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『ロビンソン・クルーソー』を持って街へ出る。

濃い霧。
白い団地、駐車場。
青い軽自動車。
トラ猫が僕の前を歩いて行く。

『ロビンソン・クルーソー』を久しぶりにちゃんと読むという会を作りました。会員は僕一人だけですが。

今手元にあるのは、光文社古典新訳文庫版です。
表紙装画は望月通陽です。なんか、太古の壁画のような絵で、惹きこまれます。

で、さらに僕を惹きこむのは帯の惹句です。

ロビンソンの無人島での活動
敵や獣の侵入を防ぐ住居づくり
野生のヤギを家畜にする
簿記の要領で幸不幸を診断
丸太から板を切り出す
獣脂からロウソクをつくる
大麦や米を栽培する
運搬・収納用のカゴを編む
土器を焼く
パンを焼く
ヤギ皮で服をつくる

楽しそうすぎませんか?
僕が一番おもしろくて笑ったのが、簿記の要領で幸不幸を診断、というスキルです。

文庫で600ページ近くあるんですが、一人称で通しているんですね、まあ、日記という体裁なので当然なのですが。
その潔さというか、俺が見て聞いて感じたことだけで判断してくれ! とゴロリと投げ出している粗野な感じがカッコいいですよね。

「フォーマルな場所ではアンフォーマルなことを求める酔狂な人間が多いんです」

これは坂口恭平の作中人物、ジムが放つ言葉ですが、なるほどね~って思う。

僕らはみんな、いわば日常っていう「フォーマルな場所」にいるわけでしょ。特段着飾りはしないけど、まぁ、普通に小ぎれいにはしている。で、それでいて、どこかに何か非日常なことはないかな、って探してはいる。「アンフォーマルなこと」を求めている。小ぎれいな酔狂人くらいなら、すぐなれるんだがな、と思っている。

で、ダニエル・デフォーを読むわけです。大人になってから。
で、もう小ぎれいでなくてもいいかな、と思い始めるかもしれない。
それはちょっと、読んでみないとわからない。
子どもの頃に読んだはずなんですが、すっかり忘れてるし、簿記がどうのこうのとか、一切の記憶がない。

というわけで、僕は今から青い軽自動車に乗って出かけるわけですが、用事を済ませた先の駐車場でデフォーを読もうと思います。
駐車場って、読書に向いていると思いませんか? そんなことないですかね?

暑くもなく寒くもない、美しい四月の午前中です。
書を持ちて、街へ出よう。


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