見出し画像

【マンガ業界Newsまとめ:番外編】なぜこんなにWebtoon進出企業が多いのか?

マンガ業界関連の日々のニュースをまとめるマガジンなのですが、今週はGWということでニュースが少なかったので、番外編特集記事とさせていただきます。

―――
先日TwitterでGWの特集ネタのアンケートをしたところ、Webtoon進出企業の多さについてご興味のある方が多いことがわかりました。

ということで、まとめてみます。

Webtoon進出企業激増中

コミチ萬田さんのnoteによるWebtoonカオスマップでも、特にこの2022年1月~3月にかけて、Webtoonスタジオが激増しています。

このマンガ業界Newsまとめは昨年2021年7月より、おおよそ週1ペースで書いているのですが、その当時からこれまで、記事製作時の観測範囲で取り上げたWebtoon記事についてグラフにしてみました。

マンガ業界Newsまとめ過去ログより筆者作成

記事調査をしていても実感していたのですが、青線のように、ここ数か月は世の中に発信されるWebtoon関連記事の総量が明らかに増えております。(あくまで私の捕捉範囲なので正確な総数というよりはひとつの傾向として見てください。実際はもっと多いと思います。また、単純な作品PR記事は除外してます)

赤線は、新規参入のWebtoonプラットフォームやスタジオの数ですが、昨年半ばから毎月数社というペースだったのが、3月4月に至っては7-8社が参入に名乗りをあげている状況です。

なお、この新規参入数は、自社でプレスリリースやNews発信をしているものに限っておりまして、これ以上にサイレントに参入している企業や、もともとやっていたところなど多くあります。そして、これから発表する企業もまだまだあります。


本題:なぜこんなにWebtoon進出企業が多いのか?

過去、マンガ業界に新規参入が続いた時期「2013~14年」

マンガ業界に新規参入企業が多かった時期と言えば、2013~2014年にかけてが思い出されます。この時期、多くのマンガアプリ勢参入がありました。

 ・LINEマンガ ー LINE社(現LINE Digital Frontier)
 ・マンガボックス ー DeNA社(現マンガボックス社)
 ・comico ーNHN comico社
 ・GANMA ーコミックスマート社(セプテーニグループ)

この時期、2011年のiphone3G日本発売以降のスマホシフトのもと、電子コミックの成長が見込まれることや、新たに花開きつつあったアプリビジネスの未来形「マンガアプリ」が開始したところから、主にB2Cビジネスをなんらか行い、顧客基盤や集客ノウハウをある程度持っていた、大型資本企業の参入が目立ちました。

実は、他にも様々な企業が参入していたのですが、人知れず撤退したところも多く、上記のように大きな資本があり、ネット上でユーザーをしっかり捉える力を持っていた企業だけが残ったような形です。(この4社は切り口は違えど、ネットユーザーと向き合う力では猛者たちと言える企業群です)

先にご紹介したWebtoonカオスマップを見ると、広告マンガや電子書籍事業など、近隣のベンチャー企業から、マンガ動画、ゲーム、アニメといった、制作面で近いリソースを持った企業が参入するなど、かなり広範な企業の参入が見て取れています。

その中でも、2013~14年のマンガアプリ草創期との大きな違いは、小資本のベンチャー企業が資金調達を行い進出するパターンが多くあることです。これは、マンガアプリ草創期が比較的大きな企業からの進出に終始したことと大きく違うところです。


日本Webtoonの源流、comicoから現在まで

先の猛者4社の中でも、comicoは純粋なWebtoon専門(当時は縦スクロールマンガ等と呼んでいました)のアプリでした。当時『ReLIFE』など、いくつかのスマッシュヒット作品も作っていましたが、大きな注目を浴びる大ヒット作品はなかなか出ませんでした。

2013年のcomicoスタートからおおよそ5年、後発のピッコマから『俺だけレベルアップな件』、LINEマンガからも『女神降臨』という大きなヒット作品が出ました。この2作品ついては、主にプラットフォーム上での売り上げが大きかったということで話題になりました。


環境を変えたピッコマの大型資金調達

2021年5月、ピッコマが香港系投資ファンドから600億円の資金を調達、その際の企業価値(≒時価総額)を8000億円と算定されたということで話題になりました。

これは多くの関係者に驚きをもって迎えられました。

マンガ関連の事業に600億円の投資というその巨額さ、しかもマンガ業界を良く知る日本市場ではなく海外市場からの資金調達、なにより当時発表されていた2020年時点の国内漫画市場規模約6000億円を上回る企業価値算定など、これはいったい何が起きているのかというところでした。

時間が経つにつれ、その狙いや当時の状況が予測できることが公になっていきました。

これはピッコマ立上げ当時から説明され続けてきたことですが、

・ピッコマは「漫画が好きな人」をターゲットにしていない

ということが、この記事でも説明されています。これは言い換えると、Webtoonは5000~6000億円の市場規模になる日本マンガ市場ではなく、世界で10兆円にも及ぼうという、スマホゲーム市場のユーザーをターゲットとしているということを指しています。

ビジネスの性質として、日本のマンガ市場で戦うのではなく、日本も含めた世界のスマホゲームと戦うということです。以前は、日本のマンガも全て縦スクロールに置き換わるというような言説もありましたが、そういう問題ではないのです。

また、昨年12月には中国系リサーチ会社による2028年の世界Webtoon市場は1.8兆円規模(*1)で、今の日本マンガ市場の3倍ほどになるというレポートもありました。

(*1: このレポートのWebtoon市場規模とは、作品の映像展開などいわゆるIP展開も含んでおり、その割合はそれなりに大きいです。他で示している日本の漫画市場調査は純粋な漫画の売上のみです。)


Webtoon進出企業激増の理由まとめ

進出企業が持つストーリー

これらから想像されることとして、現在Webtoonに新規参入している企業は、

1, 「大ヒット」がなかなか出なかったWebtoonでも『俺だけレベルアップ』『女神降臨』という大きなヒット作品が出来た
2, ピッコマが大型資金調達をできたのも、Webtoon市場が将来有望だから
3, 漫画市場だけなら国内6-7000億円ほどの規模だが、Webtoonのターゲットユーザーは、スマホゲームと同じ層。その市場規模は10兆円程
4, 数年後に世界でWebtoon市場1.8兆円規模(*1)という試算もある
5, マンガ動画、広告マンガ、ゲーム、アニメなど、個々の企業がWebtoonに進出した際に転用できるリソースを持っている など

およそこうしたストーリーで、ピッコマ同様マンガ業界外からの資金調達してると想像できます。目立つところではプラットフォーム(PF)として進出するアカツキ社とそこに作品提供するスタジオの関係のように、PFから資金調達をして進出する企業も出てきています。このストーリーは既定路線となりつつあるのではないでしょうか。

また、ゲーム企業においては、成熟し、超大型予算を用意しないとリクープできなくなってしまったソーシャルゲーム産業を脱し、同じリソースが転用できるかもしれない新たな成長市場としてWebtoon市場を見ているかもしれません。また、アニメ企業については、自社の持つIPをWebtoonにして多面展開したり、あるいは自社でIPを1からつくるという狙いも考えられます。

まとめ

まとめると、
「マンガとWebtoonはお客さんの層も数も違うので、既存のマンガ市場より広く多くのユーザーを顧客とすることができそう。まだ黎明期のWebtoonにはこれから進出してもチャンスが大きくある。」
という趣旨で、主にWebtoon制作に近いリソースを持った企業が進出している。

というところが、現状の「なぜこんなにWebtoon進出企業が多いのか?」という問いに対するまとめになるかなと思います。

―――

この記事の深掘り解説を1:30:46あたりから、以下のTwitterスペースアーカイブ上でやっております。

―――

主に週末に週1更新ペースで書いています。たまに今回のような番外編特集を書きます。マガジンTwitterのフォロー、よろしくお願いします!

著者個人へのお問い合わせなど、以下までお願いします!


この記事が参加している募集

業界あるある

Twitterもやってます!フォロー、よろしくお願いします! https://twitter.com/t_kikuchi