。

全てを終えた兄は、数年ぶりに、自分の足で外へ出て、旅立つ。

そこで流れるのが『Rest in peace&fly away』というエンディング曲なのだが、
それが、聞いていて心地よく、また、新しい兄の人生を象徴するかのような、アンビエントになっている。

ここで、フィーチャリングされている、ビーチェさんは、十数年前に亡くなっている。

兄を訪ねてきた少女の秘密、
それは、家庭内に問題があり、
クローゼットの中で自殺を図ったこと。

兄と接していた少女は、現実の少女の夢なのだ。

夢の中の少女も、兄の旅立ちを見届けて、
『私も生きるよ』と言い残し、どこかへ立ち去る。

そして、手首に巻かれた包帯の先、手のひらには、星の砂の入った瓶、それを少し握りしめたところで、映画は終わる。

全体的に、場面に最も合った音楽が使われており、物語にスッと入り込むことができる。

SUGIZOさんが、ギターとバイオリンを駆使して、主人公の気持ちを代弁するかのような音楽を作った。

少女が調理しようとすると、消化器(赤から色を塗り替えてある)を抱えて、キッチンから離れない兄を描写した場面があるが、そこも過去と今を上手く結びつけた音楽を奏でている。

また、妹が、自分の描いた作品の中に入って、再現する場面(アイスクリーム屋さん)も、
妹の優しさが表現されている。

兄は、妹を助けることが出来ず、
ただ燃えていく妹を見ていることしか出来なかったことから、赤い物は見られないのだが、少女が街で買ってきたのは、
トマトのホール缶や野菜のトマト、にんじんなど、赤い物が多かった。

それらを見ずに、手で自分から遠ざける兄。

そこには、音楽が付いていない。

観ている人に、強い印象をつけるための工夫だ。

音楽は、ずっと鳴っていれば良いものでもない。

今は入手困難かもしれないが、
ぜひ、皆さんに観て、聞いて頂きたい映画だ。

音楽と共に、衣装、小道具まで、世界観が統一されていて、美しい。

TOKYO FM出版から、写真集も出ているので、併せて読むと、その幻想的な世界に浸れるだろう。

サウンドトラックも発売されているので、聞いてみて頂きたい。

ジャケットを見ただけで、その世界観が分かるはずだ。

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